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旅の拠点は亀の上!怪力少女と毒スキル持ち青年の魔物ごはん  作者: 時雨笠ミコト


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【19】捕獲せよマツタケ

マツタケだと思う

「マツタケ……?」

  はてな、と首を傾げるアーネリカの肩をがっしと掴み、真正面から目を見つめて必死に訴える。

「アーネリカさん」

「はい」

「可能な限り傷つけないで」

「横薙ぎは」

「不可です。やるなら縦で」


 不可、という単語を聞いた途端に笑顔でコチラを見つめてくれていたアーネリカの表情が曇った。

 彼女の得意技が横薙ぎなのはここまでで重々承知している。例外として振りかぶっての振り下ろしだ。基本的に遠心力を利用し、かつ狙いが多少荒くても許される横薙ぎを愛用する傾向がある。

 

「とても足が早そうなのですが横薙ぎは」

「不可です」

「んぬぬぬぬぬぬ」


 ものすごく苦い顔をされた。というかもう顏がくっしゃくしゃになるくらい思い切り顰めている。

 理由は単純だし、気持ちは痛いほどわかる。だって眼の前のマツタケ……いやヒュージマタンゴ……いやもうマツタケでいいや。マツタケ、明らかに足が早そうなのである。

 美味しそうなマツタケにグラビア紙の表紙を飾りそうなほど美しく優美な脚がくっついているマツタケ。

 つまるところ八頭身とか、モデル体型のひとのそれ、スラリとした鍛えられた長い脚がくっついているのである。腕はないのに。

 明らかに脚特化のステータスなのが見て取れる。というかなんなら、今屈伸だのアキレス腱だのして準備して見せているのである。自信しかないのが明らかだ。

 それを最適解である横薙ぎを封じて獲れというのはなかなかの無茶振りであろう。自覚はある。だが。


「譲れないものがあるんだ」

「……なぜそこまで気を遣うんです?今まではこう、スパーンスパーンでもちゃんとお料理に」


僕の態度から並々ならぬものを感じ取ったのか、アーネリカが理由を聞いてくる。

 ここで出てくる言葉が頭ごなしの否定でない時点で、僕は勝ちを確信していた。

 なのでアーネリカ特攻であろう爆弾を満を持して落とす。

 

「あれはとても美味しいものです」

「とても美味しい」


 爆弾を落とせば、案の定アーネリカは食いついた。

 うろうろと落ち着きなく動いていた目が動きを止めてこちらを射抜く。多分これは言い方を選ばなければ世間一般的に据わった目と言うのだろう。

 

「最大限活かすために、気を遣った捕獲法。他に質問は」

「ないです」


 どこまでも迷いのない即答であった。

 さっきまでのしどろもどろが嘘のようだ。

 

「いけますか」

「お任せあれ」


 そう言いながら、アーネリカはマツタケの方に向き直る。何故か僕にハルバードを手渡してから、だ。


「ちょ、アーネリカ、ハルバード……」

 

 興奮のあまり忘れたのかと思って声をかけるが、片手で制止される。どうやらあえてらしい。

そんな彼女の行動を見て、武器なしは楽勝と判断したのか何なのか、マツタケが挑発行動を取り始める。

 具合的には、変にしなりを作ってクネクネとしだした。セクシーを盛大に履き違えた感じのその動きは、上半身も人のそれであればまた違ったのかもしれない。


(人のそれであれば、ね)

 

 だが忘れてはいけない。マツタケである。美脚が直ににょっきりと生えたキノコである。

 ただひたすらにアンバランス。いっそ気持ち悪い。そして何より。


(……腹立つな)


気持ち悪いもシュールも飛び越してひたすらに腹が立つ。

 ある意味煽り性能としてはピカイチだ……囮として使えたりしないだろうか。感情のあるモンスターに対しては抜群の効果を発揮する未来が見えるのだが。

 

「大人しくしててください」


 そんなことを考えているうちに、アーネリカがマツタケの真後ろに立っていた。

 そう、正面ではなく背後。真正面から歩いていったはずなのに。

 煽り散らかしていたはずの相手が次の瞬間には真後ろにいたマツタケが、ビクゥッ!?と盛大に跳ね上がった。表情は一切ないというのに、割と感情豊かである。


(すごい困惑してらっしゃる)


 アーネリカがもともといたはずの場所と、今背後にいる彼女を何度も確認している。

 何故真後ろにいるかが理解できないという挙動だが、非常に単純だ。2歩で真後ろに回り込んだだけである。

 そう、だけ。種も仕掛けもない純然たるフィジカル。

 ……それが一番怖いとも言う。

 

「聞き分けのない子ですね」


 全力で逃げようとするマツタケの細い足首をきゅっと握り、アーネリカが困った、と言わんばかりに眉を下げる。

 マツタケからしたら必死の抵抗であろうが相手はアーネリカ。この僕のプライドを開幕数秒でフードプロセッサーにぶち込むが如く粉々にした少女である。

 速度全振りであろうその細い脚でアーネリカのフィジカルから逃れられるわけがない。

 

「えいや」


 びっ、という音が響いた。

 アーネリカの手は、キノコで言うところの石づきの部分にかけられている。

 そしてそのまま、そこから割広げるようにして縦に割いていた。


「オゥ……」


 補足してこう。アーネリカはとても素直な女の子である。素直すぎるきらいもある。

 そして更に細くしておこう。ヒュージマタンゴは固くこそないが、柔軟性に優れ、故に『防御に秀でた』モンスターである。特に斬撃などではない物理、ある程度のモンクなどはほぼ無効化できるほどの。

 それを素手で無造作に割く。異常事態とわかってもらえるだろうか。


(逆らわないでおこう)


 脚がある分、下手なスプラッタホラーより怖かった。

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