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〇パーセントの恋愛小説

掲載日:2009/12/14

0パーセントの恋愛小説。


1990年代、山田という駅の近くのアパートで、俺は廃人になっていた。目をつぶるとハートマークが見えるのに、さっぱり女と出会いがない。もう大学も2年生、あとは労働者になって社畜になるだけなのに何にもない。俺は焦っていた。ヤバい! 社会から落伍してしまう。恋愛できない人間になって、孤独死が待っている。そんなときにできたのが脳内彼女だった。

彼女の名前は楓という。

サークル、ダンスミュージック研究会で知り合った一つ上の明るい女の子だ。小柄な顔にスタイルの整った体、カヒミカリイをイメージしていただければいいだろう。彼女とは色々なところによく行った。お茶の水でギターや楽譜を見に行ったり、新宿の「ローリングストーン」や恵比寿の「みるく」に踊りに行った(一人で)。そのあとアパートに戻って心行くまでセックスした(つまりオナニーした)。目をつぶるとハートマークが見えた。

あるとき楓は言った。「あたしはここで地縛霊になるの。あなたの一生の思い出として」

そうなるんだろうなと僕は思った。それにしても、この目をつぶったときのハートマークは何だろう?

 でも脳内彼女にも限界が出てくる。当たり前だ。キャンパスで楓に膝枕してもらいながら、結局は一人で芝生に寝転んでいるのだと気付いた。そんなとき出会ったのが本物の楓だった。にゃー。一匹の雌猫が俺に身をこすりつけてきた。ここから人間と猫の種族を超えた恋愛が始まった。「アパートで猫は飼えないよ」「にゃー」楓はお構いなしにアパートに転がり込んできた。憧れの彼女との同棲が始まった。

 「一緒にお風呂に入ろう」「にゃー」「チンポこすりつけてオナニーすればセックスだよね」「にゃー」「一緒に寝て夢の中で会おう」「にゃー」

楓はただ餌が食えるから一緒にいるだけだが俺の中では楓はすっかり恋人になっていた。

俺はこの楓との愛を小説にしたためるつもりだった。ハートマークは完全に輝いていた。しかし悲劇はとんでもない時に起きた。俺はそのころ体調を整えるツボに凝っていた。それで試しに楓にもそのツボを押してみた。


うぎゃああああああああ、楓が爆発した。まさか北斗神拳を使ってしまうとは思わなかった。俺は呆然としたが楓は死んだ。それから後のことはよく覚えていない。ハートマークは消え全ては闇となった。楓は出てきてくれない。俺はとりあえず社会生活をこなし、就職し、社会人として働いた。家と会社の往復だ。猫のぬいぐるみを買い。信長と名づけた。それでも脳内恋人もすっかりいなくなってしまった。彼女は死んだのだ。



あるとき考えた。楓、またあえるぞ。俺は自殺することにした。遺書を書いた。すらすら書いた。死ぬ前は本当のことが書けるんだなと思った。勝手にご飯にも遺書を冗談で投稿するとレスがちらちらついた。そうすると目に激痛が走った。眼科に行くと緑内障にかかっているという。しかしそこには見えるのだ。楓が。楓とは紅葉のことだという、ちょうど目をつぶると紅葉が見える。かつてあったハートマークの代わりに紅葉が残った。ただそれだけ。そこは無限で、若く、美しいものの思い出の場所だが、俺がいつか死んでしまうので滅び去ってしまう。それとも無限はあるのか? 神はいるのか? グーグルで検索してみよう。楓神――全国チェーンラーメン店――。




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