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正体を明かす話

「怖がるな。そうなったら、俺がレビーをぶん殴ってやる」

「……レビーさんにナッツの喧嘩でボコボコにされたのに?」

「あいつが酔っぱらってたら勝てる……、気がする」

「ふふっ」


 格好いい言葉で締めようと思ったが、現実は厳しい。

 ミリの言う通り、俺は喧嘩でリーダーに勝てない。彼が酔っていたとしても勝てるのか分からない。背がデカいし、力も強いからな。

 俺が正直に答えるとミリはくすっと笑った。


「私が怖いのもあるし、レビーさんは家のこともあるから」

「あいつの家……、金持ちって事くらいしか分からないんだよな」

「あら、私が話してしまってもいいのかしら?」

「それは私が話すよ!」

「お、クロッカス」

「やっほー」


 真面目な話をしているときに、黒魔導士が割り込んできた。彼女も私服ではなく、黒いドレスを身に着けている。胸元を派手な宝石で着飾っているところが彼女らしい。


「レビーはね”火の勇者”の子孫なんだよ」

「はあ!? 嘘だろ」

「ほんとほんと。本家はあの子だけど、分家の長男はレビーなんだ」

「それが事実だとすれば……、どうして俺に隠してたんだ?」

「それは、リベがアンネさんの事をレビーに隠していたことと同じじゃないかな」

「俺と……、同じ?」


 火の勇者の子孫であるならば、リーダーの立場や結婚相手を重視するのは当然のことだ。今まで祖国の英雄の子孫が冒険者をしていたのがおかしい。彼の両親が「いい加減冒険者を辞めろ」と怒るのも無理はない。

 黒魔導士がなぜリーダーの正体を知っているのかはどうでもいい。

 正体をどうして俺に明かしてくれなかったのか。

 その問いに黒魔導士は「リベと同じ」と答えた。

 俺がアンネの事についてリーダーに隠していたのは、妻がいるということに嫉妬して冒険に支障が出てくるのではないかと懸念していた。


「あいつは、火の勇者の子孫という立場を俺に告げたら気を遣われると思ったのか」

「そういうことだよー」

「てか、なんでお前が知ってるんだ?」

「なんでって? 私、レビーの幼馴染だし」

「そうなのか」

「うん。まあ、リベぐらいの付き合いだし言っちゃおうかな」


 俺が答えについて考えている間、黒魔導士は料理を皿にとりわけ、それを食べていた。

 もぐもぐと食べながら、俺が驚くような発言をするつもりだ。大声を出さないように身構えた。


「クロッカスは偽名で、本名はクラリス・ファイアウィザード・マギジョルカ。火の勇者と共に旅をした大魔術師の子孫。マギジョルカ家の長女だよ!」

「レビーといい、クロッカスといい、なんでお前たちは冒険者をやっているんだ」

「私は色んな料理が食べたいから。レビーは家の生活がつまらなかったからじゃないかな」

「そのしわ寄せが今来てるんだが、お前はそういうのは来ないのか?」

「私には出来の良い妹がいるからね! 私に固執しなくてもいーの」


 黒魔導士が正体を明かしたことで、リーダーと昔馴染みだということが分かった。旅の途中、互いのプライベートを話していたりしたから、黒魔導士とリーダーは付き合ったことがあるんじゃないかと勘繰っていたが、長年の謎がここで解けた。


「これ、シロフォンには内緒だよ」

「わかった」


 黒魔導士は人差し指を突き立て、唇に当てた仕草をしながら俺に忠告した。

 俺は落ち着いて聞いていられたが、白魔導士がそうとは限らないからな。


「だとすれば、あいつの相手がどんな立場のヒトか知ってるよな」

「うん。王族だね。正確にはーー、ま、細かいところはいいでしょ」

「……そういうことだから」


 リーダーがどうして素直にミリを選ばず家柄を気にするのか分かった。だが、あいつはミリの事でもやもやしている。ミリにも未練はありそうだ。二人がどこまでいったのか根掘り葉掘り聞くつもりはないが、どちらかが関係を終わらせようと切り出したに違いない。


「ま、二人とも美味しい料理が並んでるんだし食べようよ!」

「……ありがとな」

「なんのことかな?」

「ただの独り言だ」


 これはリーダーとミリの問題だ。俺はミリをこの場に連れ出すだけで精いっぱいだ。この先は二人が解決するしかない。俺は皿に好きな料理を盛りながらそう思った。

 

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