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一話 未知との遭遇






 僕はその日、未知と出会った。

 知らない物、知らない事。

 様々なものを理解した。



 そして、僕は、傷付いた。




◾️◾️◾️◾️◾️





 はっとするほど、暑い日の事。

 休みなのに、僕は憂鬱な気持ちで学校の方面へ向かう。

 

 最近、クラスのヤンキー共のイジメが過激化しだしていた。

 揶揄うから馬鹿にするへ。

 少し借りるから、隠すへ。

 こうして、退屈な日々が、嫌な日々へ。


 今では、休みの日にまで僕を呼び出すほどになっていた。

 イジリとイジメの区別もつかないのかと、僕は悪態をつきたい。

 


 「助け、だれか、だれか、」


 路地裏から、小さく、声が漏れる。

 僕の耳に、入った。

 

 少し聞き覚えのある、声。

 僕を呼び出したヤンキーの、一人。

 その声、だった。


 気になって、僕は覗いてみる。


 「お、お前、たすけ、たすけて、、たすけて、、」


 ヤンキーが、半透明の液体に飲まれていた。


 僕に気付いたヤンキーは、手を伸ばす。

 液体は血の赤で染まっていた。

 

 僕の心が恐怖と混乱で、満たされる。


 「きゅ、救急車!!救急車!!警察!救急車!!」


 『縺?∴莠コ髢薙∪縺壹?√⊆縺」』


 突如、ヤンキーは吐き出される。

 その腕は無かった。

 断面からは、血も大量に流れる。


 僕は、腰を抜かした。

 これほどの血なんて、初めて見る。


 「俺の、俺の、腕が、、、」


 ヤンキーは腕を押さえ、逃げ始めた。

 路地裏から出て行く。


 液体は、何もしない。

 だが突如、形を変え始める。


 「あ、あ、あ、テスト。これはテストです。これで合っている、かな?この姿は君達にとって、警戒心を抱きづらいよね?」


 液体は、美少女となった。

 服も着ている。

 人間そのものの姿だ。

 

 「君達の言葉で、伝えよう。君は逃げないように。抵抗しなければ、痛くもないから。腹を満たさせて貰いたいんだ」


 じわじわと、じわじわと、美少女は迫り来る。

 手だけは、まだ液状化していた。

 路地裏の外の、僕を食べようと、する。


 「ま、待って!!!あげる!!食事あげる!!食べないで!!僕を食べないで!!」


 「食事。食糧の事、かな?」


 美少女は、止まる。

 反応が、あった。

 代わりに差し出すしかない。


 「僕があげる!食事!あげるから!美味しいの!食べないで!あげるから、」


 「ならば、貰おうかな。少し腹が減ったんだ。あれでは満たなかった」


 




◾️◾️◾️◾️◾️




 

 美少女と僕は、行きつけの喫茶店に入る。

 客の人も少ないから、勝手に席へ、座った。


 「こんにちは。この時間帯に来るなんて、珍しいね」


 優しい笑顔の店員さんが、来る。

 僕達の席の前に、立った。

 

 「今日は彼女さんとなのかな?これは失礼しました」


 「そ、それより、い、いつもので、、オムライスで、」


 「あれ?大丈夫?すこし変だよ?」


 「へ、平気、平気です、、急いで、、」


 僕は冷や汗を垂らす。

 店員さんは怪訝そうな顔で、去っていく。



 すぐに、頼んだオムライスは来た。

 店員さんはまだ怪訝そうに、僕達を見る。


 「これが、君達の食糧か。食べるのは上の黄色と赤色の箇所、かな?」


 美少女はオムライスを覗き込む。


 僕は、全力で頷く。

 その勢いで、額から汗が飛ぶぐらいに。


 「なるほど。白い石類と木製の物体で、二重に地面から守る、と。君達の生態か」


 オムライスが、美少女の口に合うか。

 合わなければ食べられてしまう。


 僕は、まだ、死にたくない。

 読書も、勉強も、まだしたい。

 

 「君達の言葉で、いただきます。貰うとしよう」


 美少女の手は、液状化した。

 その手で、オムライスを丸ごと飲み込んだ。

 液体の中でも、赤と黄色は目立った。


 「うえ、まず、しょっぱ。ぺっ」

 

 オムライスは、手から吐き出される。


 机に様々な物が、びっしゃりついた。

 ケチャップや卵、謎の液体、が。


 「あ、あ、まずかった、、ほ、他のも、あるから、、」


 「あ、え、か、彼女、さん、だよね?一体、、」


 店員さんも、これを見ていた。

 ありえない物をみたと言わんばかりの表情を、浮かべる。


 「塩味が強いね。独特な味付けだ。だが、貰おう。食べれなくはない」


 また手で美少女は、オムライスを飲み込む。

 今度は一瞬で、赤と黄色は消えた。


 「え、え、?あ、え?やっぱり、え、確認、確認、、聞いてくるから、、店長に、、」


 店員さんはふらふらと、キッチンへ向かう。


 たけど、僕は少しだけ、息をはく。

 これは、助かったのだろうか。


 「君に感謝だ。遭難中の記録として、残しておこう。人間は腹が減った際、助けてくれる種族だと」


 美少女は口角をあげ、笑顔になる。

 その片手は、鉄球や名状しがたい形に姿を変え続けていた。


 「そして、これであっているかな?君達が喜んでいる時に行う表情は」


 美少女は口角を更に、あげる。

 笑顔が深まった。


 僕はゆっくりと、頷く。

 助かった。

 助かったのだろうか。



 「うおおおお!!化け物!!腕が!腕が!!」


 叫び声がキッチンから響く。

 店長の、声だ。 

 喫茶店にいる人達、全員が、そのキッチンに注目する。


 「き、来て、、店、出よう、、」


 財布を、ゴソゴソいじる。

 ここはもう、駄目だ。


 「おや。君は何をしたいんだい。木製の物質と鉱物を出して」

 

 「金、、食べたから、、」


 千円札を一枚、テーブルに置く。

 美少女は覗き込んでくる。


 「なるほど。これが、君達の言う貨幣か。これ自体に価値はない、と」


 「はやく、早く、行こう、、捕まる」


 「連れて行ってくれるのかい?君が。どこへかな?」





◾️◾️◾️◾️◾️

 




 僕の家に、やって来た。


 とあるアパートの一室。

 そこで僕は、一人暮らしをしていた。


 「君の住処、だったか。もしや、住まわしてくれるのかい?」


 何故、人喰いの化け物を、家に連れて来てしまったのか。


 退屈な日々にうんざりしていたのか。

 遭難中と聞いて同情したのか。

 

 「う、うん、、住んで、、」


 だけど、僕は扉を開ける。

 部屋にいれる為に。


 「失礼するよ。中々小規模、と言った所か」

 

 ワンルームの部屋。

 そこが、僕の家。

 親の仕送りで生活していた。


 「し、、しばらく、、ここで暮らして、、遭難中なんでしょ、?」


 「君の言う通りだ。遭難中だ。君に感謝しよう」


 美少女は、口角を上げ、笑顔になる。

 手も液状化させ、変化させ続けた。


 それを見て、僕も少しだけ、笑顔になる。

 未知を感じて。
















 

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