メイリラルド歴880年(2) Sideユーリ
私が時の神子を引退してから359年が経った。830年に魔王が誕生したとアランシスから報告が来た時には驚いた、あの時私は確かに魔王の肉体を破壊したのだから…でも調べていくにつれ魔王の肉体は無く、魂のみで動いていることが分かった。恐らく、魔王は憑代を探しているのかもしれないと…それを聞いたアランシスはすぐに国王を息子のラストロンに渡し、娘のマリアは孫のレイラに時の神子を継承させ自ら動き出した。
本来神子を継承したあとは半分の力が残っているだけなのだけど私にはリリアさんから力の全部を受け継いでいる、私とルドに宿るリリアさんの力はいまだ健在…魔王は責任をもって私が葬ると決心した。願わくは地下に封印されているリリアさんを魔王が見つけないことだ。
――キィィィィン――
神子ではなくてもリリアさんの力のせいか歪みの音はまだ聞こえる。
「歪みがまた出たわね」
「レイラが直すだろうね」
レイラの活動はよく耳にしている、うまくやっているようね。
――ギュィィィィィィィィン!!!!――
「!!…歪みが大きくなってる」
「この気配…まさか、魔王?」
まずいわね、魔王がレイラ達の元へいるのだとしたらまずルークが狙われるわ…。
「一応ルークには気をつけるように言ったけど…」
「肉体が無くても魂だけで動く魔王のことだ…強いはずだ」
「ええ、それはッ……地下にあの子達がいる?まさか歪みに巻き込まれて!?」
魔王…早く滅ぼさないとね。
* * *
『クッ…クククッ…ハッハッハッハッ!!!まさか、こんな所に隠された宝があったとはな!!アレを手に入れればあの男などいらぬ』
瞬間移動で地下に行き、柱の陰に隠れる…やはり見つけてしまったわね。
『ありがたく頂戴するか』
絶対に渡すものか、そう思いながら私とルドは柱の陰から出た。
「そう簡単に手は触れさせないわ」
レイラとルークが驚いていた…そうでしょうね、この国にはいないはずの私達がいるのだから。
『お前は…久しいな、あの時はよくも我の肉体を破壊してくれたな』
「肉体は破壊したのに魂だけとなって生きていたなんて、驚きだわ…それに、私の孫に目をつけて巻き込むなんてね」
『クククッ…仕方ない、今は手を出さずに時を待とうではないか…クククッ…ハッハッハッハッ!!!!』
そう言って魔王は消えていった…また時を待つとか言ってるし…奪うのなら早くやりなさいよ。
「叔母上、叔父上」
「二人とも大丈夫か?」
「怪我はないかしら」
「はい」
「大丈夫です…お祖母様、お祖父様」
レイラに会うのは生まれてすぐの時だったから大きくなったわね、それにしても…地下を守っているはずのマリアはどこにいるのかしら。
「みんな無事!?」
マリア…すごく急いだのね。
「こっちは大丈夫よマリア」
「ありがとう母様、父様…ルークとレイラも大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「うん、怪我は無いよ」
レイラの言葉にマリアがレイラを抱きしめた。
「はぁ~本当に良かった、神子の力があるとはいえ心配したわ」
「大丈夫だよ母様」
レイラは元々魔力が弱いものね、心配なるのは分かるわ。
「そういえばマリア、貴方ここにいたはずじゃなかったの?」
「慌ててきたようだったけど、どこに行っていたんだ?」
「さっきまではここにいたの、でもいきなり歪みが発生して巻き込まれそうになったから咄嗟に瞬間移動したら見知らぬ所に飛ばされて…どこにいるのかを特定して戻ってくるまで時間が掛かったの」
マリアも大変だったのね。
「叔母上方、質問よろしいでしょうか」
「分かってる、結界の中にいる人でしょう?」
「はい」
レイラとラストロン達には隠そうとしていたけど…もう無理ね。
「結界の中に眠っているあの人はね、初代時の神子なのよ」
「「!?」」
私が言えるのはここまで。
「何故ここにいるのかというのは私の一存では話すことが出来ないから勘弁してね?」
「この事は誰にも言っては駄目だからね、ラストロン達にも」
とてつもないことを知ってしまったという顔をしている…図星かしら?
「ラストロン達には私達が報告しておくわ」
「分かりました」
とりあえずレイラとルークを地上に戻した。
「まずいわね、魔王がリリアさんを見つけてしまったわ…とりあえずルドはライド様とお義父様、アランシスに、マリアはラトルクと恵理達に連絡をして」
「分かった」
「了解」
はぁ…ゆっくり旅をしていたいのに、魔王め…。




