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祝いたい話

「私は……、シロフォン様にとある方のお話を聞きたくて」

「オレはシロフォンさんの事が心配で……」


 二人はぽつりぽつりとシロフォンの家にいる理由を打ち明けていった。

 センチの目的は知っているし、彼が動き出さなければあのままだ。彼が白魔道士に告白する日はもう近い。

 アモールが白魔道士に用があったのは偶然の様だ。彼女の話を聞くに、"とある方"というのはセンチではない。

 センチで無いならば誰なんだ?

 白魔道士の問題とアモールの問題、これ以上面倒なことを増やさないでくれ。


「店長?」

「変な顔してる」


 頭を抱えている俺の姿を見て、アモールとセンチが笑った。

 俺のしかめっ面が可笑しかったようだ。

 笑い声が収まったところで、二人の言い争いは終わった。


「店長は何故、シロフォン様のお宅に?」

「それはだなーー」


 俺は白魔道士が嫌がらせを受けていることをアモールに告げた。

 アモールはその話を聞いて驚いている。

 やっぱり、主犯ではなさそうだな。


「それはセンチ様のせいでしょう」

「……」

「シロフォン様を救えるのはセンチ様だけですわよ」

「うん」

「でしたら、プロポーズですわね!」

「おい、それは俺がーー」

「ゆっくりしてるから、シロフォン様が虐められているのですよ、お分かり?」


 アモールがセンチに迫る。

 俺が言い出せなかったことを矢継ぎ早にアモールが話してゆく。それに強引にことを運んでいる。

 こういう流れでセンチはアモールと婚約したのだろうか。そうならば、『向こうが勝手に決めた』と言っても可笑しくない。


「……分かった。オレ、シロフォンに告白するよ」

「ようやく、だな」

「でしたら、店長、センチ様のプロポーズをお手伝いしましょう!」

「え!?」


 俺も巻き込まれるのか!?

 アモールの発言に俺は驚いた。

 アモールはうんうんと頷いている。瞳が輝いていた。私が、センチと白魔道士をくっつけます!という強い意志を感じた。

 勝手にどうぞ、なんて言ったらどうなるんだろうな。まあ、今より面倒なことになりそうだから、ここはアモールに話を合わせよう。


「……仕方ないな。『ライン』でやるか」

「店長もそっち側かよ……、面白がりやがって」

「センチの背中を押してやるだけだ。最後の最後はお前が決めろ」

「……ああ」


 こうして、センチのプロポーズ作戦に俺が力を貸すことになった。



「う〜」

「リベ、新メニュー考えてるの?」


 翌日、俺はメニューを考えていた。

 作戦会議の結果、俺がメニューをアモールがプログラムを作ることになった。

 後から思ったのだが、プログラムってなんだ、プログラムって。

 コースメニューにすることは決まっている。

 テーマは『プロポーズ』。

 祝い事ということで、前菜、副菜とメインは決まった。

 残りはデザートだ。

 これがなかなか決まらない。

 デザートを食べ終えたら、メインイベントだからな。ただの果物や焼き菓子を提供するわけにはいかない。

 これが話題になったら、他の客も真似しだすかもしれないからな。

 話題性があるもの……、などと考えていたら、ナノが声をかけてきた。


「ふーん、デザートなの」


 ナノは俺のメモを盗み見た。


「デザートなら俺の出番っすね!」


 デザートと聞き、シトロンが俺の前に現れた。


「祝い事に出すデザートを考えていてな」

「何を祝うんすか?」

「プーー」


 危ない。バラす所だった。

 センチが白魔道士にプロポーズすることは俺とアモールしか知らない。

 シトロンに誘導されたが、俺は直前で言いとどまった。


「プランだけ、そういう予約客が『ライン』に来るかもしれないだろ。そのために一応、な」

「なるほどなの! ナノのお店でプロポーズするヒトがいるかもしれないの」

「そ、そう!」

「奥さんの赤ちゃんが生まれたら、俺がデコレーションケーキを作るっす!」

「シトロン! ナノも祝いたいから一緒に作りたいの!」

「あ、いや……、ナノさんはプレゼント考えて欲しいっす。ナノさんはお洒落っすからね」

「わかったの! リベとアンネのプレゼント、考えるの」

「ふう……」


 シトロンが安堵のため息をついた。

 ナノの壊滅的な料理の腕を、知っていたのだろう。

 まあ、俺は秘密がバレずにホッとしている。別の話題に逸れてくれてよかった。


「特別な事っすからね、デザートも特別感がほしいっすよね」

「そこなんだよ……」

「俺なら、祝い事に合わせて作りたいっす」

「例えばなんだが、想い人に告白するときは、どうする?」

「指輪を菓子に仕込む、とかっすかね」


 シトロンが紙に仕込み方を書いてゆく。数パターンあり、どれも俺には思いつかない方法だった。


「……いいな、これ」

「あざっす。てか、プロポーズする予定あるんすか?」

「ナノなの!? うーん、それは嬉しいの!」

「それはないっす」

「シトロン! すぐに否定しないでほしいの!」


 また計画がバレそうになるも、ナノのおかげで話を逸らすことが出来た。

 ナノとシトロンは俺から離れた。

 俺はシトロンが描いた案を手に取る。


「……これでいこう」 


 デザートの案が決まった。

 あとは当日まで練習あるのみだ。







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