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旅の拠点は亀の上!怪力少女と毒スキル持ち青年の魔物ごはん  作者: 時雨笠ミコト


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【12】最初の標的

 演技再開を考え始めたタイミングで、アーネリカがようやく室内に入ってきた。

 彼女が僕に話しかけた途端に、ギルド内に安堵の空気が流れる。

 そして僕の胸ぐらを掴んでいた世紀末モヒカンズがいきなり柔和な表情になって手を離し、迷いなく頭を下げてきた。


「いやぁすみませんね、決まりなもので」

「驚かせて申し訳ない……いや驚いてましたかね?」

「あっ思ったよりだいぶ丁寧だし腰が低かった」


 口を開くなり先ほどとは打って変わってとんでもなく優しい声が飛び出す。二人とももうデフォルメしたらカビ◯ンと同じような表情になるであろうほわほわした顔つきになっていた。


「多分これ、ふるいにかけるというか、試験というか」

「そうなんですよぉ」

「この程度で怯んじゃう子がモンスターと会うとね、大変なことになっちゃいますからね」

「これを平気で突破できる精神性は培ってもらわないと後が可哀想ですからね」


 やっぱりそうか、と脳内で納得した。

 これは新人のふるい落としだ。それも善意による。

 最初の動き、まるでドアベルが鳴ってからの動きが全て決められているようだった。実際決まっているのだろう。

 ドアベルがなったら全員で精一杯ドスを効かせてメンチを切り、一番近いところにいた人が更に接触して圧をかける。

 世紀末メンチのお二人は周りを目だけで確認してからこちらに近寄る時間差があったし、残りの人も最初から見守る体制になっていた。

 多分ここで喧嘩を買うかスルーできるか実力を示すか……まあ何かしらアクションが取れればOKなのだろう。

 それ即ち、格上モンスターに会敵してもとりあえず動けることの証明である。


「今回みたいなのは初でしたけどねぇ」

「お疲れ様ですは初めてですよねぇ」

「なんだかすみません……」


『ドッキリ大成功!』という見覚えしかなさすぎる札を持っていた魔法使いさんがそそくさと引っ込むのが見えた。どうやら僕はお決まりの流れを叩き切ってしまったらしい。

 それにしても、自主的に冒険者全員がこの脅しボランティアに参加しているとは、なんとも新人に優しい職業である。


「では通過儀礼も終わりましたので、リツヤさーん!!こちらにー!!」

「はいはーい」


 一連のやり取りが終わるやいなや、アーネリカは奥の本棚に向けて走っていった。

 情報はそこに集められているらしい。可動式の本棚が大量に鎮座していた。

 本好きからすれば垂涎ものの光景だろう。

 とりあえずキノコ系の素材から漁ってみる。素材から逆引きして、行くべき場所、そして倒すべきモンスターを特定するのだ。

『虹色茸』。その茸を逆引きしてみたところ、案外あっさりと情報を入手できた。

 入手方法はモンスタードロップ。倒さなければいけないのは『ヒュージマタンゴ』というキノコの怪物であるらしい……某有名クエストが頭に浮かんだのは僕だけではないはずだ。


「これ著作権大丈夫なの」

「?マタンゴは毒を保有するキノコ系モンスターによく用いられる名称ですよ?」

「大丈夫なら良いんだけど……」

「はい、特に問題はないかと」


  不思議そうに首を傾げつつもそう答えるアーネリカに礼を伝えてから、改めてマタンゴの情報に目を戻す。

 そこには、ものすごく意訳すると「上級者以外死ぬ覚悟をして狩りに行け」という文言が形を変えて何回も書かれていた。

 

「にしても、随分入手難易度高いんだねこれ。強いの?ヒュージマタンゴって」

「いえ、マタンゴ自体はそんなに。いっぱい集まると大変ですけど」


 このおばけキノコ毒があるはずなのにそんなになのか、と思いながら眺めていれば、伸びてきた褐色の指が一箇所を指し示す。

 

「どちらかというとこちらですね」


 その指の先には、「生息地域・迷いの森」という文字があった。文字の下には、ゼンマイの如くネジ曲がった気が大量に生えた、おどろおどろしい森のイラストが添えてある。

 

「迷いの森……?」

「名前のとおりですね。迷います」


 そのまんますぎる。というか説明も情報も足りない。

 普通こうすれば突破できるとかついてくるものじゃないのかこういう場合は。

 

「対抗策とか、ないの?これがあれば突破できるみたいな」


 先駆者がいるのであれば、安定した突破方法が確立されていてもおかしくない。

 そう思ってアーネリカに聞いたのだが、困った顔をして黙り込む彼女の代わりに、後ろを歩き去っていく冒険者たちがそっと囁いていった。

 

「徳」

「神の導き」

「運命力」

「それ総括するとリアルラックって言いません?」


 思わず突っ込んでしまったが、教えてくれた彼らはもうはるか彼方に言ってしまっていた。

 なるほど方法はないらしい。現地に行って豪運で踏破するか、あるいは迷いに迷った末に努力で突破するか。

 どのみち行かないという選択肢はない。情報を見る限り、迷いの森に行く冒険者は滅多にいないらしいので、素材が流通していて買って済ませる……なんてのも不可能だろう。


「とりあえずアーネリカ」

「はい」

「食料を買い込む」

「了解です!!」



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