メイリラルド歴686年(1)
時が過ぎ、マリアも12歳になった。マリアも歪みを見ることが出来るし感じる事もできる、それに…あの子は歪みが出るたびに何かを恐れている…一体何なのかしら?一度あの子に聞いたことがある。
「分かんない…でも、怖いの」
そう言うだけで本人も分からないのならどうすることもできないわよね。
* * *
今日は仕事を休んで家族でゆっくり休んでいた。
―――キィィィィィン―――
「…歪みだな」
「ん?普段とは違う歪みの音…何かしら?」
「お母様っ」
マリアが泣きそうな顔で抱きついてきた。
「マリア、どうしたんだ?」
「お母様、お母様と勇者は別の世界から来たんだよね?」
「えぇ、そうね」
「向こうの生活があったのにこっちの世界が勝手に連れてきたのでしょう?」
「…それがどうしたの?」
マリアは泣いていて何を言っているのか…分かっているけど、どうしたのかしら…今の歪みと関係しているの?
「お母様っ…うぅ…」
「マリア?落ち着いて、どうしたの?今の歪みと関係しているの?」
私が聞いても何も言わずただ私に抱きつくばかり…でも歪みの元へ行かないと。
「マリア、おいで」
「グズっ…おにいさまぁ」
「よしよし、落ち着いて」
困っているとラトルクがマリアを抱き上げてくれた、助かるわ。
「マリアは僕が見ておく」
「えぇ」
「頼むよラトルク」
よし、これで行けるわね。
* * *
「中位の歪みね」
「人一人分ぐらいの大きさのようだけど」
一人が限界…ん?
「足跡?」
「行ってみようか」
地面にある足跡を辿る…すると…あれは、人?
「生きてる」
黒くて長い髪の…女性ね。
「とりあえず連れて帰りましょう」
「そうだな」
歪みを消し、女性をルドが抱え瞬間移動した。
* * *
「彼女があの場所に倒れていた理由…どう見ても歪みだろうな」
「恐らく彼女は歪みに巻き込まれてやってきたのでしょうね、細かいところは彼女が目を覚まさないと」
彼女は今家の客室に運び寝かされている。いつ目を覚ますか分からないけれど覚ましたらとりあえず様々なことを聞かないと、ちなみに彼女の事はアランシスには報告済み。
「お母様!お姉さんが目を覚ました!」
「分かったわ、ありがとうマリア」
「うん、私これから勉強あるから行ってきます」
「頑張ってきてね」
「はい!」
さてと、私も頑張らないとね。そう思いながら客室の扉を開けた、そのまま寝室の扉をノックすると少し高い声が聞こえた。
「失礼するわ」
扉を開けるとベットから起き上がりこちらを見る、見た目がどうみても日本人の女性が軽くお辞儀をした。
「目が覚めて良かったわ、貴方には聞かなければならないことがあるから…とりあえず自己紹介ね、私はユーリ・ミドル・サーベイト。貴方は?」
「私は北原彩美です、あの…日本人、ですよね?」
やはりね。
「えぇ、そうよ。さっそくだけど彩美さんは何故この世界にやって来たか分かるかしら?」
「いえ…朝に学校へ行こうと家を出たら大きな穴が開いて落ちたんです」
その後彼女の話しを聞く限り向こうでの世界は私と恵理達がこっちに来た日と同じ…メイリラルドの時間は過ぎているのに地球での時間は変わっていないのね、まぁ…私としては本家が私を探さないっていうのがとても嬉しいことだけど。
「なるほど、歪みに巻き込まれて彩美さんは来たっという結論でいいみたいね」
「呼び捨てでいいですよっ、ユーリさんの方が年上ですし」
「あら、でも地球での私は16歳、18歳である彩美さんの方が年上よ?私の方こそ呼び捨てでも構わないけど」
「無理です!」
即答ね。
「ユーリさんは何というかえーっと…こう、物凄い会社の社長みたいな雰囲気が出ていてとても呼び捨てなんてできません!」
会社の社長…ふふ、あはは!
「はは!…くくっ…物凄いっ会社のっ…ふふっ社長っ…ふふ!」
思いっきり声を上げて笑ってしまったわ、彩美さんは驚いているし。
「そ、そんなに笑わなくってもいいじゃないですかっ」
「ふふ…ごめんなさいね」
あまりにも面白くって…。
「もう、ユー「グー…」……」
「ふふ、そういえばお昼なのよね。異常は無さそうだし、食事にしましょうか…紹介しないとだしね」
「うっ…はい」
* * *
「広いお屋敷ですね」
「これでも狭い方なのよ?夫の実家はこれの倍はあるし王宮は論外の広さ」
「倍…」
これでも十分広いわよね。
「この部屋よ」
そう言って扉を開けるとテーブルには昼食、椅子には家族が勢揃いしていた。
「軽く紹介をしましょうか…彼女は彩美 北原、この度はの歪みでこの世界に来た私と同郷の人よ。彩美さん、右が夫のルドレイク、向かいに座っているのが息子のラトルク、その隣に座っているのが娘のマリアよ」
「よろしくアヤミ殿、ようこそメイリラルドへ」
「よろしく」
「よろしくねアヤミお姉ちゃん!」
「よ、よろしくお願いします」
さてと、まぁ詳しいことは後で食べましょうか…そう思った時ノックが聞こえた。
「失礼します」
「ちょうどいい所に来たわ…彼女はメリア、もう一人ルイという子がいるのだけど我が家の使用人兼友人よ」
「メリアと申します、何か不自由がございましたらお申し付けください」
「あ、彩美と言います!よ、よろしくお願いします」
「冷めないうちに食べましょうか」
相変わらずルイの作るご飯はおいしいわ。




