メイリラルド歴612年(2)
「ラトルクさんだよね?初めまして!里奈と言います!!本当にルドレイクさんにそっくり!」
「恵理です」
「真人です」
「和樹です!さすが親子」
「えっと…ラトルク、です」
「かっこいい!」
「性格はユーリ似だよ」
やることも終わり、悠久の剣メンバーも当分滞在するため今日は改めて自己紹介と雑談をしている…話題はもちろん息子のラトルクだ、本人は困っているけど。
「この世界に来て本当にいろんなことしたね~」
「ゲームの中じゃなくって現実に殺し合いがあっていうのは日本に住んでて平和に生きていた俺達にはきついものがあったしな」
「生きているっていうのがどんなに嬉しい事なのか…分かったな」
「辛いことも会ったけど…楽しいこともあった、平和だったのね…地球での私達」
「平和…平和ねぇ…」
地球での思い出を想像しているであろう4人には失礼だけど私にとって地球での生活はいつも戦争だったしいつ殺されるかも分からなかった…今では寧ろ思い出になっているわよ。
「そういえば、いつだったか…集まりの時に出されたお茶に毒は入ってたのよね、お返しに神経毒を入れておいたのだけど…どうなったのかしら」
私が平然と飲んでいるから驚いた顔していたのよね、あの後毒の知識がある人が神経毒を用意してお茶に混ぜたのだけど…どうなったのか、聞いてみたら皆いい笑顔だったから…想像はできるわね。
「平和だったわねぇ」
「いやいやいや!!それのどこが平和なの!?」
里奈にツッコまれ、それに皆が笑っている。こうやって皆が笑顔を浮かべるのを見ると今までやったことに後悔はないと気付かされる…確かに辛いこともあった、でも…それが私の背中を押してくれた、これからも頑張れると思えた…だから私はこの世界を守り続けている、リリアさんとの約束を思い出しながら。
隣国が世界の中心だったメイリラルド歴400年まで、多くの歴代神子たちがこの世界を守ってくれていた…そしてここ、メルゼルク王国が建国し世界の中心になった時…リリアさんは新時の神子としての一代目を担った、そして私も2代目を担っている…まだこれから何が起こるかわからない…でも、今だけは楽しもうと思う。
チーム悠久の剣のリーダーであるライトがそろっと旅を再開する話が出た。
「ラト、旅を続けたい?」
「…続けたいです」
「そう…なら歪みの監視をしつつ楽しんでいらっしゃい」
「…いいのですか?」
「もちろんよ、恐らくこの先100年は異常な歪みは無い気がするしね」
今回一番頑張ったのはラトなのよね、だからこれはご褒美。そう言ったらキョトンとして嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます、母上」
…最近はよく笑うようになったけど、こんなに嬉しそうな笑みは初めて見る…ほら、ここにいる皆が固まってるし女子達なんか顔真っ赤にしてるし男子達も少し顔が赤い…凄い破壊力ね。
「…どうしたの?」
「いや、凄いなっと…」
「はわ、わわわ」
アイルが顔を真っ赤にしたまま慌てている、こっちもこっちでかわいい。
「どうしたのアイル」
「はわっ!?え、えと、えっと!ら、ラトの笑顔が!か、かっこ、よく、て!!好きだな…と」
「そう?」
「そうなのっ!!」
最後の方は小声だったけど聞こえたしいラトルクはうーん、と悩んでいる…何か面白いことが起こりそうで黙って聞いておく。
「うーん、でも」
「?」
「アイルの笑顔のほうが可愛くて好きだよ」
「ふぇっ!?」
天然ってすごいわね、アイルなんて沸騰してテーブルに顔を伏せている…ものすごい音が聞こえたけど色んな意味で大丈夫じゃ無さそうね。
ちなみに、皆は性格が母親の私に似ていると言うけれどあの天然物は父親であるルドに似たのよ。
「うわぁ…今まで優莉に似ていると思っていたけど、あの天然物はルドレイクさん似なんだね」
「イケメンに天然…凄いキャラ」
恵理と里奈の呟きに私は隣に座るルドを見た、ルドは私に気づくと笑顔で口を開けた。
「僕はもちろんユーリの笑顔が大好きだよ」
そう言われた瞬間、唇が一瞬暖かくなった…き、キスされた…。
「キャー!」
里奈の黄色い声を聞きながら顔が赤くなっていいくのが分かる…なにこの公開処刑は!皆が居るのよ!?
「な、なななななななっ!」
「ふふ…ユーリ顔真っ赤」
「誰のせいよっ!」
穴があったら入りたい気分…思わず顔を手で覆う。
「こんなところでやらなくてもいいじゃないのよぉ何なのよまったくぅ」
「あはは、優莉はいい旦那さんを持ったね」
「…まぁね」
「幸せで良かったよ」
「…そう、ね」
「私達がここにいる限り向こうの世界の時間は止まっているんでしょう?」
「…おそらくね」
「じゃあ今を大切にしないとね、優希ちゃんだってそう思ってるよ」
そうなのかしらね、長年生きていたら地球での出来事もあまり思い出すことがなくなっているけど思い出そうと思えば思い出せる。
「…この世界って本当に長生きよね」
「いきなり話が変わったな」
「男のくせに細かいこと気にしているんじゃないわよ」
「軽く酷いな優莉」
そんなこと知らないわよ。
「神子様の世界では寿命が短いのか?」
そう聞いてきたのはチーム悠久の剣のリーダーであるライトだった。
「この世界の平均寿命は500歳だけど向こうの世界で私達が住んでいた国は確か…80歳くらいだったかしら」
「80歳!?」
驚くのも当然よね、この世界での80歳はまだ子供に入るのだから。
「私達って召喚された日を誕生日にしているからまだ17歳なんだよね」
「この世界では赤ん坊だな」
「優莉は何歳なの?」
「私?私は…107歳だったかしら」
「107歳で合っているよ」
同い年であるルドが合っていると言うのだから大丈夫ね、にしても…同じような会話をしたことがある気がするけど…忙しくて忘れたわね。
「地球だったらお祖母ちゃんだね」
「孫どころかひ孫は絶対にいそう」
「……」
こんな感じで楽しく話をしていた、特に悠久の剣メンバーからの旅の話は面白いことがたくさんあった。
解散後陛下とレイフィアにずるいと言われた…仕方ないでしょう二人には仕事があったのだから、そう言ったらレイフィアが唐突に女子会を開くと言ってきたので準備を急遽することになった。
* * *
「本当に女子会…」
「王妃様すごい」
「はわわ」
「こんなところに居ていいのだろうか」
「王妃様なんて、私のことはレイフィアと呼んで頂戴ね!リナとエリはユーリの親友と聞いているし、エリンとアイルはラトルクがお世話になったし」
「あら、じゃあ私もマリアムと呼んで?義娘と孫がお世話になったのだから」
今ここにいるのは恵理と里奈、エリンとアイル、レイフィアと私、それにお義母様もいる…何故お義母様がいるって?丁度城に用があるため来ていて用事も終わり帰るところをレイフィアが捕まえたとのこと。
「ねぇねぇ!アイルは好きな人いるの?」
「わ、私!?」
「そうそう!」
直球すぎよ里奈…内心が丸見え、まぁそんなことはとある人物を思い浮かべているであろうアイルは気付かないけど。
「す、好きな人」
「うんうん」
「ら、ラト…///」
「やっぱりね~」
まったく、里奈も分かっててやるのだから…。
「ラトルクさんとはどうやって出会ったの?」
「えっと…最初私は一人で旅をしていたの、ある日に酒に酔ったおじさんに絡まれて…助けてくれたのがラトだったの」
「え、でもアイル強いよね?」
「そ、そうかな…でも、魔法と言っても私は攻撃魔法専門だから加減を間違えると危ないから極力人に魔法を使わないようにしているの」
いい子ねアイルは。
「…私、他の人には見えないモノがずっと見えていたの」
「ゆ、幽霊?」
「違うの…歪みが、見えるの…ユーリさんとルドレイクさんしか見えないはずの歪み…旅の途中でラトも見えるって知って安心したの」
「なるほどなるほど、それで好きになったんだね」
「あう…」
こんな可愛い子を惚れさせるなんて…恐ろしい子。
「母親としてはどんなお気持ちですか優莉さん!」
そう言ってマイクを持つようにして手を向ける里奈…どこのアナウンサーよ。
「別にいいわよ」
「…と言うと?」
「私としても息子がこんなに可愛い子を嫁にするなんて…まったくあの天然は」
「えーっと、それは許すってこと?」
「何を許すのよ…大歓迎するわよ」
「おぉ!良かったねアイル!」
「ふぇ!?えっと…あの」
「ふふ、旦那に似て天然で変に鈍感だからがんばってね?私はアイルの味方だから」
「あ、ありがとうございます!」
顔を真っ赤にさせながら言うアイルに皆が微笑ましく見ている…可愛い。
「旅をしている最中にくっつけとラークが言っていた」
「え、そうなの?」
「リア充爆ぜろとも言っていた」
「まぁ、その気持ちは分からなくわないけどね」
確かに、魔王を倒すべく旅をしている時に里奈が「絶対にあの二人は両思いだよ!」と言っていたのを思い出す…長くなりそうね。
「むぅ…私よりエリンはライトさんとどうなってるの?」
「ん?あぁ、実は式典の後正式にプロポーズされて」
「え!?」
「一応両親に手紙で許可は得たから、旅ついでに改めて挨拶を…と」
「そうなの!?おめでとう!」
エリンとライトは元々恋人同士だったそうなのだけど魔王の討伐のため正式なプロポーズは後にしていた訳なのよね、そして魔王討伐の式典後にプロポーズをしたとのこと。旅の最中に実家に戻って正式に籍を入れた後再び旅を再開させる予定だ、おめでたいわね。
「ふふ、青春ねぇ」
「懐かしいわねぇ」
「宰相様と陛下との出会い話聞きたいです!」
「そう?」
「ふふ」
それからは長い長い出会い話を聞いて女子会が終わった。
そしてその3日後、ラト達悠久の剣は再び旅を始めたのだった。




