【15】一転窮地
日時設定を失敗しておりました。
更新が遅れて申し訳ないです……
見つめる先でアーネリカの快進撃が続く。
複数で囲まれつつある状況でも、アーネリカは一閃でそれを対処していて、危なげがなかった。
アーネリカが押される、ということは考えていないらしく、ペェちゃんも邪魔にならないように意識はしているものの悠々と道を進んでいる。
目印付きのペグを埋め込みつつ、敵はアーネリカが殲滅してどんどんと進む。ひどく順調に見えたそれは、アーネリカの声で唐突に終わりを迎えた。
「どういうことですか、これは……?」
驚愕、というよりは困惑が強く滲んでいる声に、思わずアーネリカの方を見る。
彼女の視線の先を追えば、ペクがあった。赤い縄が結いつけられたペグである。
それが、僕達の進行方向に向かって真っ直ぐに伸びている。
「ペェ……ペェァ??」
「あっ、落ち着いてペェちゃん。あなたのせいじゃありません。私も見落としました」
困惑のあまり足踏みを始めたペェちゃんをアーネリカが慌ててなだめる。
この森は独特の植物と基本立ち込めている濃霧のせいか、大変見通しが悪い。そのせいでいつの間にやら進行方向を誤っていたというのが共通見解であった。
「今度はあっちへ」
「ペェ」
アーネリカが指さした、まだペグが刺さっていない方向へペェちゃんが向き直る。そして先ほどと同じように進んでいったが……
「どうしてですか?」
「ペェアー!?」
しばらく進んだ先には、今度は二股に別れたペグがあった。つまり先程の場所にまた舞い戻ってきてしまった形である。
そこからは多分ちょっとヤケが入っていたのだと思う。ペグのない方向へ、ペグのない方向へとふたり(?)はただひたすら必死に進んでいった。
しかしまあ、ここまでくればもうお察しであろう。そんな必死な二人を待ち構えていたのは樹形図のごとく枝分かれしたペクである。
「だからッ!!どうして!!」
迷っている間にも襲いかかってくるモンスターを容赦なく両断しながら、アーネリカは地団駄を踏んだ。
戦い方は精細を欠きつつある。精神的な余裕はもうほとんど残っていないのだろう。
この迷走、決して短い時間ではない。進まなければならない都合上、もう何度か日の入りを見届けていた。
何日かをすでにまたいでおり、進展のないその間もアーネリカはずっと戦い通しである。相手は格下といえど、消耗はある。
そして彼女はその消耗を、主に食べることで回復するたちの人間であった。そしてそうなると、一番最初にぶち当たる危機というのは粗方察しがつくものだろう。
「大変なお知らせがあります」
「……なんでございましょう」
戦えない……というか前線に出たらただの足手まといなので、家に引きこもりきりの僕は家事を全面担当している。
そんな僕呼び戻され、机を挟んで向き合ったアーネリカは非常に重々しい声でそう返してきた。
『何事か』と聞いている割には、もう何を言われるかは理解しているらしい彼女は、苦々しいなどという言葉では済まされない顔をしている。死刑宣告を聞きに来た人の顔と形容したほうが適当だろう有り様だ。
「食料が、尽きました。アーネリカさん」
「イヤァーーーーッ!!」
とんでもなく悲痛な叫びが響き渡った。
苛立ちも、疲労も、何もかもを『食べる』ことで解消する彼女は基本的に無害である。
しかし帰り道すら不明、足踏み状態である上に兵糧が限られている現状で、彼女のその特性と食糧事情が最悪の噛み合い方をしてしまった。
「死んでしまいますが!?」
「比喩じゃなくその危機だから呼んだんだよ」
「半分を切ったのは3日前のはずでは!!」
「その3日前から夜に盗み食いしちゃう人が発生したみたいでね」
「……」
「僕も今食料庫開けて呆然とした次第なんだけど」
「ゴメンナサイ」
「はい」
食料残量が3分の1になったら全力で撤退する予定だった。しかしまだあるはずの残量が気づけば消し飛んでいたわけだ。
つまり現状をわかりやすくまとめれば、
・前に進めず
・後にも戻れず
・食べ物がない
という絶望的な状態である。
「私はもうおしまいでございますです」
「ショックのあまり口調すら迷子に」
「ご飯がないのにどうやって大きな武器を振るうというのですか」
「さっきまで振るってたのに!?」
「ごはんがないならもうおしまいなのでござる」
「絶望の仕方が独特すぎる」
今までの食事の際の反応を見ても明らかだったが、アーネリカは『食べること』を原動力にするタイプの少女であった。
ご飯がないと分かるやいなやその場にヘナヘナと崩れ落ちて膝を抱え前転を始めたアーネリカを見つめてから、僕は一つの決心をする。
「仕方ない。待ってて、なんとかする」
「なんじゃらけぇ」
「うん、待っててねー」
全くもって何を言っているのかわからなかったが、多分今のは肯定であろう。
腕まくりをしてから、包丁とボウルを持って外に出る。




