メイリラルド歴830年
―ーキーン―ー
「また歪み…」
「最近多いね」
最近歪みが多発、魔物の数が増加している。
「…まるであの時みたいだ、まさか…でも、アレは母上が…」
「兄様?」
アレって何のこと?
「とりあえず歪みを直してから…アランに報告だ」
「…分かった」
早く直さないとね。
* * *
場所は変わって陛下の執務室。
「最近歪みと魔物の数が増えているようだな」
「あぁ、まるであの時のよう」
「…だがアレはもう死んだはずだ」
「そう、封印ではなく母上が殺したはず…もしかしたら新しく誕生したのかもしれない」
…もしかしてアレっていうのは、私が生まれる前に復活し母様に倒された魔王のこと?魔王が倒されて今年で218年、また魔王が誕生したら私達はどうすればいいのだろう…また異世界人を巻き込んでしまうのかな。
「マリア?どうした?」
「…仮に魔王が誕生したとして、また異世界人を…巻き込んでしまう事は避けたいです」
「あぁ…そうだな、とりあえず今は様子見だ。マリアもラトも、注意しろよ?一番危険な役を担っているのはお前たちなんだから」
「はい」
「わかってる」
油断しないようにしないと。
* * *
「母様…最近、歪み多いね」
「そうだね」
「大丈夫だよね?」
「大丈夫よ…」
レイラが最近不安そうにしている…私達が居ない間はアイル姉様の元へ離れないようにしている、その方が何か会った時に楽だから。
「何か起きても僕がレイラを守るよ」
「本当?ルーク兄」
「あぁ」
微笑ましいね、本当にこのまま平和でいてほしいのだけど…わからないね。
ーーキーンーー
「行ってくるわね」
「いってらっしゃい母様」
「お気をつけて」
* * *
「本当に多い…」
「気をつけてマリア」
私と兄様は歪みを直した後、周りを見て回った。
「以上は無し…か」
「帰ろ…ッ!!」
ーーキュイーーーーーーー―ン――
「ッ…なんだ?」
激しい魔力を感じた、今のは…何?何が起きたの?
「今の魔力…まさか…マリア、早く戻るぞ!」
「う、うん!」
珍しく兄様が慌てている。
「アランの元へ飛ばせ!」
「分かった!」
兄様の言葉に陛下の執務室に瞬間移動すると陛下は窓の側にいて外を睨んでいた。
「アラン」
「ルド、まずいことになった」
「あぁ、分かってる。恐らく今の魔力はそう世界中に回っていないはず」
何が起きたの?
「いったい何が?」
「…魔王だよ」
「魔王?」
「魔王が誕生したんだ」
…まさか、でも何故
「至急会議を開かないとだな」
そう言って陛下が動き出した。
* * *
あれから三ヶ月、その間に魔王の魔力が世界のあっちこっちで感知されるようになった…何かを探すように、魔王の目的は一体なんだろう。
ちなみに今回のことは母様たちにも報告済みで母様と父様だけでなく、ライド様たちも協力してくれている。
「…今日で何個目?」
「数えてないから分からないが…かなり多い」
歪みの数は多すぎて私も兄様も休むに休めない。
「お疲れ様です父上、叔母上」
「ありがとうルーク」
魔王の目的は全くわからないし、歪みは多発するし…ゆっくり休みたい。
「母様、大丈夫?」
「大丈夫よ、それより最近かまってあげられなくてごめんね?」
「アイルおばさんがいるから大丈夫!」
「そう、アイル姉様ありがとう」
「いえいえ、マリアこそあまり無理しないでね」
「マリアは辛いことを我慢するから心配だよ」
「アスト…辛かったらちゃんと言うよ」
守りたい人達がたくさんいる…だから私は頑張れるんだ。




