メイリラルド歴521年 (3)
「ほら、朝よー!」
(ん?夢?)
「早く起きないとでしょう」
(あれ私…確か異世界に…)
「姉さんおはよー」
「2人とも早く食べないと遅刻するわよ?」
「嘘っホントだ!やばい!」
「優莉おはよう!」
「おっす優莉」
(みんな…)
「みんなおは…」
「やっぱりあの子は悪魔だわ」
「あの子のせいで…」
「アレがいなければ…」
(嫌…)
「悪魔が次期当主なんて馬鹿げたこと」
「呪われた子」
「七瀬家の次期当主は優希さんでいいのよ」
(嫌…やめて…)
「アレはいらないわ」
「悪魔」
「悪魔」
「呪われた子」
「優莉…あなたのせいではないのよ」
「姉さん!ごめんなさい、ごめんなさい!」
「なぜ」
「なぜ」
「どうしてあんな子が…」
「生まれてきたの?」
「…っ!」
ここは?…そういえば異世界に、それで…
「はぁ…久しぶりにあの夢みたわね…」
ノックが聞こえ扉が開いた。
「おはようございます…魘されていたようでしたが、大丈夫ですか?」
「大丈夫…悪い夢を見ただけよ」
そう…あれは夢…今日から神子について勉強する、天才少年と会う…よし!
「さて、今日からがんばろう」
「はい、応援します!」
まずは着替え…
「…ドレス」
「よく似合いますわ!!」
ドレスとか…初めて着るわね
「丈が少しだけ短いし…これなら歩きやすいわね」
「それは良かったです!さ、朝食にしましょう」
…朝食おいしい…さすが王宮。
「第4資料室は王宮内の2番目に大きい資料室なんです」
現在、メリアと2人で第4資料室に向けて歩いている。
「資料室はいくつあるの?」
「資料室は8部屋あります、その中で一番大きいのが第1、2番目が第4で、あとの部屋はほとんど小さい部屋になっていますが…小さい部屋ほど解読不明な資料がたくさんあるようです」
解読不能?そういうのもあるのね
「こちらが第4資料室です」
よし、はいってみましょう
「…たくさんの本…学校の図書室と同じぐらい?」
一番大きい第1はこれよりもっと広いのか…市内図書館みたいな広さかもしれないわね
「…この広さで2番目?どれだけ大きいのよ…」
「そうだね」
…え?
「こっちこっち」
どっちよ…
「ユーリ様、あちらです」
奥の方に…1人の少年が
「君がユーリ・ナナセでいいんだよね?」
「あ、うん」
「はじめまして、僕はルドレイク・ミドル・サーベイト…天才とか言われているらしいけどそう言われるの嫌いだからよろしく」
なかなかいい子じゃないの
「…優莉 七瀬です。よろしくお願いします」
「僕のことはルドって呼んで?」
「分かった、私のこともユーリで」
そう言うとルドはニッコリと…微笑んでるのではなくニッコリと…
「?…どうしたの?」
「ユーリは他の人とは違うな~って」
「他の人?」
なんとなくわかった気がする…父のレイダリアさんに似て美形だものね
「…苦労したのね」
「あ、分かった?」
それだけ美形なら女子たちにとっては超優良物件ね
「ユーリも苦労したんじゃないの?」
「私?私なんてまったくよ」
私は誰とでも平等だったしね
「ふ~ん、以外」
何がよ、悪かったわね
「さてと、まずはこの世界についてね」
「僕が説明するよ」
「え、いいの?」
天才君自らとは
「うん、僕の方も復習みたいだし」
なるほどね
「じゃあ、お願いするわね」
「まず、この世界の名前はメイリラルド。月の女神メイリと太陽の神ラルドの名を合わせてメイリラルドになったと伝えられている。」
本当に名前を合わせただけなのね~
「次に、この国の名前はメルゼルク。今から171年前、現国王が他国の反対を抑えこの国を作り今に至る…この国は元々、隣国のレビュール王国の領地だったんだ。だけど、当時レビュール王国の王宮騎士団長を務めていた現メルゼルク国王がいきなり国を作るとか言い出して作ったらしい」
何それ、というか王様…騎士団長だったのね…今から171年前…王様が今150歳だから、この国を作った時は21歳!?若くして国作って騎士団長から国王まだ階級が上がったとか…すごすぎよ!
「いきなり…どうしてなのかしらね」
「さあね?それは国王と父上の知るところさ、父上は王宮騎士副団長だったらしいから」
へー…2人とも強いのね。強くないと務まらないけどね
「あとは明日から先生がついて色々学んでいくと思うよ」
「そうね、ありがとう」
「どういたしまして」
…さすが超優良物件、笑顔が眩しいわ
「さて、話したお礼にそっちの世界のことを教えてよ」
「そうね…私の世界の名前は地球。地球ができて約46億年経過していると推定されているの。」
「チキュウ…地球か~本当に違う世界なんだね」
私も改めて思ったわよ…
「次に、私が住んでいた国は日本という国で周りが海で囲まれている島国なの。昔からの伝統文化がたくさんあって、観光地がたくさんあるわね」
「楽しそうな国だね」
「そう言ってくれたら私もうれしいわ」
「そういえばユーリの国には貴族とかいないの?」
「一部を除いてほとんど無いわ」
「一部、か」
「ええ、旧家はまだ当主争いがあるわ…ルドはそういうの無いの?」
父親が側近ということは絶対に貴族でしょうね。
「家は公爵家だけど僕は三男だしね、次期当主は上の兄がなる予定だし争いはないよ」
公爵って王族の次に偉い地位なのよね…もう驚くことに疲れてきたわね
「ユーリの家は旧家なの?」
「…なんで?」
「資料室に入ったときに見た歩き方、話すときの言葉遣い、仕草」
…さすがね。
「そっちでの一般人がどういう育ちなのかは知らないけど」
…人のことをよく見てるわね。
「一般人と言ったら?」
「嘘だね」
…私は平凡でいたかった。
「なんで嘘だと言いきれるの?」
……彼ならば
「勘…かな」
…彼ならば、私には無いモノを持っているのかもしれない。
「勘、ね」
「答えは?」
彼が私だったら良かったのに
「答えは…」
何といえば良いのだろう…この世界では本当の事を言えるのだけど
「一応、合ってるわね」
「一応?」
ここは違う世界…。
「…乙女の秘密というものよ」
「ふ~ん」
彼はそれ以外何も話さなくなって、私の本のページをめくる音しかこの第4資料室には聞こえなかった。
コンコン
ノックが聞こえメリアが入ってきた。
「ユーリ様、ルドレイク様、お迎えに上がりました。陛下がお呼びになっておりますので2人で来るようにとの言伝が」
その言葉に私とルドは顔を見合わせた。
「行こうか」
「うん」
「案内致します」
そして2人はメリアに案内され陛下の執務室へ向かった。
コンコン
「陛下、ユーリ様とルドレイク様をお連れ致しました」
王様のお呼びなんて…なにかしら、少しワクワクするわね。
「入れ」
メリアさんが扉を開くと王様が椅子に座っていて横にはレイダリアさんがいた。
「来たか」
そう言って笑う王様。するとレイダリアさんが
「座ってください」
というので私はルドの隣に座った。
「ユーリ殿、どうですか?私の息子は」
レイダリアさんの質問にルドの美形が台無しに…もったいない
「…話していてとても楽しいです。歳も同じですし、話しやすいです」
ね、とルドに言うと笑顔で頷いてくれた。
「それはよかった」
「うむ、ユーリ…ルドも中々の顔だろう?」
王様の言葉でまたルドの美形が台無しに…
「まあ…私の世界にも綺麗な人はいましたし、その分性格は最悪な人もいました。でもルドはそんな人ではないと合って最初に気がつきました」
私の言葉にルドは驚いていた。
「最初に気づいたの?」
「うん…人というものは外見ではなく中身を見るようにしているの、だから私は最初に気づいたわ…苦労しているなって」
王様もレイダリアさんも驚いた表情を見せていた。
「…驚いた、これこそ俺らが望んでいた者。やはり召喚は成功したのか…ただ、ユーリの生活を台無しにしてしまった…すまない」
そう言って私に頭を下げた…って!ちょっ!一国の王様が!?
「…王様、そう簡単に頭を下げてはいけませんよ」
「しかし」
「むしろこちらに呼んでくれて感謝です…私にとって、あっちの世界は地獄でしかない」
「…聞かせてくれないか?嫌なら別によいが」
王様は本当にいい人なのね、物語に出てくるような王様ではなくて良かった。
「いえ…一応、王様達には話したほうがいいでしょう」
全てを…すべてを話してしまおう…ここには彼らがいないのだから…