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プロローグ:神代作戦発動

西暦2146年10月12日、午前03時03分。

南セイカイ海の漆黒の空を、静かに裂くように6機の無人空挺輸送機が飛来した。

目的地は、テンヤン人民共和国の戦略海洋基地──白嶺島はくれいとう


空挺機からは無音の滑降装置が射出され、次々と人影が夜の闇へと吸い込まれていく。

彼らはヤマト連邦軍・特殊作戦部隊「第零戦団」。

正式な宣戦布告を伴わない、先制強襲作戦の尖兵である。


地上では、まだ誰も気づいていなかった。

この夜が、世界史の転換点となることに。


同時刻。

ヤマト連邦・首都セイランにある最高防衛庁地下第六会議室。

円卓の上に投影された立体マップに、赤い点滅が一つ──白嶺島通信棟の占拠完了を告げていた。


「作戦は予定通り進行中です。通信中枢、対空管制、外部リンク、すべて遮断完了」

参謀が冷静に報告を終えると、円卓の上座に座る男が口を開いた。


「時は満ちた。第壱段階、電磁制圧を開始せよ」


その男こそが、ヤマト連邦防衛軍総司令──稲守いなもり 剣一けんいち

かつては平和主義を掲げていたはずの人物が、今や最前線に立って戦争の火蓋を切る。


背後のスクリーンには、テンヤン本土に向けて照準を合わせた衛星群の情報が並ぶ。

「神代作戦」――それは、電子戦・心理戦・物理制圧を同時に仕掛け、テンヤンの防衛網を三十六分以内に機能不全へ追い込む前代未聞の全面戦略だった。


白嶺島・作戦第10分。


島の制御塔が制圧され、テンヤン海軍の艦隊が次々と電子目標を見失う。

レーダーは沈黙し、AI統合管制システム「鉄脳」が緊急隔離モードに突入。

まるで島全体が音もなく失明したようだった。


テンヤン本土・首都テンファン。


曼峰リー・マンフォン将軍は、通信室に呼び出されていた。

不穏な報告が次々と飛び込んでくる。


「白嶺島との交信が途絶!海軍の第七艦隊、目標補足不能!」

「人工衛星K-21系統、観測不能区域拡大中!」

「鉄脳中枢、一次防衛網が……遮断されています!」


李は眉一つ動かさず、地図を見つめた。

そして、低くつぶやく。


「まさか……ヤマトが、来るとはな……」


そして、戦争は始まった。


世界が望んでいなかった形で。

正義が互いに名乗りを上げながら。


雷鳴が鳴ったのは、空ではない。

それは、国家の意志が交錯したときに生まれる音だった。

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