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【AI軍事考証】王国玄冬記 ―勇者なき世界で、王殺しから始まる王国の動乱―  作者: Soh.Su-K
Ⅲ虚ろなる一角獣 聖徒の血盾

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Ⅲ-21 拝命

 デリンジャーは王都周辺を駆け回っていた。


「本当に二万もの兵が潜んでいるとはな……」


 ピダーセンやウェルロッドが少数ずつ王都近くに派遣した兵士達である。

 クーガー・ベルテルブルグの手勢が王都へ向けて動き出していた。すぐにでも兵を入城させ、軍の編成を行う必要がある。現時点で約半数の受け入れが完了している。

 王都にはベルテルブルグ家の手の者もいると思われるため、堂々と兵士を受け入れる訳にもいかない。


「しかし、まさかこんな事があるとは……」


 デリンジャーはアカオ経由でカルカノから別件で命令が出ていた。そのために、今はピダーセンの配下の元へと急いでいる。

 到着したのは大きい農家の一軒家。入口をノックする。


「誰かおらぬか?」


 そこかしこから視線を感じる。

 数にして七人から見られているようだ。


「蛇だ、入れてくれ」


 素直にそう言うと、入口が開かれた。


「……」


 出てきたのは恰幅のいい髭面の男だった。品定めをするようにデリンジャーの姿を見ると、顎で中に入るように示す。

 中は普通の家だ。

 そこに目付きの悪い男数人が立っている。扉が閉められるのを確認してデリンジャーは口を開いた。


「猊下からだ」


 デリンジャーが丸められた羊皮紙を取り出す。

 そこには大僧正の印が押された封蝋。


「確かに、猊下の印だ」


 髭面の男がそれを受け取り、封蝋を割って中を確認する。


「ふむ、ベルテルブルグが動いたか。王都が戦火に焼かれるのは避けたい」


「我等も思いは同じ。故に力をお借りしたい」


「そのために来たのだ、喜んで協力する」


 デリンジャーは胸を撫で下ろした。


「三日に分けて順次入城して頂きたい」


「奴等の目もあるからか、了解した」


「それと……」


 デリンジャーがもう一つの羊皮紙を取り出した。


「エンフィールドはいるか?」


「エンフィールド?」


 男達は困惑しながらエンフィールドを呼んだ。

 奥から出てきたのは青年だった。


「ピダーセン殿の小姓(ペイジ)を仰せつかっております、エンフィールドです。私に何か御用ですか?」


 ぎこちないながらも敬礼をするその青年を見て、デリンジャーは小さく頷いた。


「猊下から貴殿にだ。文字は読めるな?」


「はい、一通りは習いました故」


「では」


 デリンジャーは羊皮紙を手渡した後、男達へ一度敬礼し家を出た。


「猊下から私に……」


「部屋に戻って中を確認しろ」


 髭面の男がエンフィールドに言う。


「オリバー卿、何故なのでしょうか……?名指しで、しかも猊下から……」


「良いから部屋に戻れ。皆は警戒を緩めるな。入城が決まったからと言って気を抜くなよ」


「はっ!」


 髭面の男は農夫の格好をしているが、オリバー城主を務めるボーチャード・ルドウィックである。

 ルドウィック家はフリッツの母・エルマの里にあたり、ボーチャードこそエルマの実の弟だ。つまり、ボーチャードはフリッツから見ると伯父となる。ボーチャードに連れられ、エンフィールドは部屋に戻った。


「開けてみろ」


「はい……」


 封蝋を割って羊皮紙を広げる。


「……、明日にでも入城せよと……」


「ニニオ陛下との謁見もであろう?」


「何故分かるのですか?」


「今は気にするな。お主の命は私が守る」


「……」


 ボーチャードには既にカルカノが何をしたいのか見当がついていた。ピダーセンが南部戦線へ向かう直前に全てを聞かされていたのだ。

 バーテルバーグ家の筆頭家臣であるルドウィック家をピダーセンは信用している。


「とにかく、今日はもう寝ろ。明日から色々と忙しくなるぞ」


「承知しました」


 ボーチャードが部屋を後にする。


「オリバー卿……」


 部下の一人がボーチャードの元へ来る。


「警戒を厳に。()()()()が漏れている可能性もゼロではない」


「了解しました」


 ボーチャードはむっつりと黙り込み、それに合わせるように静かに夜は更けていった。



「ご苦労さま」


 王都へ戻ったデリンジャーをアナが迎えた。


「一応、これで全て完了だ」


「それは良かった。引き続き、ベルテルブルグの目を潰すように、お願いね」


「分かっている」


 王都内にはアナとデリンジャーを含めて五人の蛇が暗躍している。主な目的は、ベルテルブルグ家の間者(スパイ)の炙り出し兼排除。

 既に二〇人近くを始末しているが、未だにベルテルブルグ家への情報の流れを断てていない。


「……、諸侯の中に内通者がいる可能性もあるんじゃないか?」


 簡単な話だ、デリンジャー達が処理しているのは一般人に扮した間者のみ。

 いくら処理しても、諸侯の中に敵の目が入っているならば意味はない。


「だからって、貴族を消す訳にはいかないでしょ?王都にいる貴族の殆どは元老院議員よ?」


「それはそうだが……」


 デリンジャーは溜息を吐く。


「何?蛇に幻滅した?」


「そういう訳では無い」


「蛇は所詮、諜報部隊。諸侯をどうのこうのするのは政治じゃないと無理」


「分は弁えているつもりだ」


「ならいいけど」


 アナはそこまで言うと、わざとらしくポンと手を叩いた。


「そう言えば、貴方にも名前をあげないとね!」


「名前?」


「貴方も蛇の一員だもの、本名を使う訳にもいかないじゃない」


「はぁ……」


 はっきり言って、本名と言われてもこの名前を使っていた期間など数えるくらいしか記憶にない。

 デリンジャーと呼ばれてもしっくり来ていないのが実際のところである。


「……、マンバはどう?」


 満面の笑みを向けてくるアナ。


「好きに呼べばいい」


「あのね……」


 あからさまにげんなりとした表情になるアナ。

 よくもまぁこんなにもコロコロと表情を変えるものだ。


「今から貴方はマンバね。街の方は頼んだ、私は猊下の元に戻るわ」


「わざわざ俺の報告を聞きにだけ来たのか?」


 よく考えれば、アナはカルカノの側仕えで忙しい筈だ。

 潜伏している兵士達の入城手配の報告など、他の蛇が聞いても問題ない事である。


「もう……、貴方、乙女心が分からないのね」


 嫌味な顔をしたアナはそのまま消えていった。


「何なんだ……」


 アナの行動原理がよく理解出来ないマンバは再び溜息を吐いた。

【 次回更新予定 】 2月11日(水) 20:50

毎週 水・金 の週2回更新


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【 2/20 カイツールの戦い 開戦 】

王都防衛 2万 vs 叛徒軍 10万

「究極の局地戦」が始まる

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ハイファンタジー 戦記 シリアス 王族 貴族 内政 陰謀 魔王 男主人公 群像劇 幼馴染 成り上がり 策謀 裏切り 教会 騎士団
― 新着の感想 ―
 最新話まで拝読させていただきました。 「蛇だけで勝てる戦はありません」 「承知だ。だが、ワシらだけでも勝てんさ」  いいですね。この、職分を弁えていて、かつ相手の仕事に敬意を払っているところ、と…
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