感動の再会を邪魔される話
「キュ!」
「きゅ、じゃない! なんで俺の背中に張り付いてるんだ」
「キュ~」
俺の説明にナノは目線を反らす。
どうやら、マクロが作った円に飛び込んできたようだ。
マクロとは別れてしまった。
ナノを元の世界に戻す術はない。
ここで見捨てては、空腹で倒れたり、魔物に襲われる危険性がある。
「……分かった。俺が面倒みるから」
「キュ、キュ!」
ナノは全身で喜びを表現した。
都合のいいモフモフめ。
「なに独り言呟いてるのさ」
「すまん、こっちの話だ」
「へ~、この子ナノっていうんだ」
「ああ」
「私達と別れた後から飼い始めたの?」
「そうだ。冒険に出なくなると時間に余裕が出来てな。その隙間を埋めるためにペットを飼い始めたんだ」
「ふーん」
黒魔導士がナノに関心を示している。彼女との話が長引けば当然――。
「コイツとはもう関係ねえだろ。行くぞ」
「え~」
ナッツ野郎の声を聞くことになる。
声を聞くことになれば、会話に加わってくる。
「お前と話すことはない。じゃあな」
「ああ」
俺はナッツ野郎たちと別れた。
ナノは俺の肩の上に乗って「キュイキュイ」鳴いている。
楽しそうな雰囲気だ。
「まずは報酬を貰うぞ、貰ったら家に帰る」
「キュイ」
「マクロと再会したら、ちゃんと元の世界に帰るんだぞ」
「キュキュ―」
ナノは俺の話を聞いているのだろうか。
ナノの態度に俺は深いため息をついた。
☆
「ただいま」
冒険の報酬を貰い、俺はその足で家へ帰った。
自宅は町の中心街から離れた場所、民家が並ぶ住宅地の一角にある。
自宅へ帰り、家にいるだろう家族に声をかけると、俺の体にタックルしてきた。
「おかえりなさい!」
「今、帰った」
俺にタックルし、抱きついてきたのは妻だ。
予定日から十日経っても帰ってこなかったのだ、心配されていて当然だ。
「帰る途中、怪我をしてな。連絡せずに待たせてすまなかった」
「無事なら連絡しなさいよ、ばか!」
「ああ。すまんすまん」
俺は黒髪を撫でる。指に引っかかることのなくサラサラとしていて綺麗だ。それに甘い良い香りがする。
俺の胸にすっぽりとはまる、小さくて華奢な体。
俺の安否を心配してくれた、透き通る声。
そして、俺を見つめる茶のつぶらな瞳が可愛らしい。
この人の為に俺は命をかけている。
「しばらく冒険はやめるよ。二人の時間を多く作る」
「ほんと?」
「ああ。生活が苦しくなるかもしれんが……」
「それでいい! リベが帰ってこないより、いい!」
「ありがとう。アンネ」
俺とアンネはじっと互いを見つめ合う。
そして顔を近づけ、唇が触れ合う直前ーー。
モフモフな毛皮に阻まれた。
心地よい肌触りと獣臭さがした。
次話で全ての2つ目のタイトルを回収します!
10話は明日投稿します。
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次話お楽しみに!




