メイリラルド歴522年 (1)
この世界にも四季はある。
それも日本と同じで春夏秋冬と言う…それを聞いた時は本当に驚いた。でもこの世界は14月まであるから一年が長いという。私を召喚したのは7月、季節配分は地球と似ているから初夏ぐらいだったのね。
今は1月、レイフィアのお腹も大きく膨らみ国中が今か今かと待ちわびている…私もその一人なんだけどね…そんな私は今日、レイフィアの元を訪れている。
「国中っというより、世界中が待ってる感じよ」
「ふふ、各国の王様は皆ライドの友人だから」
この国にある国立の学園には各国の王家の人たちが通っているとのこと、そこで出会い共に学んでいったから王になったも者もそうでない者も今でも仲が良いらしい。大昔は戦争が絶えなかったけど学園を作ったことにより戦争がなくなったって聞いた時には学園の偉大さを知った。
「男の子かな?女の子かな?」
「楽しみね」
「うん、がんばってねレイフィア」
「ありがとうユーリ」
それから私達は最近の出来事、私の仕事のことなどについて話し時間になったので部屋を後にした。
部屋に着いてふと気付いたけど、神子を引き継いだ時にリリアさんは”アランシス”と名付けるように言った…もしかしたらリリアさんは生まれてくる子の性別が分かっていたのかもしれない。となると…男の子?男の子だったらこの国も安静ね。
そんな私の予想はその日の夜に知ることになった。
「…大丈夫だろうか」
「陛下、それの言葉30回目ですよ」
「心配なんだから仕方ないだろう」
王様とお義父様の話を聞きながら横にいるルドに寄りかかり寝そうになっていた。陣痛が始まったのが12時。寝ていた私をメリアに起こされた。家に帰っていたお義父様とルドも陣痛の知らせを聞いたら城に戻ってきた。
「レイダリアだって最初は同じ思いをしてただろう」
「全くしていませんね、私はマリアムが強いことを知っていますから」
「クソめ!」
眠い、とてつもなく眠い…寝ていいかしら
「…王様、レイフィアを、信じてあげて」
「…眠そうだな、っというか寝てるか?」
瞼は閉じても聞いてるわよ…たぶん
「優莉、眠いなら寝ててもいいよ?」
「がんばって起きる…ねぇ王様」
「なんだ?」
「リリアさんの言葉、覚えていますよね?」
「ああ」
『もうすぐ生まれてくる子には”アランシス”と名付けてほしいの…きっと近い未来、その名は世界中を駆け巡るわ』
「アランシス…男か?」
「おそらく」
私がそう言った瞬間、隣の部屋から元気な赤ん坊の鳴き声が聞こえた。
「元気な男の子ですよ」
その言葉に王様は嬉しそうに笑った。
「ライド、男の子よ」
「あぁ、レイフィア…ありがとう」
「名前はリリアが言った通りのアランシスね…よろしくねアラン」
国王夫妻を少し離れて見ていた私達にレイフィアが側へと来させた。
「ユーリ、抱っこしてみる?」
「…いいの?」
「もちろん!」
初めて抱っこした赤ん坊は小さかった、でも…なんだろう。
「この子…力がある、リリアさんの言った通り…アランシスの名は世界に広がる」
「リリアが言ったのだからそうに決まってるわ!強く優しい娘に育ってほしいわ」
そう言って笑うレイフィアの顔は母の顔になっていた。
* * *
朝、出産を知り国中がお祭になった。私?私は普通に仕事よ?大臣たちは出産祝いの贈り物などで忙しいし、歪みにとって出産なんかどうでもよく出現するから特に変わらず仕事をしている。まぁ、暇な時はレイフィアの手伝いをしているから忙しいと言えば忙しいわね。
「本当に賑やかね」
「念願の子だしそれも跡取りだからね」
「日本ではとくに決まりはないけど、この国は男性が絶対に跡取りなのね…女の人でも立派な人がいるのに」
「そういう時は陛下からの許可を経て女当主になれるんだ」
「へぇ、すごい」
「この国は強き者が上を行く、だからね」
「いい制度ね」
私は今お祭り騒ぎ関係なく出現した歪みを直し、レポートも書き終わったので休憩をしていた。アランシスが生まれてから歪みが多くなってきた気がする…気のせいかしら。
「はぁ…」
「お疲れ様、優莉」
「その名は世界を駆け巡る、か…近い未来と言ってもいつになることやら」
「世界を駆け巡る程の何かが起きるって事だから…このまま何も起き無いことを祈るよ」
本当に何も起こらないことを願うだけね。
「さてと、休憩終わり!もう一仕事しないとね」
「これが終わったらレイフィア様の所に行くだろう?」
「うん、最近会ってないからお茶会しながらの情報交換というか女子会ね」
そうなのよ、この仕事さえ終わってしまえば後はお楽しみのお茶会なのよ。頻繁に起きる歪みを直すのに世界を移動しまくり、帰れない時も会ったからレイフィアとも会うのは久しぶりなのよね。
今日の仕事も終わり、ルドと別れ私はレイフィアの元を訪れていた。
「ユーリ、久しぶりね!大変だと聞いていたけど大丈夫?」
「一応一段落ってところよ、ようやく落ち着いて休憩できる…」
「お疲れ様」
久しぶりに見るレイフィアは元気そうで良かった。
「アランは?」
「サリーが後で連れてきてくれるわ」
サリーとはマリアムさんもお世話になった乳母さんでルド達の第二の母である。レイフィアと様々な話をしている最中、彼女はアランとともに部屋を訪れた。
「あうっ」
「ふふ、アランは今日も元気ね」
「あうあ!」
手を伸ばしてきたので抱っこさせてもらった。
「あうー」
「…レイフィアに似てるね」
特に目元が似てる。アランがレイフィアの手に渡ると安心したのか眠ってしまった。
「…かわいい」
「でしょう?ユーリも早くルドと結婚したら?」
「…はい?」
けっこん…結婚!?いやいやいやいや!ちょっ!えっ!
「…考えたことがない」
「とてもルドに愛されているのに」
「うっ…」
考えたくない…何も考えたくないー!
「楽しみに待ってるわね」
何をですか…まだ私この世界に来てまだ一年も経ってないのに、そう思いながら私はレイフィアの部屋を後にした。
今日はルドの顔をまともに見れる気がしなかった。
* * *
私は今仕事部屋の前にいる。普通に部屋に入ればいいのだけどレイフィアとの会話が頭によぎって中々入れない。
…よし、入ろう。
「おかえり、優莉」
「た、ただいま」
おかえりと言って笑ったルドにドキッとした…あーもう、レイフィアの馬鹿。
「久しぶりにレイフィア様と会ってどうだった?」
「元気でよかったわアランも少し大きくなっていたし」
「それはよかった、ところでどうしたの?」
「何が?」
「さっきから目を合わせないようにしているから」
す、鋭い。
「そ、そうかしら?」
「うん」
「…」
ダメだ、これは言わないとダメなパターン…。
「で、何があったの?」
「じ、実はレイフィアとの話で、アランを抱っこしていたら急にレイフィアが…」
「?(にっこり)」
怖い、無言の圧力怖い。
「レイフィアが急に早く結婚したら?っと言ってきまして…」
「誰と?」
「ルドと」
笑顔が深くなった。怒ってるのか何なのか分からなすぎる…どっちなんだろう。とりあえず未だに笑顔で無言の圧力が治っていない、見ていれなくて下を向いてしまう。
「怒ってないから大丈夫だよ」
「…本当に?」
「うん」
顔を上げて見るといつもの優しい笑顔で私を見ていた。
やっぱりルドの笑顔は大好きだ。




