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旅の拠点は亀の上!怪力少女と毒スキル持ち青年の魔物ごはん  作者: 時雨笠ミコト


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【18】会敵ヒュージマタンゴ

外に顔を出す。アーネリカが完全に干からびきる前に何かを見つけなければならない。

 さっき十分に見て回ったとか、アーネリカに見つけらなくて僕に見つけられないことがあるのかとか、細かいことは気にしたら負けである。人海戦術ってあるし。


「……えぇ?」


 思わず口から声が漏れた。何も変わりない迷いの森が口を開けているのを覚悟で窓から顔を出したのに、眼の前に露骨な変化があったから。


「これって、ペグだよね」


 赤い縄を結いつけられたペグが地面に刺さっていた。

 それもおびただしい量だ。ちょうどペェちゃんが道の分岐路に立ってくれている状態で、八つ以上の分岐先、そのほぼ全てにペグが刺さって……分岐路であるここに戻ってきている。花の刺繍をしている途中のように、刺されすぎたペグと縄がこんもりと盛り上がってさえいる。


「グルグル回ってたってことか」


 そりゃあどの道に行ってもペグが先々で現れるはずだ。だってここに戻ってきていたのだから。


「それにしても分かりやすい」


 たくさんの分岐、そのひとつにだけものの見事にペグが刺さっていない。この先にいますよと言っているようなものだ。

 

「リツヤさーーん!!」


 さてどうしようか、と考えていたところでアーネリカがこちらにやってくる。そして眼の前の光景を見て眼光が少しだけ鋭くなった。

 

「これは一体」

「僕個人の予測としてはさっき食べた毒雀の効果かと思ってるんだけれど、どう?」

「毒雀……?ああ、モズモズモッズモズのことですか?」

「なんて?」


 予想外の単語が出現し、思わず切り替えしてしまう。

アーネリカは求められたとおりに先程の単語を繰り返した。

 

「モズモズモッズモズ」

「なぁにそれ」

「先程の食べた鳥さんの学名です。通称ドクハキチュンモドキ」

「本当に雀もどきだった。いやどのみち長いね名前」


 へぇー、と頷きつつ納得し……暫くしてからようやく一番最初に突っ込むべきところに思い当たる。

 

「……なんでわざわざ学名の方を?」

「口に出して言いたくなりません?モズモズモッズモズ」

「確かに言いたくなるね。モズモズモッズモズ」

「でしょう」


 たまにあると思う、口に出して言いたくなる言葉。

 個人的なイチオシはスリジャヤワルダナプラコッテである。それはそれとして、話の筋を修正する。

 

「で、合ってる?」

「恐らくは。モズモズモッズモズには幻惑系統に対しての耐性があるそうなので、その肉を食べて一時的に幻覚耐性を取得していてもおかしくありません」

「……森自体に幻覚作用があると」

「予測ですが、毒ではありませんね。『迷いの森に入った』という事実による自己暗示の類かと」

「なるほど……」


 毒に耐性はあるものの、自分の無意識下の思い込みにまで効果はない。

 毒やら苦痛耐性やらで惑わすものに関しては力になれると思っていた分、今回のこれはかなり心にきている。

 そんな僕の心中などどこ吹く風、やることが明文化されたアーネリカの行動は早かった。

 

「ペェちゃん、これ食べてください」

「ペェーーーー厶」


 ペェちゃんの口元にぐいぐいと何かを押し付けている。

 主人の奇行を警戒してか、大変迷惑そうな顔をしてペェちゃんは固く口を閉ざしていた。

 

「あのアーネリカさん、それどこに持ってたんですか」


 アーネリカが押し付けているのはジャーキー風にカラッカラになるまで乾燥加工した雀肉(頭)であった。

 作るだけ作って人様に出すのはどうかと思い、後々自分の腹に抹消するために戸棚の上に隠していたはずだ。

 アーネリカに出した覚えはない。本当に何故持っている。そしてどこに持っていたのだろう。

 

「無意識に握りしめておりました」

「何という食への執念」


 細かいことは諦める。多分半ミイラ化していたアーネリカの生存本能のようなものだろうし、明確な記憶は期待できない。

 こちらを助けを乞う目で見てくるペェちゃんに必死に無毒だと伝えれば、諦めたのか一飲みにし……その後大変嫌そうな顔で見つめてきた。

 お気に召さなかったらしい。そりゃそうだ、だから隠していたのだし。だが後で菓子折りを送っておくことにしよう。


「ゴー!です。お願いしますね」

「お願いしますペェちゃん」


 二人揃って頭を下げれば、嫌々ながら進んでくれた。ペェちゃんも行き先がわかったらしく迷いはない。

 しばらくのっしのっしと進んでいけば、開けた場所に出る。

 小さな茸が群生している、広場のようなその場所は、有り体に言えばゲームによくあるボスエリア。

 今から強敵が出ますよという雰囲気をひしひしと感じる。

 そしてその予感を肯定するように、開けた場所の少し奥に主であろうモンスターが居た。

 なんと言えばよかろう。

 とても大きい。とても大きいのだ。

 そしてキノコだ。キノコだけれど、自然発生した偶然とても大きいきのこだとは決して思わない。

 ありえないものなのだ。

 言われずともこれがヒュージマタンゴだと、本能的にわかるほどに。でもそれよりもなによりも。

 ヒュージマタンゴとか、ボスとかそれより先に。


「マツタケだぁ……!」

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