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第1話 僕と私の日常

 初めまして、里ケイと申します。

 突発的に書きなぐった初心者の駄文ですが、それでも良いと仰って頂けるソコの貴方!なんて優しい方なんでしょう!!


更新は遅いかもしれませんが……どうぞ次ページへお進み下さいませ。


「私、実家に帰らせていただきますっ」


 ホームルームも終わり、雑談に興ずるクラスメイト達で結構騒がしい筈の教室内で響き渡る声。

 相変わらずの美声で羨ましい。


 顔を上げると、非の打ち所のない完璧な美人が僕を見下ろしていた。


「じゃ、帰ろか」


 僕――天野貴善――は机に両手をつき帰宅宣言する美人に返事をする。

 すると美人、いや、幼なじみの入江貴美――僕はタカと呼んでいる――は不服そうに口を尖らせた。


「天ちゃんノリ悪い―」

「……だって学校終わったら家帰ってんのはいつもじゃん」

 ちなみにその家も下宿先とかではなく、お互いれっきとした実家である。


「それをリズム良く突っ込んで欲しいの!」


 腰まである黒髪を後ろへ流しながらボケツッコミの基本から朗々と話し始めたタカを尻目に、帰り支度を手早く済ませて席を立つ。

 タカは話を中断すると、すかさず僕の左腕に両腕を絡ませてきた。


「ンフフ―でもそんなつれない天ちゃんも好き」


 ぴったりと体を寄せて僕の顔に(というより頭)頬ずりしてくる。


 平均より低い僕と平均より高いタカとではかなりの身長差があり、本人は仲良く横に並んで歩いているつもりだろうが、実際はほとんど覆い被さっているような体勢だ。少し、重い。


「そんなにくっついたら歩きにくいよ、またいろいろと誤解されるし」

「え? 誤解って何? こんなにラヴアピールしてるのに天ちゃんと私が不仲だと疑ったり引き裂こうとする捻くれた思考の人がいるんだ」

「…………」


 同性なら問題ないが、異性が毎日密着しながら帰っていたら付き合ってないのに付き合ってるんじゃないか等の誤解は十分あるだろう。どうしてこういつも常人の予想の斜め上を錐もみ回転していく思考回路なのか。これで成績は学年トップなのだから世の中分からない。


 いや、天才とバカは紙一重だというから単に常人には理解しがたい思考なだけなのか。


 と、突然タカが歩みを止めて後ろを振り返る。 絡めた腕ごと動くもんだからちょっとよじれて痛い。只でさえ怪力なのだから、もうちょっと加減してほしい……。

 そんな僕にはお構い無くタカはぐるりと教室を見渡す。

 それに合わせて視線を後ろにやると、残っている生徒ほぼ全員が注目していた。


 何かと注目されるこの友人といることが多いから、他人の視線が集中する状況に別段驚きはしない。しかし、地味に生きたい僕としてはなるべく勘弁願いたい状況だ。


 いつの間にか静まり返っている教室に居心地の悪さを感じていると、タカが口を開いた。


「私とこの子が仲悪いと思ってる人、いる――!?」

「は?」

 思わず隣を見上げ、ついで注目している人達にもう一度視線を戻す。


 皆一様に片手を左右に振り、“それはない”のジェスチャーをしていた。

 なんて息ぴったりのクラスなんだ、そういうのは体育祭や文化祭で是非遺憾なく発揮してほしい。


「ほら―天ちゃん気にしすぎ―。私達の相思相愛っぷりはクラス公認なんだから引き裂く人もいないよ!」

「大体その認識が間違って……うん、黙ってるよ」


 反論しかけて、教室中の空気を読んで諦めた。

 因みに空気は『無駄だ黙ってろ』と書かれていた。

 タカの超解釈によって勝手にクラス公認のカップルにされた僕は、そのまま上機嫌の怪力美人に半ば引きずられるようにして教室を後にする。





 学校玄関にある下駄箱まできて、腕の締め付けが緩んだ。漸く離れるかと思いきや片手だけで器用に2人分の革靴を取って足元に置く。


「天ちゃん上履き脱いで」


「……いいから。自分でするから」

「脱・い・で」


 じっと見てくる目が怖い。


 諦めて脱ぐとこれまた器用に2足分を片手で持ち上げて下駄箱に片付ける。

 傍からみてると母親が小さい我が子にする行為だが、本人は普通に同年代として仲良くしている範囲だそうだ。その非常に大ざっぱな感覚だと、日本が急に戦争始めてもチョット癇癪起こしたんでしょ位にしか考えないんだろうな。


 ……大物だな、失礼な意味で。



 革靴に履き替えようと少し足を伸ばすと、隣で同じように伸ばした長くて形の良い足が否応なしに視界に入った。


「やっぱスカートはないんじゃない?」

「短パン履いてるからパンツは見えないよ」

「じゃなくて。別にスカートまで履くことないんじゃないって言いたいの」

「それじゃあ天ちゃんとお揃いで学校行けない!」


「そんなペアルックはいらん。 第一、キミは男でしょうが」


 そう。僕の幼なじみ、入江尚美いりえたかよし)は見た目こそ完璧和風美女だが、中身は女の子が好きな普通……ではないが、男の子である。


 わざわざ女子制服を購入してまで女装しているが、決してそういう趣味や性癖が有るわけではなく、あくまで僕とのペアルックに意義がある……という、どこまでも方向音痴な思考をいつものように熱く語り始める。


 しまった。タカのこれ、長いんだよね。


 こんな所で長話は他の生徒にも迷惑なので、引っ張って一緒に出口へ向かう。


 大体女の子なのに一人称の『僕』自身、あまり人のことは言えない。

 便利な道具を駆使するいつも顔色の悪い狸ロボに憧れて、何を思ったか一人称だけ真似し出した過去の自分を全力で止めに行きたい。



 外見と名前が女子そのものの尚美たかよし)と男らしい漢字なまえ)の僕っ娘、貴善きさ)


 ある意味では似た者同士にみえるのかもしれない。




 …………女装男と過去を悔いている僕が同じだなんて、僕は絶対違うと思ってるけど。

 さて、第1話。いかがでしたでしょうか。

 尚美のような、あまり萌えベクトルのない男の娘と最近みなくなった僕っ娘を敢えて主人公にしてみたくて。


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