第2話:ステータスの裏側とファーストチョロイン
「なぜじゃ!なぜ人間の貴様がこれに耐えられるのじゃ!」
魔王の声に優馬も答えられない。
優馬自身なんで耐えられたのかわからないからだ。
確かに優馬はその場から避けることは出来たが始めに魔王と約束してしまったから死の恐怖に耐えその場にとどまっていた為、魔王の『エンドレスサイス』を全弾その身体に受けていた。
その魔法は99999の固定ダメージ、つまり人間の最大HPを削り取る対人用最強魔法だ。にもかかわらず優馬はその場に立っており、ダメージも全身にかすり傷程度である。
なぜ優馬がこれに耐えたのか、その秘密は取りすぎたスキルにあった。
優馬のステータスは全ステカンストの99999というのは正確には正しくない。
ステータスの表示上では99999となっているがこのステータスはスキルの効果が反映されていない値だからだ。
優馬のステータスを正確に表すと
名前:一色優馬
年齢:17
性別:男
レベル:1
体力:99999×120(11999880)
魔力:99999×120(11999880)
攻撃:99999×120(11999880)
防御:99999×120(11999880)
俊敏:99999×120(11999880)
回避:99999×120(11999880)
幸運:99999×120(11999880)
となる。なんでこんなことになっているかと言うとスキル『ステータス2倍、3倍、4倍、5倍』の4つを全てとってしまったからだ。
普通なら転生時のポイントでこれらを取ったとしても残り少ないポイントでは満足にステータスを上げられない為、ちょっと普通の人より強い能力もあるくらいに留まる。
しかし、優馬の場合ステータスもMAXまであげた上でとってしまった為こんな人外生物となってしまっていた。
つまり、対人用最強魔法『エンドレスサイス』で固定ダメージを与えたとしても
11999880-99999=11899881
単純計算であと119回同じ魔法を使われたら優馬の命も危なかった。
だがそれはあくまでも単純計算の場合に限る。
優馬のスキルは勿論これだけに止まらない。
HPがオートで回復するスキル『自動回復HP』がある。
これは歩く度にHPが回復するというスキルだが、正確には1歩毎に最大HPの0.1%(少数点以下切り捨て)が回復するスキルで、普通の人、例えばHP100の人だとするならば1歩毎に0.1回復するが、少数点以下切り捨ての為実際は回復出来ない。回復効果が現れるのはHPが1000を越えたときからという取得に必要なポイントの割には詐欺みたいなスキルのはずだった。
しかし優馬のHPの分母は11999880。これの0.1%は11999だから9歩歩けば受けたダメージは完全に回復してしまう。
つまり、いくら魔王が最強魔法を放とうと、優馬は全弾くらいながらその辺を散歩していれば勝手にHPが満タンになる。つまり何らかの方法で優馬の足を動けなくしない限り魔王に勝ち目などないに等しい。
しかし優馬はスキル『状態異常無効』も持っている。もはや積みである。
そんなスキル事情を知らない(取るときに説明を読んでない)優馬はある勘違いをしていた。
『俺の能力は人間の限界止まりだけど…あれ、もしかしてこの魔王ってもしかしてめっちゃ弱いか、めっちゃアホの娘?』
一般人が口にすれば一瞬で八つ裂きにされるであろうセリフだが、優馬口には出していない(出したところでたいしたことはないのだが)。
そこで優馬は魔王にある質問をぶつけた。
「なあ、お前もしかして魔王に即位したてか?」
「な、なぜわかったのじゃ!確かに妾は2ヶ月ほど前に貴様らで言う17才になったところ。魔界の法律で17才からしか魔王にはなれなかったから即位したのもその時じゃ。」
予想通り、どうりで弱いわけだ。即位したての魔王の最強魔法って言ってもたかが知れてる。どうせ99999固定ダメージもはったりだろう。現に俺は軽症だ。
「だからか、お前の攻撃全然きかねぇよ。」
「ぐっ…。た、確かに貴様の身体にはかすり傷程度じゃった。」
でも約束は約束だ。俺は魔王に勝ったのだ。
「つーわけで俺は倒れてないから俺の勝ちだな。」
「そう…じゃな…。最初の約束通りじゃ。どうせあの魔法に打ち勝ったのじゃからもはや妾に貴様は倒せぬ。さあ、妾に止めをさすがよい。貴様も約束を守ってくれた、妾もここを1歩も動かぬ。じゃが…出来れば死ぬ時は一瞬で死にたいのじゃ…。」
魔王はその場で目を瞑り、両手を胸の前で握りしめて衝撃に備えている。
俺はその魔王にゆっくりと歩みよりその小さく震える肩にてをかける。
魔王の身体がビクッと大きく震え、身構えた。
俺はそんな魔王に対してこう言った。
「お前なに言ってんの?俺がお前を殺すわけねーじゃん。てか、殺せないしな。」
魔王は目を開いて優馬を見つめ一言
「え?」
優馬に魔王を殺せない理由は3つあった。
1つはスキル。門番2体からずっとここまで誰も殺めていないのはこのお陰だ。
もう1つは優馬のポリシー、女の子に手は出しても手はあげない。があるからだ。
だから勝負方法も向こうからの一方的なものにしたのだから、これで勝ったから止めで殴りましたではこれに反する。
そして最後にこの子が可愛いからだ。魔王相手に何言ってんだこいつと思うかもしれないが、相手は角さえなければ見た目は色白の同い年の可愛い女の子だ。そんな娘と知り合えた機会をそんな形で終わりたくなかった。
だからこれからの優馬の行動は魔王も、また他のどの勇者も考えないぶっ飛んだ考えだった。
「俺が勝ったのは勝ったが、止めはささない。かわりに願いを聞いてもらう。」
「貴様がそれでいいのなら妾に出来る範囲で叶えよう。」
「ああ、むしろお前にしか叶えられない願いだ。」
「して、その願いとは?」
「まず、名前を教えてくれ。」
「妾は魔王バルドゥーク・サライズじゃ。」
「オッケー、サラな。」
「なっ、いきなりあだ名を付けられたじゃと…。」
「それともう1つ、俺と付き合ってくれ。」
「……は?もう一度言ってもらえるか?」
「おう、俺と結婚してくれ。」
「さっきと変わっとるじゃろうが!」
「なんだよやっぱり聞こえてたんじゃねーか。」
「いや、だってお主、妾は魔王で貴様は勇者じゃぞ?敵同士なのじゃぞ?」
「だからなんだってんだ。俺はお前を今日の戦利品として持ち帰る。あ、でも家とかねえわ…どうしよ…。」
「どうしよって…。貴様そんな事が知れたら貴様の国の王や妾の配下が黙ってないのじゃぞ?」
「そんなことはわかってるけど、そんなやつら関係ねえ。邪魔する奴は俺が殴る。それくらいの覚悟で告白してんだ。わかれよ。」
この時優馬の数々あるスキルの中でもネタスキルかつ高ポイント食いで誰も取らなかったようなスキル達がじわじわと魔王を侵食していた。
「…じゃ、じゃが妾は…。」
優馬の顔が見えないようにうつむく魔王。
「こんな言い方はあれだけどな、お前は負けたんだ。勝った俺の言うことを聞くとも言った。だからこれは決定事項だ。」
魔王は少し顔を背けて呟く。
「妾だって…でもやはりな…色々と問題があるじゃろ?」
その顔は徐々に赤みを帯びてきていた。
「だからお前に危害を加える奴は俺が全部払いのけるから。」
「っつ!」
魔王の身体に電流が走った。
このセリフが決定打となってその瞬間優馬の中に眠る数々のネタスキルの効果の集大成により魔王が『チョロイン』となり、そのステータスに変化をもたらした。
名前:一色紗良(旧バルドゥーク・サライズ)
年齢:17
性別:女
レベル:100
体力:500000
魔力:500000
攻撃:500000
防御:500000
俊敏:500000
回避:500000
幸運:500000
状態:正常
魔王、もといサラは優馬にゆっくり歩みより、そのままゆっくりと抱きついた。
「おっ?やっと覚悟が決まったか?」
「うむ、さっきの言葉、二言はないな?」
優馬の胸の中でサラが呟く。
「もちろんだサラ。約束する俺達の前に立ちはだかる全ての傷害は俺が払いのける。俺達の邪魔は誰にもさせない。」
「う、うむ、ならば妾も貴様についていこう。そう言えばお主名前はなんという?か、彼氏相手にいつまでも貴様はないじゃろ?」
真っ赤になりながら返すサラ
「俺は一色優馬。よろしくなサラ。」
「優馬…優馬か…。うむ、よろしくの優馬。」
「初めにお前に会えてよかった。」
「ゆ、優馬、やめぬか。恥ずかしいじゃろ。」
魔王とて1人の乙女、初めての彼氏にどうしていいのか反応に困っていた。
「お前で成功出来たなら今後の予定もサクッといきそうだ。」
「妾で成功?何かしておったのか?それに今後の予定とは何をするんじゃ?」
「何ってそりゃナンパしに行くんだよ。」
「は?ナンパ?」
サラは意味が分からなかった。優馬は今妾に告白して恋人同士となったばかりじゃ。
なのに今からナンパに行くじゃと?
「何故じゃ?ナンパなぞせずとも妾がおるではないか!」
「わかってないな、俺は勇者で強い。前の世界とは違うんだよ。魔王相手にもひけをとらない力がある。こんなの使わないと損だろ。」
「んなっ…。じゃがお主は今しがた妾に告白を…」
「安心しろってさっきの約束は必ず守るし、お前を捨てたりなんかしない。俺はこの世界ミッドガルドで冒険をして数々の美少女と出会い、ナンパして俺だけのハーレムを作る!サラ、お前はその第1号だ。」
「何故じゃ!こんな発言なのに、どうしようもない奴なのに始めの一言だけで全てを許そうとしている妾がいるのじゃ!」
「さあ、サラ。俺と一緒に冒険に出掛けようぜ。」
「う、うむ…じゃないのじゃ!やっぱりハーレムとかはいやなのじゃ!わ、妾1人だけをす、好きになってほしいのじゃ…。」
「サラ…。わかった、それじゃあしばらくは2人で暮らそうか。」
「ほ、本当かの!?」
「あぁ、冒険はまだ始まったばかりなんだ。焦ることはない。」
「あぁ、優馬。妾は初めての相手がお主でよかったのじゃ。」
結局しばらくしたらナンパに出ると言われてるが都合の良いことだけ拾って理解する見事なチョロインっぷりを発揮するサラだった。
こうして第1のチョロインにして最強の魔王が優馬のパーティーに加わった。
この2日後冒険に出るのをサラはごねたがそこはチョロイン、あっさり懐柔されむしろ「デート、デート。」と浮き足だって出掛けて言ったのは言うまでもない。




