メイリラルド歴521年 (1)
いつものように重たいと感じるリュックを背負って片道30分の道を歩く私、七瀬 優莉16歳です。
はっきり言って私は自分の家にいたくない…だから私は早く学校に行きたかった。
学校に行けば、皆がいるから。
* * *
今日も1日が始まる、そう思いながら憂莉は起きた。
「いってらっしゃいませ」
「…行ってきます」
いつもより重たいリュックを背負って学校まで向かう。
「今日の授業はいいのが無いな…」
そう呟きながら道を歩いていた。
(――見つけた――)
「え?」
何かが聞こえて声を出した瞬間、憂莉の視界にはいつもの道ではなくどこかの部屋になった。
「よくぞ我が召喚に答えてくれた」
「…え?」
(召喚?)
憂莉の前には4人の男が立っていた。
「私の名はライドレシア・オルフ・メルゼルク、そなたの名は?」
「私は…七瀬優莉です、こっちだと優莉 七瀬になると思います。」
名前が長い…普通に王様と呼ばせてもらおう
「うむ、ユーリと言うのか…ここで立ち話も疲れるだろう、色々と説明しなければならぬことがあるのだし、部屋を変えよう」
そう言って名前の長い男は部屋を出ていった。…これは付いて行かないといけなのかな?行かないとだよね、うん。
それから私は客室?らしきところにあるソファーに座らせられた。
「いろいろ聞きたいことがあるだろうが改めて自己紹介といこうか。俺の名はライドレシア・オルフ・メルゼルク、今貴殿がいるこの国、メルゼルク王国の国王をしている。俺の後ろに控えているのが側近のレイダリアだ」
後ろの人…レイダリアさんがお辞儀をした。っというかさっきは私って言っていたのに自分のこと俺って言ってる…使い分けているのはわかったけど、さっそく素を出すなんて、いいのかしら。
「側近のレイダリア・ミドル・サーベイトと申します」
名前…長いなぁ…そう簡単にに覚えられないわね、とりあえず私も自己紹介。
「ええ、と…私の名前は優莉 七瀬と言います、学生です」
王様が頷いたのでこれでいいのかな?
「では説明しよう、この世界はメイリラルドという世界だ」
やはりそうだったのか…ていうことはここは異世界?リアルファンタジーだ!
「ユーリ殿にとっては異世界となる…それはもう気づいているようだな。さてここから本題だ、我々がなぜ召喚してまでやってもらいたいものがあるのかを」
勇者として魔王を倒せなんて言わないよね?
「神子として、この世界のバランスを保たせてほしい」
…はい?いやいやいや、そこは勇者になってほしいって言うでしょう!私の期待はなんだったのよ…
「…神子?」
王様が頷いた。…これは話が長くなりそう…。
* * *
この国には世界のバランスを保つ役目を担う神子という人がいた。
神子はこの世界のバランスを監視し、時にはバランスを直した。しかし、突然巨大な歪みが発生した。神子はそれを食い止めようとして何処かへ姿を消し、今も行方不明とのこと。
そしていまに至る。すごく簡単に説明すればこんな感じ。
「…なんかよく分かりませんが、大変ですね」
「まったくだ…」
半分聞いていないので本当に分からないけれど…大丈夫でしょう。
「さて…ユーリ殿、我々としてはユーリ殿に神子になってもらいたいのだ。召喚とはいえ違う世界での住人であるユーリ殿が決めて欲しい。断ってもかまわない」
…すごく悩む選択、どうしようか。
「…姿を消した神子はまだ見つからないのですか?」
「ああ、今もまだ見つかっていない」
このまま神子が不在の場合、世界のバランスが崩れたらどうなるのか…それはみんな分かっているのね。あとは私の言葉を待つだけ…か。
「…もし私が断ったらどうするのですか?」
「…もう召喚はできぬから、バランスを崩さないのを祈るか…姿を消した神子を探すしかなかろう」
あらら…それは大変ね。…よし、決めた。なってやろうじゃないの、神子に!…その前に
「王様、殿はつけなくてもかまいません、むしろそうしていただくとありがたいです」
「そうか、ではユーリ…君はどうしたい?」
これでよし…
「分かりました。いろいろ不安ですが、その件、お受けいたします」
「…ということは」
「神子に、なります」
王様が立ち上がった。…びっくりしたじゃないの…
「ありがとう!ユーリ!!これは早く報告を!」
誰に?…聞く前に王様は部屋を飛び出したし…。この部屋に残っているのは私と側近のレイダリアさんだけ。
「ユーリ様、本当にありがとうございます」
様って…
「あ、あの!様なんて…普通に優莉と読んでください!」
「ですが…分かりました。ユーリ殿と呼ばせて頂きます」
呼び捨てでも良かったんだけどな~。
「ユーリ殿、神子になるには大変ですが、貴方ならできますよ」
「…本当ですか?」
「はい」
勉強が苦手な私にできるのかな?…神子になるとは言ったけど、不安になってきた…。
「ユーリ殿、お歳は?」
「16歳ですけど」
そう言うとレイダリアさんは何か考えていたようだけどすぐに笑顔になった。
「実は、私の息子も16歳なのですよ。陛下にはまだ子はいませんが、次に王になる子の側近になる予定なのが私の息子なのです。今は学園に通っていますが、まだまだ勉強する予定なのです。それで提案なのですが、息子とユーリ殿、一緒に勉強させて見てはいかがでしょうか、陛下?」
「いい提案だな」
うおっ…いつのまに王様が…どこから湧き出たの?
「うむ、ルドが立派な側近になっている頃にはユーリも立派な神子になっておるだろう、俺も100を過ぎているのに子ができないとは…」
「レイフィア様との子が無事生まれてくるといいですね、時期国王が誕生しない限り…あの大臣たちはうるさいだけですよ」
…今、すごいこと聞いた、気がする。
「あ、あの…お2人はおいくつで?」
「俺は150歳だ」
「私は201歳です」
なんということでしょう…。なにこの世界、長生きすぎて怖い。
「…長生きですね」
「うむ、この世界は魔力があるほど長生きをする」
ファンタジー!…すごく叫びたい。
「私…魔力あるのでしょうか…」
「魔力がないと召喚されないので、ユーリ殿は魔力がありますよ…それも巨大な」
え?巨大?
「ほお…これは楽しみだな、ルドも楽しみだしな…」
ん?ルド?…レイダリアさんの息子の名前かな~?
「ルド…ルドレイクはレイダリアの息子の名前だ、俺が認めるほどの天才なのだ…」
「天才…ですか…」
わ、私、そんな人と一緒に勉強するの!?む、無理だって!絶対に!!
「大丈夫ですよユーリ殿、ルドの性格は悪くはありませんので」
そう言って笑うレイダリアさんだけど…少しは知っておかないと!
「あの…陛下」
「ん?なんだ?」
「勉強する前に、少しでも知っておきたいのですが…」
このお城…資料室とか無いかな~?
「うむ、そうだな…分かった、資料室を使うといい」
良かった~!!
「さて、ユーリもつかれただろう…もうすぐ夕食になるから一緒に食事をしようではないか、紹介したい者もいるしな」
誰だろう…そう思ってたらノックする音が聞こえた。
「失礼致します」
そう言って入ってきたのは…美少女!?美しすぎて眩しい!!
「彼女の名はメリア、ユーリの専属メイドだ」
…は?メイド?専属?
「今日からユーリ様の専属メイドになります、メリア・ラスカルフィーでございます」
メリアさんか~…美人だな~…お姉さまって感じだな~…あはは…
「メリア、ユーリを部屋に」
「かしこまりました。ユーリ様、お部屋にご案内いたします」
「あ、はい…お願いします」
そう言って歩き出すメリアさん…王様をみると手を降ってきたのでお辞儀をしておいた。また後でな~、という声を聞きながら私はメリアさんについていったのでした。
…はぁ、先が思いやられる…私ってすぐに飽きるタイプなのよね。