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かみがかり!  作者: 猫月日暮
第一章 非日常は突然に
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第二話 お嫁にしてください!

 二人で食卓を囲み、食事を嗜む。

 メニューは和食一辺倒であり、鯖の塩焼き、味噌汁、漬物、白米とどちらかというと朝に食べたくなるものだが、味噌汁の温かさが身に染みて疲れを癒してくれたため、「たまにはこういうのもありだな」と思うのだった。


「・・・それで、神様が一体僕に何の用なんですか」


「あはは、まだ疑ってますね?」


「半分は・・・」


「ベタな話ですよ」


 イナリはそう言うと、昔話を始めた。




 ■




 むかしむかし、現代(いま)よりももっとむかしのことでした。

 ある少年が、山の奥の寂れた祠を尋ねました。


「そこには悪い狐が大昔に封印されたんだよ」


 母親から言い聞かされていた彼でしたが、迷子になりうっかりその祠を尋ね、

 なんとあっけなく封印を解いてしまったのです。

 煙がもくもくと上がり、中から出てきた狐は言いました。


「助けてくれてありがとう!君の名前は?」


 少年と狐はすぐに仲良くなり、秘密の遊びを時々するようになりました。

 しかし、あっという間に少年は黄泉に逝ってしまいました。




 ■




「それで、その少年が僕だったと」


「探すの大変だったんですよ?今朝の件が無ければ来世になっても探していたかもしれませんし」


「今朝の件・・・」


 手の主の言葉が脳内に過る。


「助けたのはもちろんこの僕ですよ!神通力ってやつです!」


「なるほど・・・でも、どこにも君はいなかったよ?」


「神様なんて人には基本見えませんからね!見せようと思えば姿を現すことができるって感じで!」


 味噌汁を飲み、息を吐く。


「で、そんな邪悪な神様は結局僕に何をしてほしいのさ」


 冗談交じりに言うと、イナリは少し頬を膨らませる。


「邪悪ってなんですかー!あの村では、狐が悪い物とされてただけですし!

 僕なんもしてないですもん!」


「冗談だよ、ごめんね」


 イナリはまだ少し怒っているのか、顔が少し赤い。


「本当は黄泉まで追いかけたかったんですけど、信仰が足りなくて力が出せずに追いかけられなくて・・・

 その分、現代っていいですよね!八百万(やおよろず)の神をみんなちょっとは信じてて。

 おかげで力を取り戻せて、こうやって全国各地を巡ることができるんですよ!」


「そりゃあいいことだね、現代って神様にとっても便利そうでなにより」


「他人事みたいですね・・・まあ他人ですけど

 それで、あなたを探していた理由は単純ですよ!」


「何かな?」


 味噌汁をまた口に含む。


「ズバリ、恩返しです!そのために、僕はあなたのお嫁になりにきました!!」


「ゲホッゲホッ!?」


 ココロは思わずむせかえる。


(え、なに、お嫁?恩返しはなんとなく察してたけどそこまで行くの?)


「僕をお嫁さんにしてください!」


「そ、そんなこと言われたっていきなり無理だよ!」


「こ、これでもですか・・・?」


 イナリはココロに抱き着き、上目遣いを披露する。


(う、純粋な瞳・・・)


 ほのかに香るいい匂いと、柔らかい肌。

 ぴょこぴょこ動く獣の耳に、好奇心がくすぐられる。

 しかし、ココロはそう簡単に堕とせる人間ではない。

 いや、誰だってそうだ。


「わ、悪いけど心の準備が・・・」


「・・・わかりました」


 あっさりと引き下がるイナリ。

 心臓の鼓動がゆっくりになるのを感じる。


「その代わり!認めてもらうまで、ここに住まわせてくださいね!

 もちろん、家事も僕がします!未来のお嫁さんですからね!」


 ココロは一瞬迷ったが


「・・・まぁ、それくらいなら」


 と受け入れるのであった。


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― 新着の感想 ―
イナリくんかわいいねぇ♡♡ イナリくんがどう堕としていくのか楽しみですね(*^▽^*) 続き待ってます!!ぜんらで!!
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