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異世界召喚されたら時の神子になりました  作者: 森崎優嘉
第二章 3代目時の神子 マリア
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メイリラルド歴844年

陛下に呼ばれ、陛下の執務室ではなく少し広い会議室に行った。

会議室に入ると陛下とアヤミ姉様、兄様とアイル姉様がいた。


「突然呼び出してすまない」

「いきなり呼び出して、何?」


とりあえず私達は椅子に座った。


「今の現状を改めて説明すると、14年前に誕生した魔王が何かを探すように各地を回っている。魔王の目的はユーリ殿と父上達ですら不明、父上はともかくあのユーリ殿ですら分からないんだ…これからどうなるのか分からない、そこで」


陛下が言葉を切り、私達を見た。


「俺も動こうと思う」

「動く?」

「王の座をラストロンに渡す」

「え!?アラン、いきなり過ぎるよ!!」

「俺が王のままだと簡単に動けない、それに…ユーリ殿の報告だとどうやら、魔王には実体がないらしい」


実体が…ない?


「恐らく、魔王は憑代を探している…力の強い憑代をな」


力の強い、憑代になるもの…まさか


「…初代、時の神子」

「そうだ、ユーリ殿と父上はそう考えている、地下にはユーリ殿の結界が貼ってあるしユーリ殿自身も様子を見に行っているが異常はないそうだ…だが、もし魔王が見つけたら…最悪な事態が起こるだろうな」


初代時の神子、148年前にようやく遺体が発見され地下に封印された。遺体には魂が無くても宿っている魔力量は多い…もし魔王が見つけ、彼女の遺体を憑代に使ったら世界が破壊されるかもしれない。


「…陛下が退位なさるのならば、私も時の神子をレイラへ継承します」

「…大丈夫なのか」

「私は元々母様と父様から受け継いだ強い魔力があります、ですがレイラには魔力が少ない。このままだと早急に神子を引き継いだ方が、レイラも安全です…地下に初代が封印されていることはごく一部しか知らない、それならばこのままレイラ達には教えずにいつも通りの仕事をしてもらった方が私達が動きやすいです」


私や母様は神子では無くなっても戦えるけど、レイラは違うから…。


「それでいいんだね?」

「はい…ごめんなさい兄様、勝手に決めてしまって」

「三代目時の神子はお前だよ、マリア」


そう言って頭を久しぶりに撫でられた。


「私もライトさん達に連絡してみる」

「じゃあ私は恵理ちゃん達に連絡だね」


こうして私と陛下は次世代に受け継ぎ、自ら動くことに決めた。





   *   *   *




会議の中で陛下の意見を大臣たちも承諾し、今度はラストロン達に伝える番になった。場所は前回と同じ会議室、そして前回と同じメンバーにラストロンとメイベル、ルーク、レイラが加わった。


「僕達を呼んでどうしたんですか?」

「実はな…」


陛下が封印以外を話している。陛下が話をしている間、ラストロンはまっすぐ陛下を見ていた。メイベルは不安そうに見つめていてそれに気付いたレイラが手をつないでいる、ルークは…すべてを悟っていたようね。


「本会議でも賛成多数だった…あとはラストロン、お前次第だ」


陛下が私を見る。


「レイラ、貴方にも同じ理由で時の神子を継いで欲しいの」

「え?」


レイラが私を見る。


「…分かりました」

「レイラ…」

「私は、歪みが見えるのに何もできていない…ルーク達のように強い魔力なんて無い、神子になって皆の助けになるのなら私は迷わずに神子になる」


この子は…


「レイラが神子を継ぐのなら、僕も継がないとだね」

「ありがとうラストロン、レイラ」




   *   *   *




時の神子の継承は国王即位式後に行う。


「これより、戴冠式を行う!」


宰相のケイル伯父様の声が響く、そして盛大な音楽と共ににラストロンが登場した。

そして王冠が陛下からラストロンへと伝わり、国王ラストロンが誕生した。

新国王即位と共に宰相もケイル伯父様から伯父様の息子であるカイラルドへ、騎士団長を初代団長の息子であるエリックさんからその息子であるロイスへ…メルゼルク王国三柱と呼ばれる役職が、初代から子へ、そして孫へと継承された。


即位式が終わるとついに時の神子継承になる、場所は私が継承した時と同じく第一資料室の隠し部屋。


「緊張してる?」

「うん」


この場にいるのは私とレイル以外に兄様とアランシス様、神国王のラストロン、メイベルとケイル伯父様とカイラルドがいる。


「始めます」


ドキドキする…母様も継承の時はこんな感じだったのかな。


「2代に渡って引き継がれた時の神子の力、私は貴方の力を信じます…その力で作る未来を、託します」


神子の力が受け継がれていくのが分かる…力の光がすべて渡った時、私は神子としての仕事が終わった。


「継承は完了しました…レイラ、がんばってね」

「はい、母様…ありがとうございました!」


そう言ったレイラの顔は神子の顔だった、これなら大丈夫だろう。




   *   *   *




『そう、お疲れ様だったわね』

「いえ、これで私達も動けます」

『マリアには地下の方を常に監視してもらいたいわ』

「はい」


さぁ、やるべきことをやらないと。





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