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【AI軍事考証】王国玄冬記 ―勇者なき世界で、王殺しから始まる王国の動乱―  作者: Soh.Su-K
Ⅲ虚ろなる一角獣 聖徒の血盾

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Ⅲ-22 死力

「王都の方はどうなっておる?」


 ウェルロッドはルインに聞いた。

 籠城を始めてから約一週間が経とうとしている。

 魔王軍は幾度となく攻め寄せるが、回を追うごとにその勢いは弱まっていた。

歩兵の殆どが矮鬼(ゴブリン)などの雑兵で、食人鬼(オーガ)単眼鬼(サイクロプス)などの強力な種族は見なくなった。

 攻め寄せる頻度も下がっており、籠城にもかなり余裕が出てきている。


「ベルテルブルグが王都に向かっているとの情報は入ったが、それ以降は何も」


「ふむ……」


 ウェルロッドが顎を触る。


「王都でどうにか対応できるという事ではないか?」


「情報が降りてこないのは、本格的に猊下が動いているという事だろう。情報の漏洩を極力避けたいのだ」


「前線はどうだ?」


「順調に前進している。あと三日もすれば、ここへの補給線が確立できるやもしれん」


「遊撃隊や蛇のお陰だな」


「このような()鹿()()()()()で兵士を死なせるのは忍びないですからな」


 ウェルロッドはガハハと笑い、ルインの表情も少し緩んでいる。


「前線後退の折に取り残された兵士の回収も出来た。上々ではないかな?」


「予想よりも遥かに多くの兵士が生き残ってくれていた」


 籠城初日からそれらの兵士はフェムに流入していた。

 現時点でその数は二千にも登る。

 予想していたよりも遥かに多い。


「前線を押し上げる中で、此処より離れた場所でも兵士達が保護されていると聞く。一万は軽く超えるだろう」


「蛇が身を隠す場所などを教えたのだろう?」


「我々が手を貸したのはほんの一部。王国兵の胆力、恐れ入る」


「皆、王国のために戦っておる。そこに兵士も蛇も関係などない。王国軍を代表して礼を言う」


「俺は蛇ではないぞ。しかし、その言葉は猊下に伝えておく」


「うむ、頼む」


 ルインの背中をバシバシと叩いてウェルロッドは立ち去る。

 魔王軍の攻撃もあと一回あるかないかだろう。

 恐らく、主力は既に後退している。

 攻め手の構成を見てもそれは分かる。

 しかし、最後に強力な一撃を準備している可能性も捨てきれない。


「となれば、焦土作戦に出る可能性が高い」


 つまり、利用価値のある建物・施設や食料を焼き払い、その地の生活に不可欠なインフラ等を破壊し尽くして撤退する。

 これをやられると進軍速度が著しく遅くなる。

 魔王軍が何処まで下がるかにもよるが、しばらくは互いに進軍困難となるだろう。


「しかし、それでいい」


 南部戦線の危機は事実上、先送りになるのだ。

 それだけで、王都での政治的な動きに余力が割けるようになる。


「ビュロー卿!」


 司令部に入るとフリッツが立ち上がり敬礼する。


「畏まるな、我等の仲であろう?」


 ウェルロッドはニヤリと笑う。

 この一週間でフリッツは見違えるまでに成長した。

 既に将の顔をしている。


「いきなりだが、どう見る?フリッツ」


 ウェルロッドは砦の見取り図に目を落としながら言う。


「……、敵の攻勢はよくてあと数回あるか、といったところでしょうか」


「うむ、ワシはあと一回だと考えておる」


「装備も充分とは言えませんが、戦えるだけの備蓄はあります」


「保護した兵士達の様子はどうだ?」


「……、予備兵として動ける者は七百程。重症の者は既に後方へ送りました」


「戦える者は全員前に出せ」


 ウェルロッドの言葉にフリッツは動揺する。


「強烈な一撃が来る。備蓄を使い切って構わん、必ず防ぐぞ」


「了解しました」


 ウェルロッドは司令部を後にする。

 フリッツは考察し始めた。

 ()()()()()の根拠。

 それは、前回の戦闘から既に丸一日が経とうとしているからだろう。

 部隊編成に時間を掛けているのだろう。

 それだけ大規模な攻勢であると思われる。

 ()()()使()()()()()という事は、魔王軍は撤退の準備をしているか、または既に開始しているかだ。

 蛇辺りから情報が上がってきたのかもしれない。

 その戦闘を凌げば、しばらくは魔王軍も動けないという事だろう。

 ならば、フェムにある戦力全てを投入するしかない。


「保管庫の装備品を全て運び出せ!各城壁に均等に配分!動ける兵は全て城壁下に配置!最後の戦闘になる!使い尽くして構わん!」


「はっ!」



「フリッツ、何故ここにおる……?」


 ウェルロッドは城壁の上で南を見据えていた。


「司令部は解体しました。皆、現場に出払っております。物資に関しては全て配分済み、保管庫は空です。不足が出た場合は隣接する防衛部隊同士で融通するように言いつけています」


「はぁ……」


 溜息を吐くウェルロッド。


「魔王軍の最後の一撃であるなら、一兵でも多く現場にいるべきかと」


 その言葉に苦笑する。


「何とも合理的な判断だ。誰に似たのか……」


「私はビュロー卿を見て学びました故」


「全くだ!ワシも同じ判断を下しただろうな!」


 土煙が近付いてくる。


「聞けぇ!」


 ウェルロッドは振り返って声を上げた。


「奴等はボロボロだ!これが奴等の最後の足掻き!存分に叩き潰してやろうではないか!」


 鬨の声が上がる。

 ウェルロッドは眉庇バイザーを下ろし、再び南を見る。


「雷神フシャスラよ、我が武勇、ご覧あれ」


 手斧ハンドアクスを握る手に力がこもった。

【 次回更新予定 】 2月13日(金) 20:50

毎週 水・金 の週2回更新


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【 2/20 カイツールの戦い 開戦 】

王都防衛 2万 vs 叛徒軍 10万

「究極の局地戦」が始まる

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