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【AI軍事考証】王国玄冬記 ―勇者なき世界で、王殺しから始まる王国の動乱―  作者: Soh.Su-K
Ⅲ虚ろなる一角獣 聖徒の血盾

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Ⅲ-19 遊撃

「とにかく矢を射掛けろ!城壁を登らせるな!」


 城壁の上から無数の矢が飛ぶ。

 しかし、それに怯むことなく前進を続ける魔王軍、文字通り味方の屍を踏み越えながら。


「梯子を持ってる奴から狙え!」


 城壁に立て掛ける為の長い梯子。

 魔王軍はどうにかして城壁に近付こうとするが、聖徒騎士団の矢と即席の防柵によって思うようにいかないようだ。


「奴等が梯子しか持ち合わせていないのが救いですね」


 南城壁の指揮を任された大佐に副官の少佐が言う。


「今はまだな。そのうち破城鎚(ラム)やらを持ってくるぞ」


「第一陣はとりあえずで集めた歩兵のようですね」


「歩兵だけならどうにでもなる。魔法使い(ウィザード)や兵器が出てくると厄介だ」


 魔法を扱える兵士は温存している。

 胸壁に隠れれば矢も防げるので、矢避け(ディフレクト・アロー)も使っていない。

 矮鬼(ゴブリン)狗鬼(コボルド)が中心の敵第一陣に魔法兵の魔力を使う必要はないと判断した。


「魔法を扱えそうな種族から狙え!」


 それでも、黒醜人(オーク)小鬼(インプ)などの魔法を扱える種族も紛れている。弓兵にはそれらを優先して狙わせ、少しでも危険度を下げる必要がある。

 いかに消耗を抑えるか、それが最も重要なのだ。


「しかし、矢も無限ではありません」


「今からそんな心配をしてどうする!」


 敵はまだ第一陣。

 どれだけ続くか分からない籠城戦の始まりに過ぎない。


「伝令!」


 黒い旗を背中に差した兵士が駆け寄ってきた。


「申し上げます!司令部より伝言!惜しみなく矢を使え、それくらいはどうにでもなる!以上!」


 伝令のその言葉に思わず大佐は吹き出した。


「大佐、これは……」


「ルイン全団長め、蛇に補給させる気だな!」


 どうやって補給するのかは分からないが、蛇ならばやりかねない。

 大佐は声を張り上げた。


「各員!これはまだまだ序盤だ!ここで退場するなど許さんからな!」



「この司令部、必要か?」


 ウェルロッドが砦の見取り図を見ながら言う。


「と、言いますと?」


「四方にそれぞれ指揮官を置き、独自に判断させるのが一番良いのではないか?いちいちここまで情報を上げて指示を乞うのでは時間の浪費に思えてな」


「確かに、そうですね」


 ルインが同意する。


「では、南側の城壁は儂が担当しよう。他はルインが決めてくれ」


「西は私が、東は聖徒騎士団第三師団長のクヌート、北は聖徒騎士団第二師団副長のライムント。フリッツはここに残れ」


「私は何を……?」


「各城壁指揮官から上がってくる情報の精査と共有する情報の取捨選択、予備兵や装備の配分を頼む。籠城戦では最も頭を使うところだ」


「……、了解しました」


「城外の遊撃部隊との連携も必要となるだろう。補佐は付ける、期待しているぞ」


 そう言ってルインはフリッツの頭を撫でた。

 子供扱いしているように見えるが、ルインにそういうつもりはない。

 むしろ、フリッツの実力を信頼しているのだ。

 フリッツ自身、それが分かっている。


「では、征くか。終わったら酒と肉だ!死ぬことは許さんからな」


 ウェルロッドの言葉に全員が敬礼する。

 各自が城壁に散る。

 城壁に上がり、南に目を向けるウェルロッド。


「これは圧巻だな……」


 フェムの街を埋め尽くす黒い影。

 それらが城壁に向かって波打っている。


「第二、第三陣も一緒くたに来たな」


 第一陣と違い、弓兵や工兵らしき姿も見受けられる。

 種族も矮鬼(ゴブリン)黒醜人(オーク)だけでなく、屍喰鬼(グール)巨人(トロル)土人形(ゴーレム)などもいる。


「ビュロー卿!危険です!お下がりください!」


「何を言うか!」


 飛来する矢を丸盾(ラウンドシールド)で塞ぎながら叫ぶ。


「魔法兵も出せ!街を更地にしても構わん!」


 そう言いながら近くにあった槍を投擲する。

 巨石を投げようとしていた土人形の(コア)を貫通し、土人形は岩くれに戻る。


「魔法兵は魔法による攻撃の対処に集中しろ!弓兵はそれらの援護!」


 押され始めていた。単眼鬼(サイクロプス)や土人形による石の投擲に対しては矢避けは役に立たない。

 ならば矢避けを切り、攻撃に回した方が賢いとも言える。飛んでくる石を魔法兵の攻撃魔法で迎撃させる。

 飛来する勢いさえ殺してしまえば、城壁に到達する前に落下し、魔王軍の雑兵がその下敷きになってくれる。


「ビュロー卿!」


 ウェルロッドの元に伝令が走り寄ってきた。


「何事だ!」


「敵が投石機(カタパルト)を持ち出しているとのこと!第一城壁の外に集結中!」


「厄介なものを持っておるのぉ!」


 第一城壁を通過しない限り、ウェルロッド達は目視で確認できない。

 しかし、通過されれば第二城壁は投石機の射程内だ。

 出来れば第一城壁外でどうにかしたいところ。


「遊撃隊を信用するしかない……」


 同じ頃、林冲達も投石機の存在に気付いていた。


「蛇には助けられてばかりだな!」


 林冲はガハハと笑っていた。

 既に第一城壁外に集結しだした投石機に向けて走っている。

 策があるのだ。


「見えてきたぞ!」


 林冲の真後ろを走っていたテオバルトの部下が、空に向けて矢を放った。

 甲高い音を響かせる。

 鏑矢だ。

 その瞬間、投石機の回りに並べられたいくつかの樽が割れた。

 中からは黒い液体が漏れ出す。


「弓騎兵、構え!」


 林冲は魔王軍の集団に切り込みながら声を上げる。

 矮鬼や黒醜人を蹴散らし、大刀(グレイブ)で叩き斬っていく。

 突撃陣形の中程にかためた弓騎兵達の射程に投石機が入る。


「放て!」


 火矢が投石機と漏れ出した黒い液体に降り注ぐ。

 一気に炎が立ち上った。

 投石機の周りの樽は全て油だったのだ。通常ならばこんな場所に並べるものではない。

 しかし、魔王軍に潜入した蛇の工作でここに保管されていたのだ。そして、その樽のいくつかを破壊したのも蛇である。


「ガハハ!愉快愉快!」


 林冲はすぐに離脱の進路を取る。投石機を整備していた魔王軍は完全に混乱。

 あっという間に全ての投石機が炎に包まれていく。

 その黒煙はウェルロッド達のいる第二城壁からよく見えていた。

【 次回更新予定 】 2月4日(水) 20:50

毎週 水・金 の週2回更新


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【 2/20 カイツールの戦い 開戦 】

王都防衛 2万 vs 叛徒軍 10万

「究極の局地戦」が始まる

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