表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

第四話:「国連臨時招集と非難決議、戦火の光」

国際連合本部・ニュージュネーブ、会議棟第Iホール

「……本件は明確なる一方的侵略行為であり、テンヤン人民共和国の主権を著しく侵害しています。よって、非難決議案A-542を支持するよう、各国に要請いたします」


壇上に立つテンヤン外相の顔は、怒りと疲労で硬直していた。

会場は静まり返っていたが、その沈黙はやがてざわめきに変わる。


直後、ヤマト連邦の外交代表が登壇する。

背筋を伸ばし、言葉を選ぶことなく、ゆっくりと語り始めた。


「我が国ヤマト連邦は、幾度となくテンヤンによる国境侵犯、漁業妨害、宇宙衛星の妨害を受け続けてきました。これは長年にわたる戦略的挑発への防衛的措置です。

よって今回の軍事行動は、自衛権の発動の一環であり、侵略ではない」


その一言に、各国代表の席が騒然となる。


だが、その中でただ一国――アメリナ連邦の代表が立ち上がった。


「アメリナは、ヤマト連邦の自衛権行使を理解し、また、彼らの**“安全保障上の選択肢”**を尊重します」


世界の空気が一変した。


国連臨時会議は、その後も議論が紛糾したが、

非難決議案は棄権多数で可決されず、結果として「黙認」の形となった。


ヤマト連邦首都・トキオ市 政府統合庁舎

同日、ヤマトでは臨時閣議が招集され、戦時国家統制令が発動された。

これにより、議会は機能を停止、内閣が全権を掌握する体制が整う。


だが、その中でひときわ静かに交わされた通信がある。


「コード:望月に入る」

「……確認。目標は?」

「フェーズ3、テンファン制圧。政府部局への通達は不要。軍部のみ承知せよ」


その通信を受けた、第7機動軍総司令官・風間少将は、冷静に命じた。


「……始めろ。東海岸、第二段階展開。重装部隊、前進」


テンヤン東海岸・制圧地域「第九戦区」

朝靄のなか、巨大な艦から異様なフォルムの新型戦闘車両が次々に降ろされる。


形式名:Type-88 陸上巡航殲撃車《嵐龍ランリュウ

全長13.4メートル、主砲には次世代電磁レールガン「雷牙らいが」を搭載。

通常の榴弾砲の射程を凌駕し、20km超の高精度射撃が可能。

さらに搭載ドローン・カバー装甲によって都市戦への即応性も持ち合わせていた。


これらが3個師団規模で連携しながら展開。

空中からは、無人偵察機と制空機が火点を潰し、残存部隊を無力化。


地元民の一部が避難できぬまま占領され、

テンヤン側の戦線は中央東海岸からほぼ80km内陸まで後退した。


ヤマト地上軍・第十八機動師団 指揮所

「敵の中央指令系統は麻痺。残存勢力は個別に後退中です」


「……都市中心部への進撃を開始せよ。次の目標は?」


指揮官は地図を指し、即答した。


「テンファン首都制圧作戦 “鷹の門” 作戦、開始可能です」


テンヤン首都・テンファン郊外 地下施設

「……もう来る。早いな。だが、我々は闘える」


国家安全部・情報局「夜眼」局長、グァン・ミンツォンは再び暗号通信を解く。


「“花は咲く時を選ばない”。計画、前倒しする」


爆心地の焦土の下で、

テンヤンの反撃は、静かに、しかし着実に準備されつつあった。


世界が揺れている。

一国の侵攻が、地球規模のバランスを狂わせ、

非難も、支持も、火の粉のように飛び交っている。


──それでも、戦車は進む。

──レールガンは雷鳴を放ち、戦火は都市の淵を焼いていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ