三話 僕の日常ではない日
チャイムが、なる。
一時間目が終わった。
「おーい。来てくれ。少し話がある」
教室で、先生に手招きされる。
いつも通り教科書をしまっていた中。
それを打ち切り、僕は教壇へ向かう。
「どうかしたんですか?先生」
「放課後、空いてるか。事故で休んでるあいつが、お前を呼んでるんだ」
美少女に腕を食べられた、ヤンキー。
あいつは学校を休んでいた。
果たして、どういう状況なのか。
「病院までは、俺が送る。お前が良ければ、でいいぞ」
「….分かりました。呼ばれてるなら、行きます」
◾️◾️◾️◾️◾️
放課後。
僕は学校のチャイムが全く聞こえない、病院に来た。
「付き合わせて悪いな。仲が良くない間柄だってのに」
病室の引き戸の前で、先生はそう言う。
僕の背負う鞄には、美少女もいた。
「あいつは錯乱してる。路地裏の事故で、手を失ってな。液体に手を食われたと暴れるんだ」
「……はい」
「そして、こう言うんだ。あいつも知ってるはずだ。連れて来てくれ、と。すまん。納得させてやって欲しい」
先生は、こうして引き戸を開ける。
僕は病室に一歩、踏み入れた。
直後、先生によって引き戸は閉められる。
「お前も、、生きてたか、、」
病院の個室のベット。
そこにヤンキーは寝転んでいた。
片肩には、包帯を巻いている。
「用?なにか、、」
チラチラと、僕はヤンキーを見た。
その腕は、無い。
「見たよな、?お前も、、あの、液状化、の、物体、、見たよな、、?俺、、喰われてたよな、?」
縋るように目付きで、ヤンキーは言う。
ざまあみろと思えるほど、僕はこいつが嫌いじゃなかった。
「、、み、、み、、」
けれど、見たとも言いづらい。
僕は美少女といて。
それがバレて、何かされるのは。
「、、みた、、」
「幼体、四肢の欠損。君達を捕食した何者が、原因か」
鞄から、液体が出る。
それは形を成していく。
液体は、美少女となった。
すぐに美少女は、液状化した腕を伸ばす。
「あ、あ、、あれ、、これ、、あ、食べ、食べられる、、」
腕は、ヤンキーの全身を包み込む。
ヤンキーは顔を蒼白にさせ、ジタバタと、液体の中で暴れた。
「え、え、た、食べるの、?こいつ、、」
「いいや。それほど、切羽詰まっていない。故に今君達を食べるつもりはない」
ジタバタと、ヤンキーは足掻く。
それらも、全く意味をなしていなかった。
「落ち着いてくれ。君。危害は加えない。ならば、多少強引に、と」
ヤンキーの四肢に、透明な物体が、巻き付く。
これで、全身が固定された。
もうヤンキーには、泣きそうな目をする事しか、出来ない。
「え、あ、あいつにな、なにするの、、死ぬ、、」
「、、、大丈夫。心配しなくていい」
美少女の液状化した手に、頭を撫でられる。
この間に、液体の中でヤンキーの腕が現れた。
腕は、肩にくっついた。
そして、ヤンキーは解放される。
「え、はぁ、はぁ、はぁ、あ。うで、ある、、はぁ、え、はぁ、」
「どうした!!?大丈夫か!!」
個室の外から、先生が乱入してくる。
美少女は気づけば、鞄の中に戻っていた。
「おい、お前。腕が、、ナースを呼ぶぞ!ちょっと待ってろよ!!」
辺りは、バタバタとし出す。
僕は立ち尽くした。
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車に乗る。
これで、道路を走った。
先生が運転手だ。
「ま、良かったな。原理はよく分からないが。完全に治ったそうだ。あいつの腕は」
その先生は、機嫌が良かった。
聞く所によれば、あいつの腕は全て元通りになったそうだ。
「これで、あいつのトラウマも無くなればいいが」
「、、そうですね、、」
夜も近い夕暮れ時。
本当の事を黙っているのは、気分が悪かった。
「さあ。着いたぞ。お前の家だ」
僕のアパートの前に、車は着く。
鞄を持って、僕は降りる。
「じゃあな。また学校で。体調崩すなよー」
先生は開けていた窓を閉じる。
直後、車が発進した。
「…..」
僕は扉に、鍵を差し込む。
ガチャガチャといじる。
家の扉が開いた。
「今日は、なに食べたい?作るよ」
すぐに、カバンから美少女が出て来た。
それを見て、僕は少しだけ、口角を上げてしまった。
「君に感謝しよう。未だ食糧は貴重だ」
笑顔の美少女。
液状化したその手で、僕は頬を撫でられた。
どれも未知で。
僕はやはりワクワク、してしまっていた。