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最後の冒険の話

「じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい」


 俺はアンネに挨拶をして、家を出た。

 今日はリーダー、黒魔導士、白魔導士と四人で冒険をする。ガネの町に戻るのは一週間後になる。


「……今日は皆、早いんだな」


 集合場所へ向かうと三人が待っていた。三人が俺よりも早く到着するのはパーティを組んで以来初めてかもしれない。


「そりゃあ、このメンバーで冒険できる最後の日だもん」

「そわそわして、昨日よく眠れませんでしたわ」


 黒魔導士と白魔導士が順に理由を述べた。

 俺も二人と似たような心境である。


「オレは、もう自由に外へ出れねえんだなって家でいじけるのが嫌だったから早めに来ちまった」

「なら、家族にそう言えばいいだろ」

「オレの我儘が通る場所じゃねえんだよ。あそこは」

「……お前なりに大変なんだな」

「そういうこと。じゃ、行くか!」


 リーダーにとっては、最後の冒険である。しかし、内心冒険を続けていたい気持ちがあるようで、まだ、自身の気持ちに整理がついていないみたいだ。

 裕福な家柄というのも、俺たちには分からない都合があるんだろうな。



 冒険は順調に進んだ。

 魔物との戦闘は、地上にいる敵はリーダーが、空中にいる敵は黒魔導士がそれぞれ倒していった。そこで受けた打ち身やかすり傷は白魔導士が癒してゆく。いつも通り、俺は本来の実力は出せないでいた。

 俺が活躍するのは、皆の食事を作る時である。

 食用として使える魔物を使って、魔物食を作る。


「やっぱ、リベの料理は魔物使うのかよ」

「荷物を減らすとなると現地で食材を調達するしかないだろ」

「私は嬉しいよ。リベが作った魔物食が食べられて。私たちの間で、ちょっと話題になってたりするし」

「センチさんのおかげで舌が肥えた気がします……。魔物食で満足できるかどうか」


 焚火を囲んで、俺たちは料理を食べる。みんな、ああは言ったが完食していた。

 食事を終え、沈黙が流れた。


「これ食うのも、この冒険で最後なんだな」

「頼まれれば家に持っていくぞ」

「……親にどう思われるかな」

「その時は、見栄えを良くするさ。『ライン』で出した限定メニューのようにな」


 いつも見た目が悪いものを提供していると思われては困る。町へ帰れば一部の美食家が評価した魔物食を提供できるというのに。


「なあ、冒険者を辞めたらレビーはどうなるんだ?」

「それはもう決まってる。俺はあの家を継ぐための準備だ」

「準備……」

「騎士団に入る、あと見合いする」

「それは突然だな」


 リーダーが騎士団に入るのか。一般人が騎士団に入るのは実技試験が必要になるが、冒険者時代の実績で免除されたに違いない。今まで、打診はされていたんだろうがコイツが先延ばしにしてきたんだろうな。それで、両親と喧嘩になったのだろう。

 騎士団の話はもう諦めたのだろうが、見合いの話はもやもやしているみたいだ。


「突然だが、お前はミリとナノどっちで悩んでるんだ」

「と、突然過ぎんだろ!」


 俺の質問にリーダーが戸惑っている。

 その反応で見合いの話を二人のどちらかの好意を捨てきれないのが分かった。

 ナノは一時期店に通うほどにべた惚れだった。今も店に入ればナノの姿を探している。だけど、ミリと話すときはどこかぎこちない。脈があるとしたらミリの方だろうが。


「ねー、どっちなの?」

「え、レビーさんお二人のことお好きだったんですか!?」


 黒魔道士と白魔道士も話に加わり、雰囲気は作れた。

 しばらくしてリーダーがぼそっと相手の名を呟いた。


「ミリさんだ」と。

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