一話 未知との遭遇
僕はその日、未知と出会った。
知らない物、知らない事。
様々なものを理解した。
そして、僕は、傷付いた。
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はっとするほど、暑い日の事。
休みなのに、僕は憂鬱な気持ちで学校の方面へ向かう。
最近、クラスのヤンキー共のイジメが過激化しだしていた。
揶揄うから馬鹿にするへ。
少し借りるから、隠すへ。
こうして、退屈な日々が、嫌な日々へ。
今では、休みの日にまで僕を呼び出すほどになっていた。
イジリとイジメの区別もつかないのかと、僕は悪態をつきたい。
「助け、だれか、だれか、」
路地裏から、小さく、声が漏れる。
僕の耳に、入った。
少し聞き覚えのある、声。
僕を呼び出したヤンキーの、一人。
その声、だった。
気になって、僕は覗いてみる。
「お、お前、たすけ、たすけて、、たすけて、、」
ヤンキーが、半透明の液体に飲まれていた。
僕に気付いたヤンキーは、手を伸ばす。
液体は血の赤で染まっていた。
僕の心が恐怖と混乱で、満たされる。
「きゅ、救急車!!救急車!!警察!救急車!!」
『縺?∴莠コ髢薙∪縺壹?√⊆縺」』
突如、ヤンキーは吐き出される。
その腕は無かった。
断面からは、血も大量に流れる。
僕は、腰を抜かした。
これほどの血なんて、初めて見る。
「俺の、俺の、腕が、、、」
ヤンキーは腕を押さえ、逃げ始めた。
路地裏から出て行く。
液体は、何もしない。
だが突如、形を変え始める。
「あ、あ、あ、テスト。これはテストです。これで合っている、かな?この姿は君達にとって、警戒心を抱きづらいよね?」
液体は、美少女となった。
服も着ている。
人間そのものの姿だ。
「君達の言葉で、伝えよう。君は逃げないように。抵抗しなければ、痛くもないから。腹を満たさせて貰いたいんだ」
じわじわと、じわじわと、美少女は迫り来る。
手だけは、まだ液状化していた。
路地裏の外の、僕を食べようと、する。
「ま、待って!!!あげる!!食事あげる!!食べないで!!僕を食べないで!!」
「食事。食糧の事、かな?」
美少女は、止まる。
反応が、あった。
代わりに差し出すしかない。
「僕があげる!食事!あげるから!美味しいの!食べないで!あげるから、」
「ならば、貰おうかな。少し腹が減ったんだ。あれでは満たなかった」
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美少女と僕は、行きつけの喫茶店に入る。
客の人も少ないから、勝手に席へ、座った。
「こんにちは。この時間帯に来るなんて、珍しいね」
優しい笑顔の店員さんが、来る。
僕達の席の前に、立った。
「今日は彼女さんとなのかな?これは失礼しました」
「そ、それより、い、いつもので、、オムライスで、」
「あれ?大丈夫?すこし変だよ?」
「へ、平気、平気です、、急いで、、」
僕は冷や汗を垂らす。
店員さんは怪訝そうな顔で、去っていく。
すぐに、頼んだオムライスは来た。
店員さんはまだ怪訝そうに、僕達を見る。
「これが、君達の食糧か。食べるのは上の黄色と赤色の箇所、かな?」
美少女はオムライスを覗き込む。
僕は、全力で頷く。
その勢いで、額から汗が飛ぶぐらいに。
「なるほど。白い石類と木製の物体で、二重に地面から守る、と。君達の生態か」
オムライスが、美少女の口に合うか。
合わなければ食べられてしまう。
僕は、まだ、死にたくない。
読書も、勉強も、まだしたい。
「君達の言葉で、いただきます。貰うとしよう」
美少女の手は、液状化した。
その手で、オムライスを丸ごと飲み込んだ。
液体の中でも、赤と黄色は目立った。
「うえ、まず、しょっぱ。ぺっ」
オムライスは、手から吐き出される。
机に様々な物が、びっしゃりついた。
ケチャップや卵、謎の液体、が。
「あ、あ、まずかった、、ほ、他のも、あるから、、」
「あ、え、か、彼女、さん、だよね?一体、、」
店員さんも、これを見ていた。
ありえない物をみたと言わんばかりの表情を、浮かべる。
「塩味が強いね。独特な味付けだ。だが、貰おう。食べれなくはない」
また手で美少女は、オムライスを飲み込む。
今度は一瞬で、赤と黄色は消えた。
「え、え、?あ、え?やっぱり、え、確認、確認、、聞いてくるから、、店長に、、」
店員さんはふらふらと、キッチンへ向かう。
たけど、僕は少しだけ、息をはく。
これは、助かったのだろうか。
「君に感謝だ。遭難中の記録として、残しておこう。人間は腹が減った際、助けてくれる種族だと」
美少女は口角をあげ、笑顔になる。
その片手は、鉄球や名状しがたい形に姿を変え続けていた。
「そして、これであっているかな?君達が喜んでいる時に行う表情は」
美少女は口角を更に、あげる。
笑顔が深まった。
僕はゆっくりと、頷く。
助かった。
助かったのだろうか。
「うおおおお!!化け物!!腕が!腕が!!」
叫び声がキッチンから響く。
店長の、声だ。
喫茶店にいる人達、全員が、そのキッチンに注目する。
「き、来て、、店、出よう、、」
財布を、ゴソゴソいじる。
ここはもう、駄目だ。
「おや。君は何をしたいんだい。木製の物質と鉱物を出して」
「金、、食べたから、、」
千円札を一枚、テーブルに置く。
美少女は覗き込んでくる。
「なるほど。これが、君達の言う貨幣か。これ自体に価値はない、と」
「はやく、早く、行こう、、捕まる」
「連れて行ってくれるのかい?君が。どこへかな?」
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僕の家に、やって来た。
とあるアパートの一室。
そこで僕は、一人暮らしをしていた。
「君の住処、だったか。もしや、住まわしてくれるのかい?」
何故、人喰いの化け物を、家に連れて来てしまったのか。
退屈な日々にうんざりしていたのか。
遭難中と聞いて同情したのか。
「う、うん、、住んで、、」
だけど、僕は扉を開ける。
部屋にいれる為に。
「失礼するよ。中々小規模、と言った所か」
ワンルームの部屋。
そこが、僕の家。
親の仕送りで生活していた。
「し、、しばらく、、ここで暮らして、、遭難中なんでしょ、?」
「君の言う通りだ。遭難中だ。君に感謝しよう」
美少女は、口角を上げ、笑顔になる。
手も液状化させ、変化させ続けた。
それを見て、僕も少しだけ、笑顔になる。
未知を感じて。