メイリラルド歴890年(2) Sideユーリ
「さぁ行こうか、むっ…いつの間に結界が…そうか、やはり…お前はいつも邪魔をするのだなぁぁぁぁ!!!」
「当たり前でしょう?貴方には消えてもらって早くその身を返してもらうわよ」
「くはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!やれるものならやってみるといい!!!!」
「ふふ、さぁ…反撃開始よ」
リリアさんの身に宿る大きな魔力で魔王は狂い始めている。私がマリアに頼んだのはライド様やお義父様、アランシスなど魔力の強い人達から王宮を囲むように結界を貼ってほしいということ。これで被害を王宮だけで留めることができる…早くしないと。
「ルド」
「あぁ…”束縛”」
「ぐっ!?」
鉄の鎖で魔王の動きを封じる、これはかなり強力だから魔王でも抜けだすのは不可能。
「ねぇ魔王…私はね、その体を傷つけたくないの。だから…”幻夢”」
「うがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ふふ…効いてる効いてる、魔王が入っているとはいえ人間の身…幻夢の魔法で囚われることだって簡単。
「ふっざぁぁぁぁけるなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!殺す!殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスぅ!!!!!」
今だ、私の中に眠っているリリアさんの魂をあの身へ!
「なんだぁぁぁこの力わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!やめろぉォォォォォォ!!!!!!!!!!」
「リリアさんの身体、返してもらうわ!!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
魔王の魂が出た!
「今よ真也君!!魔王の魂を殺しなさい!!」
気を失っていた勇者の中で早く目が覚めじっとしていた彼に支持を仰いだ、真也君はすぐさま動き出して無事魔王の魂を殺すことに成功した。
「はぁ…良かった」
和樹達も目が覚めマリアやライド様達も来た、私はリリアさんの側に行き座った。私が身体に触れると瞼が動き目を開けた。
「「リリア!!」」
レイフィアとお義母様も驚き走ってきた。
「リリア…」
「レイフィア、マリアム…老けた?」
「失礼ね、当然でしょう?かなりの年月が過ぎたのよ?」
「うん…ずっと優莉の中で見ていた…私が消えてからの事…ずっと…私の事を心配していたこと…」
「ずっと、ずっと心配していたのよ!」
鳴き出した2人にライド様とお義父様もそばに来た。
「久しぶりだなリリア」
「こうして再び会えて嬉しいよ」
「ライドレシア…レイダリア…ごめんなさい」
「いいんだよ、お前とこうしてまた会えたなら」
「うん…ありがとう」
「そういえば、お前の言葉通りアランシスは立派になった」
そう言ってライド様があランシスを呼んだ。
「初めまして初代時の神子殿。俺にアランシスと名付けるよう言われたと、父上と母上に聞きました」
「そう…よかった…」
…リリアさんの命が…。
「優莉、貴方とこうして出会えて良かった…」
「私も、リリアさんのお陰でたくさんの幸せを手に入れることが出来ました…ありがとうございます」
「優莉、和樹、真人、里奈、恵理、彩美、莉磨、真也…地球から来た貴方達に言わなければならないことがあるの」
言わなければならないこと?
「今まで、私の少ない力で地球での時間を止めてきた…でも、もうすぐこの生命も消える…それと同時に、向こうの世界の時も動き出す」
それって…今まで止まっていた時間が動き出す、でもそこに私達はいない。
「貴方達の存在も消えていない…恐らく、事件になる」
「そんな…」
「…地球には、帰れるのですか?」
「……それは、無理」
「!?」
私達は地球にも帰れず、向こうでは失踪したと捉えられるわけね。
「本当にごめんなさい…ごめんなさい…許してとは言わない…言えるわけない…」
「リリアさん、私は貴方を許します。だって、私は向こうの世界よりもこの世界のほうがたくさんの思い出や愛情を手に入れられた…向こうの世界では諦めていた幸せが、この世界で掴むことが出来た。あの日、リリアさんの力で私をここに呼び寄せた事に感謝しています…ありがとう」
地球より長生きしているしね。
「私も許す!」
「えぇ」
「うん」
「そうだな」
和樹達も許してくれる。
「…真也がいるなら、大丈夫」
「俺もだ」
あらあら、若いわね。
「貴方達…ありがとう、あぁ…私もこの世界に来れて本当に良かった…みんなに、これからの…この世界を託していける…」
リリアさんが光り始めた、もう時間ね。
「優莉、ありがとう…」
「ありがとうございました」
「あぁ、これでようやく会えるよ…カルファ―」
カルファー、きっとリリアさんが自分の世界にいた婚約者の名前なのでしょうね。リリアさんはそのまま光となって消えていった。
「どうか安らかに…」
この瞬間、地球での時は進み始めたのね。
「ユーリ、お疲れ様」
「お疲れ様、ルド…みんなも」
* * *
後日、改めて会議が行われ、魔王討伐が終わった。
「さぁて!また旅に戻るか~!!莉磨ちゃんと真也くんはどうするの?」
「俺達も旅をしようと思っています」
「それがいいな、莉磨の無表情が変わるかもな!」
「そう…だといいな…」
「こうしている今も、地球での時間は動いているんだね…学校に行かなくていいのは嬉しいけど、みんなに会えないのはちょっと寂しいなぁ」
「どうせ里奈は授業中寝るだけだしね」
「むむむ!たまには起きているからね!?もー!彩美さんも真也くんも笑わないでよぉ!!」
地球から来た皆がこうして笑い合っている。時が進んで、いつか私達がいないことに気付く…もしかしたらもう知られているのかもしれない。そうしたら本家の人達は喜ぶだろうか…お祖母様と優希は泣いてしまうかもしれない、お祖父様は悲しむかもしれない…話し合い、まだしていないけど当主は優希で決まり。私はもう七瀬家から除外され、忘れ去られた者になる…それでいいのよ。
「優希…」
いつも私の事を思い続けてくれた私の半身…これであの子も開放されたのね。
「優莉…優希ちゃんは…」
「いいのよ恵理、七瀬家当主は優希で決まり…これでようやく無駄な当主争いが終ったの。後悔なんてまったくないわ」
「そっか」
だって私には今の幸せがある。
「ユーリ」
好きと言ってくれる人がいる。
「ルド」
いつか死ぬまで…ずっと側にいてくれる人がいる。
「これからどうする?」
「そうね…旅の続きでもしましょうか、途中のことがあるしね」
「そうだね」
だからもう、大丈夫。




