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旅の拠点は亀の上!怪力少女と毒スキル持ち青年の魔物ごはん  作者: 時雨笠ミコト


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10/25

【10】魔毒特定

「まずは情報収集だね」

「なので本屋にgo!ですね!」

「ん」


 そして先に思い出しておこう。挙動で分かるレベルでアーネリカはいいところのお嬢さんである。

 そんな彼女が買い物をすればどうなるか。


「あ、ここの棚まるっとお願いします」

「まるっと!?」

「かしこまりました」

「動揺しないんだ……」


 こうなる。

 一応本の被りがないかは一通り確認はしているものの、買い物の仕方が豪快すぎる。


「アーネリカ」

「はい?」

「多分今はこれだけでいいと思うよ」

「ではそれ以外はここに郵送で」

「かしこまりました」


 そのまま全部持って帰りそうな勢いだったので慌てて横槍を刺す。

 モンスター関連やら毒草関連、つまるところ冒険者が踏みそうな毒に関連した書籍だけをピックアップしておいた。

 納得してくれたのでそれだけ胸の前に抱えておく。

 ちなみにそうこうしてる間にお会計は終わっていた。やだこの子の資金力怖い。


「では最初にやるべきは……」

「毒の特定」

「はい!」

「で、アーネリカ。その魔毒っていうのは何由来?」

「由来」

「モンスターから受けたものとか、毒草から受けたものとか」


 それが分かるかわからないかでだいぶ難易度が変わる。一番恐ろしいのは植物由来か動物由来かもわからないパターン。

 それを懸念しての質問だったが、幸いなことにアーネリカからはあっさり回答が返ってきた。

 

「モンスターですね。戦闘の痕跡がありました」

「毒持ちのモンスターってやっぱり多い?」


 ファンタジーの鉄板、なんかそこかしこにいる毒生物。

 対象が多いということは、特定の困難さが上がるということである。できればそんなに多くないとありがたいのだが。

 

「異世界から来た方からすれば多いほうだそうです。ただ絞り込める要素はありますね」

「魔毒であること?」

「……ナゼソレヲ!?」


 ドヤ顔でなにか言おうとしていたアーネリカだったが、思わず推測を口にしてしまう。

 その瞬間に目が飛び出るほどに驚かれた。逆にここまで懇切丁寧に解説されておいて、この選択肢が出ないほうが珍しいと思うのだが。

 

「いや流石にわかるよ。ぱらっと読んだし、何より話の流れで」

「せっかくご教授できるとおもったのに……」


 ものすごくしょんもりされてしまった。

 なんなら髪の毛が若干しなびて見える。そこまで残念がられるとは思っていなかったので、慌ててフォローをいれる。

 

「ここは僕の唯一の長所?だからね。さすがにね。それ以外は任せきりだから」

「ごほん、改めまして毒は毒でも魔毒を持っているモンスターは少ないです。そしてとある情報から、ここからさらに絞り込めます」


 フォローしたら割とあっさり持ち直してくれた。胸を撫で下ろしつつ、彼女のちょっともったいぶった言動に楽しんで乗っかる。

 

「とある情報とは」

「お母様に効く真毒という点です」

「……あー」


 恐ろしいことに、それ以上なんの説明もなくその一言で納得してしまった。

『アーネリカのおかあさん』。まだ見たことすらないというのに、何故半ば問答無用のパワーワードと化しつつあるのだろう。

 

「意外かもしれませんがお母様は攻守ともに優れた方でしたので。そんなお母様を追い詰められるという時点で相当です」

「なにも意外じゃないけどね」


 むしろ納得しかないのだが。意外性は果たしてどこに見出せば良かったのだろうか。

 初手甲殻類モンスター粉砕、僕を片手で抑え込めるというインパクトしかない華奢美少女にクソデカハルバードを与えた母親が貧弱だったら逆に困る。世界の法則に反し過ぎだろう。

 

「そして可能性があるモンスター一覧がこちらです」

「わあ仕事が早い」

「提供・お父様です」

「わあ段取りが良い」


 なるほど気がつくとポンポン話が進む謎のテンポ感の良さはお父さん譲りか。

 一覧表と言っても二、三体程度しか名前が書かれていない……どんだけ頑丈なのだアーネリカのお母様。

 一覧を手に取って改めて文字を目で追った時、ある一点で視線が止まった。


「……ヒュドラね」


 ヒュドラ。僕の世界でもまず聞いたことのない人はいないであろうビックネーム。

 確か元は何かしらの神話の怪物だったはずだ。不死身で再生力に優れ……何より『解毒方法のない猛毒』が有名な怪物であった。

 寝転がった場所を通っただけで死に、吐き出した息を吸っただけで死に……まあなかなかな無法ポイズンの持ち主として語られていたはず。


(ま、違うかな)

 

 ヒュドラの毒は原則として『即死の毒』だ。それこそ生きながらえたのは不死やら何やらを持っている物語の英雄だけだったはず。

 そんな彼らが不死を返上して死を望むほどエグい毒のはずだ。まだ生きているというのならこの選択肢は外すことに


「曰く即死級のとんでもない毒を喰らってきたと」

「これだぁ〜……」


 特定できてしまった。

 魔毒持ちの生き物、いちおう他の2匹も手持ちの図鑑で調べてみたものの、激痛、後遺症などというまあ普通に御免被りたい内容ではあったが死ぬとしても数日かかるというものだった。

 つまり獲物を生け捕りにするための武器としての運用なわけだ。即死とは根っこから毒の使い方勝ちがう。

 つまり何が言いたいか。ヒュドラの毒で確定である。なんというビックネームから毒食らって生きてるんだ。


「まあ毒の特定はできたわけだね」

「次は解毒剤!!ですね?」

「その原料ね」


 ただ毒さえ特定できてしまえばここは容易い。

 だいたい毒だの何だの人間にとって害なるものに関して、人間は躍起になって調べるのだ。

 まあ当然の摂理だと思う。知識は武器だ。未知は恐怖だ。つまり情報は探せば基本どこかにある。それこそ今買った本なんかに。


「ありました」

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