【20】入手、虹色茸
「リツヤさーん!!」
「アーネリカ!!」
一仕事終わって駆け寄ってきたアーネリカを迷いなく抱き留める。双方軽くハイになった状態のまま、アーネリカが仕留めたマツタケを改めて見に行った。
ヒュージマタンゴ。やはり外見はまごうことなきマツタケである。ただ問題はそこではない。
「食べるのも大事だけど。まずは虹色茸がどこにあるか、だよね」
そう。大事なのは解毒薬の原材料である虹色茸である。
それが必要だからわざわざこんな迷いの森の奥深くまでヒュージマタンゴを倒しにきたのであって、決してマツタケを堪能するためではない。
「予想はしてたけど、倒して蒸発してドロップアイテムドーン!とはいかないか」
RPGゲームとかによくある、敵を倒した!〇〇をドロップした!みたいなシステムを一瞬期待してしまった。
いやまあ、道中あれだけアルラウネを薙ぎ倒しておいて消滅だの突然なアイテムポップなどはなにもなかったのだから、普通に考えて分かり切っていたことなのだけれど。
「と、なーるーとー」
「探すしかないですよ」
「だよねぇ……」
ならば裂くか、と思って茸の要領で裂こうとして、ぴたりと手が止まった。
裂けない。裂けるわけがない。それはそうだ。死体といえど相手はこの森のボスモンスター、ヒュージマタンゴである。
アーネリカがあんまりにもあっさり裂くものだから完全に失念していた。
慌ててペェちゃんの方に走って行けば、もっちゅりと顔に足裏を押し付けられた。嫌がらせのつもりかもしれないが、僕にとってはただのサービスである。
そして苦しくなる前に足裏が離されると、手元にハンティングナイフが転がり込んできた。どうやらこの展開までまるっとお見通しだったらしい……どう持ってきたかは不明である。
「ありがとう」
「ペェホッホッホ」
「そんな声出るんだ……」
軽く戯れてもらいつつ、アーネリカの元に舞い戻る。
ハンティングナイフを取り出した僕を見て、アーネリカはこてんと小首を傾げた。
「なぜわざわざナイフを?」
「普通人はヒュージマタンゴを純然たる力だけでさけないんだよ」
「ハッ!?」
「すごい盲点って顔してる〜」
軽口を叩きつつ、サクサクとヒュージマタンゴを解体していく。基本的にぎっちりと詰まった茸特有の繊維感。ギチギチ過ぎて、繊維の方向に従った縦ですらナイフでなければ解体が難しい。
それをひたすらに解体していくと、途中で不自然な空洞に差し当たった。
脚の付け根あたりにあるその空洞をすっぱり真っ二つに開くと、なかなか刺激的な光景が目の前に広がった。
空洞一面を覆うように、びっしりと茸が生えている。
七色に光るそれは、いっぺんに七色に光るのではなく、赤から橙、橙から黄色、黄色から緑……と七色の間でぐるぐると色を変えるように光っていた。
わかりやすく言おう。
大変ゲーミングである。
ゲーミング発光である。虹色茸、思ったより現代味が強い。
「これ……?」
「これですね!!」
「これだったかぁ」
これらしい。とりあえずワッサワッサと回収して瓶に保存しておく。胞子が必要とか後出しで言われると困るので、念の為密封容器にいれることにしている。
なんというか、これが重要なものだとわかっているからこそ収穫している……この気持ち、多分大昔平茸とか取ってた人が思っていたことだろう。絶妙に虚無である。
「どうやって食べますか?」
「ああマタンゴのほうね?」
非常時に明かりとして使えそうなレベルでエレクトリカルパレードしている瓶をないないしつつ、アーネリカの質問に答える。
解体している限り構成自体は松茸そのままだ。なれば。
「ご飯と炊きます」
「わあ」
「そして炭火で別のマツタケを焼きます」
「わぁ!」
「お醤油垂らしてそのご飯の上に!!」
「ここが天上界ですか」
「ラフに来たね天上界」
軽くそんな会話をしつつ、釜を準備して米をザラザラとその中に注ぎ込む。迷うことなき十合炊き。
多いかもしれないが相手はアーネリカである。侮ってはいけない。
そしてザクザクと切っておいたマツタケを中にぼちゃぼちゃと落としてそのまま炊飯。
そしてその横に容赦なく七輪鎮座。持ってきた炭をシュートイン。あとは根性で着火。チャッカマンなどという便利道具が異世界にあると思ってはいけない。
最初に死に物狂いで探してなかった、とも言う。
十分に熱された七輪の網の上にマツタケらしい形を保持したままのマツタケを置き、じっくりと焼き目をつけていく。
この時点で漂う暴力的な香り。さすがは香りマツタケ味シメジと名高いマツタケである。アーネリカの顔が締まりがなくなったどころか半分近くとろけている。
「正気保ってねー?」
「んぬ、なんと香りだけでここまで」
「気持ちはわかる」
まあ本番はここからである。




