メイリラルド歴882年(2) Side莉磨(1)
私は今会議室の勇者席に座っている、これから、この大きい会議場で歴代の人達との会議が行われる…少し、緊張する。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
真也が心配そうに見ているけど私は大丈夫。
「時間だね、これから会議か~久々に優莉達に会えるってことだね」
里奈さんが言うけど、優莉さん…一体どんな人なんだろう。そう思った時大きな扉が開き、私達は一斉に立ち上がった…事前に写真と名前は教えられたから頑張って覚えたけど…最初にレイラさんが登場、その後ろを歩くのが前回の魔王討伐に参加したギルドの最強チーム”悠久の剣”の4人、えーっと…リーダーのライトさんのサブリーダーでライトさんの妻であるエリンさん、ラークさんにルークさんの母であるアイルさん、もう一人メンバー…ラトルクさんはどこだろう?
次に登場したカイラルド様の後ろに歩いているのが2代目国王アランシス様と日本人である王妃の彩美様、2代目宰相ケイル様と3代目時の神子で去年お会いしたマリア様に…あ、いたいた!マリア様の横にいるのがマリア様の兄でルークさんの父であるラトルク様。
そして最後、ラストロン様の後ろを歩くのが初代国王ライドレシア様と王妃レイフィア様、初代宰相のレイダリア様に妻のマリアム様。そしてあの人が2代目時の神子優莉さん…横にいるのが片割れのルドレイク様だね、流石初代国王達は雰囲気が違う…優莉さんも、力が違う。ラストロン様とカイラルド様、レイラさんが席に立ち会議が始まった。
「皆さん、ご着席ください。これより会議を始めます…硬い挨拶はこれまでとしてとりあえず勇者の自己紹介を」
ラストロン様の言葉に再び私と真也は席を立った。
「今回の勇者召喚で召喚された者たちです」
「初めまして、シンヤ ナカジョウです」
「リマ ナカムラです、よろしくお願いします」
拍手が起こる、あっ優莉さんと目が合った。
「早速ですが最近、魂だけとなった魔王がこの城を攻撃するようになりました。原因は不明です、しかし…」
ラストロン様がアランシス様を見る、アランシス様は黙って見ている。
「父上、何か僕達に隠していることがあるでしょう?父上だけじゃない、僕達三世代目以外が知っていて黙っていることがある…それを知るために僕は皆さんを呼んだんです」
会議室内が静かになった。
「……」
「父上、教えてください」
「…俺の一存では言うことは出来ない、そもそもこれはお前たちのためだ」
「それぐらい察しています。ですが、だからといって知らなくてもいいとは言い切れませんよ…現に今、魔王にこの王宮は狙われている。知らないで対策を練るより知っていたほうがいいのは分かっているはずです」
アランシス様がため息を付いたらライドレシア様が笑った。
「どうやら孫は息子にかなり似たな」
「…笑い事じゃない、俺はこの件についてはすべてを父上達に任せてある。ここまで言われたら俺が止めるのはもう無理だ」
「はっはっは、世界に名を広めた奴が言うセリフではないな!」
この親子おもしろい、そう思ったらいきなりライドレシア様の表情が真面目になった。
「ラストロン、俺達が隠してきた理由はお前たちを守るためだ。知ったら後戻りは無理だぞ?」
「覚悟のうえです」
私達勇者組も頷く。それを見たライドレシア様は呆れたように優莉さんを見た。
「だそうだぞ…ユーリ、お前こうなること絶対知っていただろ」
「当然、貴方の孫でアランシスの子ならそうなるとは想像できるもの。レイラとルークに口止めさせてもやはり無理だったわね…マリア」
「無理だって母様」
「即答しなくてもいいじゃない」
「…教えてください」
マリアさんが私達を見る。
「この王宮に大きな爆弾を抱えている、そう言ったら貴方達はどう思う?」
「…爆弾?」
「この王宮には大きい爆弾を持っていて魔王がそれを見つけ奪おうとしている…その爆弾がかなり厄介ということだ」
マリア様とアランシス様の言葉にレイラさんが俯いた、そういえばさっき優莉様がレイラとルークに口止めさせても無理だったって…レイラさんとルークさんは知っていて黙っていたということ?
「…その爆弾というのは何なのですか」
ラストロン様の言葉に2人は黙って優莉様を見た、優莉様は目を閉じている。
「ユーリ、もう隠し通すのは無理だよ」
「ルドレイクの言うとおりだ」
ルドレイク様とライドレシア様の言葉に目を閉じたままため息をつくと何かを唱えた。
「リア・ルズフ・エリアラン」
これは魔法?誰もがそう思っていた時、突然頭のなかに映像が流れてきた。
* * *
「まだ大きくなるぞ!」
「早くしないと!」
マリア様とラトルク様だ、まだ見た目が今より若い。これは…優莉様の記憶?
「落ち着きなさい、マリア…貴方なら出来るわ」
「か、母様!?父様も!」
「手伝ってあげるからもう少し頑張りなさい」
そうだ、これは記憶なんだ…でもなぜ?
「何か落ちてくるっ」
マリア様の言葉に優莉様が上を見ると驚いた感情が伝わってきた、そして走りだす優莉にまさかという思いも伝わってくる。
「兄様!」
「行こう!」
優莉様は落ちてきた人を見た瞬間抱きしめた…この人は一体誰なんだろう。
「母様!」
後ろからマリア様の声が聞こえる。
「母様…その方は?」
「この人は…初代時の神子」
え!?初代って…
「初代時の神子リリア…ずっと私達が探していた人」
前に習った…メルゼルク王国が中心の国になって初めて就任したから初代時の神子、彼女も召喚されてやって来たと…そして歪みに巻き込まれて行方位不明だとも教わった。でも見つかったなんて知らなかった…。
「…真っ暗の中、生きているのか死んでいるのかも分からなかった…リリアさんはあの時言っていた…やっと…やっと見つけることができた」
…泣いている、ずっと探していたんだ。
「マリア、陛下にこの事を」
「あ、はい、分かりました」
優莉様がゆっくりと初代時の神子を横たえた。
「アランシス」
『久しぶりですユーリ殿、ルドレイク殿』
「ライド様からこの際の事は聞いているわね?」
『聞いている』
「じゃあ早速だけど地下に運ぶわね」
通話を切りマリア様達を見る。
「神子が板についてきたわね、よくやったわ」
「ありがとうございます母様」
抱きしめられたマリア様はとても嬉しそう、その後場所は地下へと変わった。
「本当は火葬してあげたいのだけど…リリアさんの遺体は魂がなくてもその身に宿る魔力量が多すぎるから地下に封印という形にするしかないのよ、何が起きるか分からないから一応結界を張って時々私が見に来るようにするわ。マリア達は気にせずいつものように仕事をお願い」
「分かりました」
ここで映像は終了した…会議室内は誰もが無言だった、レイフィア様とマリアム様は涙を浮かべていた。
「…今の映像通り、この王宮の地下には初代時の神子リリアが封印されているわ。去年、魔王は丁度歪みを直しに来たレイラとルークに遭遇…その後歪みに巻き込まれてやって来たのが王宮の地下だった。魔王はリリアさんを見つけ憑代にしようと攻撃してきているの…これが私達の隠していたことすべてよ」
ラストロン様や里奈さん達も驚いている、私?私も驚いているよ。




