日陰に咲くハナ
お題を3つ、二候補挙げてもらったのですが、全部盛り込んでしまいました。結果、報われない話となりました。
雨粒が窓に当たる。
私は窓際にある彼の机にうつ伏せながらその音色に耳を澄ます。
どのぐらい経ったか分からないけど、少なくとも外が真っ暗になるぐらいはそうしていたようだ。
雨音はいつの間にか聴こえなくなり、教室には時計の針の音がメトロノームのように規則正しく響くだけになった。
パチっと鳴る。
腕の隙間から蛍光灯の光が侵入してくる。
そして、足音がこっちに向かってくるのがわかる。
顔を上げなくてもわかる。365日ずっと聞き続けてるのだから……
「春」
「……何? 夏」
「そこで何してんの?」
「別に……ただ雨を眺めてただけ」
嘘だ。眺めてなんかいない。
「ふーん……わざわざそこで?」
「……」
「別にいいけどさ。そろそろ下校時間だよ」
「……」
「先に帰るね」
そう言って夏は自分の机に向かい、何やらゴソゴソと物音をさせてから教室を出て行った。
また時計の針の音が教室に響く。
私も重たいカラダ/ココロに鞭を打って席を立つ。
下駄箱まで誰ともすれ違うこともなく歩く。
俯きながら外に出ると下弦の月が水たまりに浮かぶ。
何故だか無性に泣きたくなる。でも泣かないと決めたから、認めるって決めたから。
彼が選んだのは、あえかに咲く ハナ/ワタシ なんかじゃなく向日葵の様な元気な ハナ/イモウト なのだから。
だから ワタシ/アネ は笑顔じゃなくちゃいけないんだ。妹の花を照らす太陽が曇らないように。彼は優しいから私のこの思いを知ったら絶対に気にしてしまうし、罪悪感を覚えてしまう。
だから、私は笑顔でいるんだ。彼の机で泣いたのは最初で最後の身勝手な我儘。彼の胸で泣くことすら出来ない私の精一杯の我儘……