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第1話:勇者vs魔王



時は戻って牛頭と馬頭と対峙する優馬。

「貴様よくも我等の武器を!」

「どこの馬の骨ともしれないガキのくせに生意気な!」

「「我等の真の実力を見せてくれる!」」

優馬の正面の左側から牛頭が、右側から馬頭がそれぞれ拳を振りかぶり優馬を叩き潰そうと迫る。

「まさか馬自身から『どこの馬の骨』なんて言われるとは思ってなかったな。」

自身の2倍程の体躯をもつ化物2体を前にして(なお)も優馬は態度を変えなかった。

それもそのはず。優馬にはその2体の化物の動きはとてもゆっくり見えて(・・・・・・・)いたからだ。

「さすが回避と俊敏カンストしてるだけあるな。」

そう、優馬のステータスは全てカンストしている。『どこの馬の骨』と言われたが、むしろこっちからすると『たかが門番風情が』である。

迫り来る2本の巨腕をそれぞれ片手で(攻撃99999の力で)腋に抱えるように受け止める。

バキ!メキ!

「「んぐぉっ!?」」

化物の前腕部が盛大に音を立てて砕けた。

「ははっこりゃやべーな。俺無双出来るじゃん。」

1人気楽な人間の優馬とそれに前腕をガッシリとロックされ顔を青くしてる化物2体、普通ならあり得ない光景となっている。

「き、貴様!どこの国の者だ!今までこれ程の者がいるなんて聞いてないぞ。も、もしや貴様異世界から召喚された勇者か!?」

「いや、牛頭。勇者であったとしてもこのような者が現れれば流石に伝令が届く。そしてそのような伝令は来ていない。」

「だとしたらこいつはなんだ。なぜこんな力を持っている。このような力勇者でなければ証明がつかんぞ。」

腕を捕まれたまま話し合いを始める2体。話を聞いてると俺の立場は異世界から召喚された勇者で、普通はどっかの国に召喚されるらしいがなぜかいきなりこの城に着いてしまったってとこかな?

「おい、お前ら。多分俺は勇者であってると思うぞ。でもどこの国の勇者でもない。」

俺は2体の腕を解放してやった。

2体は折れた腕を抱えながら少し後退り、馬頭が口を開いた

「で、であれば貴様は…」

「こっちだって知りてえよ。気がついたらいきなりここだったんだから。てかここどこだよ。」

「んなっ!?ここがどこかもわからずに我等に戦いを挑んだのか?」

「いや、挑んだもなにもお前らから急に攻撃してきたんだろ?」

「ぐっ…。まあいい教えてやる。ここは魔王バルドゥーク・サライズ様の城だ。」

「何!?魔王城だと!?まじかよ…。いきなり魔王城スタートとか昨今のRPGでもそんな無理ゲーねぇよ。」

「あーるぴーじー?むりげー?貴様何を言ってるんだ?」

「あーいや、こっちの話。で、そしたらあの城の最上階には魔王がいるわけ?」

「当たり前だろう魔王城なのだからな。」

「オッケーオッケー。そしたらちょっくら挨拶してくるわ。そんじゃあな。」

俺は2体の間を縫って門を開けようと門に手を当てた。

「いや、待て待て!そんなの通すわけがないだろ?貴様のようなやつを魔王様に会わせる訳にはいかない。」

「なんだよ、あれか?『この先に進みたければ我等を倒してからにしてもらおう』とかのノリか?」

「その通り!我等の回復力を見誤ったな。腕の骨折などもうなんともないわ!」

「ここから先は一歩たりとも通さんぞ!」

「どうでもいいけどお前らのセリフって全体的に雑魚キャラ臭がするんだけどいいのか?」

「「いざ勝負!」」

2体の化物は再び俺に戦闘を挑んだ。




ーー数分後。

「コヒュー…コヒュー…ど、どうして止めをささない…。」

優馬の前には全身をボロボロにしながらもかろうじて生きている2体の化物だったものが横たわっていた。

「いやー止めをさそうとしても何でかお前ら死なないんだよ。あ!もしかしてあれかな?スキルの最後の方に取った『不殺の勇者』ってやつのせいかな?効果読まずに取ったからわからんけど。」

「勇者が1人1人持っているレアスキルのことか…。殺さずに永遠に苦しみを与え続けるスキルか…。どこまで鬼畜なのだ貴様は…。」

「いや、俺も知らんし。とりあえずお前ら戦闘不能っぽいしここ通ってくぞ。」

「ふ、我等を倒したからといって調子にのるなよ…。我らなぞ魔王様の配下の中でも一番下の序列なのだから。四天王にかかれば貴様なぞ…」

「あーもうそういうのいいから、お前ら雑魚臭半端ないからもうその辺にしとけ。じゃあな。」

俺はもう一度門に手を当ててゆっくり開いた。



門から魔王城までの間に三首の火を吐く巨大な犬とかなんかいっぱいいたが、全部パンチ一発でどっかに飛んでいった。

そんなこんなでさくさくっと城に侵入した優馬だったが城の中にはうじゃうじゃと化物がひしめいていた。

「うげー気持ち悪っ。」

その化物全てからこっちに殺意やらの籠った目を向けてくるのだから尚更だ。

優馬が辟易としていると奥にいた騎士風な奴が全体に指示を出し始めた。

「その者は牛頭と馬頭を再起不能にし、魔王様の庭を荒らした重罪人である。直ちに捕らえて処刑せよ!」

「「「ぅおぉぉぉ!!!」」」

化物どもの咆哮に続いて全体が突撃してくる。

「くっそ、こんなの1体1体面倒だな…。あ、そうだそういえば魔法もスキルにあったな。

どれか使ってみるか。」

俺は全ての魔法の中から一番初歩っぽい定番の魔法を発動する。

『ファイヤーボール』

俺の掌から放たれたファイヤーボールは先頭の化物に命中するとフロア一帯(・・・・・)を覆い尽くす爆炎となって全てを飲み込んだ。


あるものは壁に、あるものは天井に突き刺さり、しかし全員生きているという訳のわからない状態で唯1人優馬はピンピンしていた。

「えーっとさっきの奴は……あ、いた。」

優馬は息絶え絶えの化物の中から先ほど全員に指示を出していた奴を見つけて壁から引っこ抜いてやった。

「おい、この城は何階まであるんだ?」

「ふ、ふっ…。貴様に答えてやる義理はない…。」

ちょっとイラッとした。

俺は殺せないと分かってるからそいつの頬を全力で殴り飛ばした。

グシャッ!

「ブボッ!」

「あ、やり過ぎたかな?」

再び壁にめり込んだ奴をもう一度引っこ抜いてやった。

「もう一度聞くぞ?この城は何階まであって、魔王はどこにいる?」

「こ、この城の5階の魔王様の大広間にいらっしゃいます…。」

さっきまでの威勢はどこへやら、すっかり萎縮してしまっていた。

「よし、わかった。サンキュー。」

俺は奥にある階段をかけ上がって2階に出るとそこにはまた化物の大群が

「うげーもしかしてこれを5階まで繰り返すのか?めんどくさいな…。」

優馬が1人鬱陶しく思っていると

「全員かかれ!!」

「「「ぅおぉぉぉ!!!」」」

化物の咆哮と共に前方から複数の炎が飛んできた。

「今度は魔法かよ。」

優馬は回避するのも面倒くさいその数を打ち消す為に水の魔法の下から2番目の『ウォーターシュート』を放った。

すると目の前の炎は一瞬で消え、それに留まらず正面の敵を巻き込み、後方で指揮をとっていた奴も巻き込み壁にめり込ませた。

魔法を逃れた敵は静まり返り、辺りが水蒸気と静寂に包まれ、優馬の歩く音だけが響く。

優馬は指揮をとっていた奴の前までくると奴を壁から引き抜き

「おい、こっから上も全部こんな風に待ち構えてんのか?」

「ふっ、貴様に教えてやる…」

優馬は問答無用で顔面をぶん殴った。

「義理はぶはっ!!」

再び壁に戻る指揮官、それを引き抜く優馬。

「上にもいんのか?」

「は、はひ。あと2人同じように殲滅しにくると思いまふ…。」

前歯が折れて空気が抜けたしゃべり方になっていたが意味はわかった。

手を離し解放してやると優馬はそのまま奥の階段に向かって歩く。

その歩みを邪魔する勇敢な戦士はもはやこの階にはいなかった。



次の階、その次の階でも同じように待ち構えてるのは分かってたから、上がるなり魔法をぶっ放して全滅させて一気に最上階へ。

するとそこは奥に王座っぽいものがあるだけの広い空間で、その王座の回りで俺と同い年くらいの女の子があたふたとなにやら動き回っていた。

「あのーすいません。」

とりあえず魔王の居場所をこの子に聞こうと思って声をかけると

「なんじゃ!妾は勇者を迎える準備で忙しいのが見てわからんか?下で魔界四天王が足止めをしてる間に準備しなくちゃならんのじゃ。用があるなら済んでからにせい。」

…どうやらこの子が魔王らしい。魔王様の威厳みたいなの全然ないんだけど大丈夫か?

とりあえずまずは素性を明かさないとな。

「あのーすいません。」

「さっきから五月蝿いと言うておるじゃろうが!貴様どのような身分で妾の邪魔をしておる!って誰じゃお前!?」

振り向くなりノリツッコミみたいな綺麗な返しをしてくれた。魔王様はなかなか面白いやつみたいだ。

「誰ってあんたがさっきから言ってる勇者だよ。」

「いやいや、それはないじゃろ。各階に控える四天王を倒さなければ妾の元にはたどり着けぬ。先ほど伝令で勇者が来たとの知らせを受けたばかりじゃぞ?そんなすぐにここまでたどり着けるわけがない。いくらなんでも愚弄しすぎじゃ。」

「いや、四天王とかいたか?まとめて相手したからどれがどれか全く分からん。ちょっと確認とってみてくれよ。」

「ぐっ、妾を魔王と分かった上でその態度とはいい度胸である。ちょっと待っておれ、すぐに確認してやろう。」

そう言うと魔王は目を(つむ)りテレパシー的なもので会話しているのだろう、黙ってこくこくと頷いたりしていた。

その間俺は暇だったので魔王の観察をしていた。

頭にはまるでモン○ンのディア○ロスの角を小さくしたかのようなくるりと曲がった角が真っ赤な髪の隙間から生え、顔立ちは整い、スタイルも出るとこは出て締まるとこは締まっているかなりの美人だった。

「なるほどの、確かにお主が勇者のようって近いわ!な、何をしておる貴様!」

どうやらじっくり観察し過ぎて無意識に顔を寄せていたらしい。

「き、貴様は妾を倒しに来たのであろう。ならばさっさと始めようぞ。」

「あーそれなんだけどよ。俺女の子は殴れないんだよ。化物の雌はいいけどあんた角がなかったら完全に人だろ?そんなのとは戦えない。」

「なっ!?ならばどうすると言うんじゃ。」

「だから今からお前の最強の攻撃を俺が無防備に受けて、俺が倒れなかったら俺の勝ち、俺を倒せたらお前の勝ちでどうだ?」

「貴様は妾を馬鹿にしておるのか?」

「いや、大真面目だ。俺が負けた場合は煮るなり焼くなり好きにしてくれていい。」

「言うたな、勇者に二言はないぞ。」

「ああ、構わない。」

「ならば妾の最強の魔法『エンドレスサイス』を食らうがよい。」

俺は奴が魔法を準備してる間約束通りその場に留まった。

「後悔してももう遅いぞ勇者。人間のHP限界の99999の固定ダメージを与えるこの魔法、人間ごときに耐えられると思うな!」

「何っ!?固定ダメージだと。それは考慮してなかった。まて、やっぱり条件を変えよう、な?」

「もう遅いわ!『エンドレスサイス』!」

その名の通り次々と放たれる鎌が俺の胴を薙いでいく。

「っぐぉぉ!!!」

鎌が触れる度鮮血が舞いその鎌は永久に続くかと思われた。


鎌の放出が収まったころ、優馬の立っていた所は地面を(えぐ)ったことによる砂煙で何も見えなかったが、辺りに飛び散った優馬の血が事の凄惨さをものがたっていた。

「ふはははは!人間ごときが調子にのるからじゃ!ふははは!」

魔王の高笑いだけが広い部屋に木霊する。

しばらくすると次第に砂煙も収まっていく。

「どれ、無様な敗者の最後を見届けてやるのも勝者の務めよの。」

砂煙が晴れてボロボロの優馬の身体を探す魔王

「な、なにっ!?」

しかし優馬の身体を見つけるなり目を見開いて固まった。

なぜならそこには自分自身もびっくりしている身体中かすり傷だらけの優馬が立っていた。

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