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意外なお友達の話

 黒魔導士の話を聞き、心配になった俺は火勇亭で食事を終えた後、白魔導士の家へ寄り道をしていた。

 尋ねると、白魔導士が出てきてくれた。嫌がらせの件もあってか、彼女は疲れた表情を浮かべている。


「リベさん……」

「いや、昨日の行動が気になってな。何か悩み事があるんだったら話、聞くぞ」

「……今、お友達が家にいまして」

「お友達?」


 白魔導士が”お友達”を家に入れるのは珍しい。

 そのお友達が俺の前に現れた。


「お、お前は!?」

「お久しぶりです、リベ店長」


 その人物はアモールだった。

 嫌がらせの主犯格かもしれないアモールが何故白魔導士の自宅にいる。

 まさか、”お友達”として白魔導士に近づき、あとから裏切る算段なのだろうか。


「リベさんとアモールさんはお知り合い、ですか?」

「ああ。まあな」

「ええ」

「でしたら、一緒にお話しましょう」


 俺は白魔導士の家に招かれた。

 空いた席に座り、用意されたお茶を飲む。

 白魔導士とアモールとの会話は弾んでいる。

 この二人が仲良くなった経緯は知らないが、センチが片思いしている相手と婚約破棄した相手が共に談笑している姿を見て、俺は気まずかった。緊張でお茶の味が分からない。

 俺は、視線を”チャロ”のゲージへ移した。

 ”チャロ”もとい茶色いモフモフの姿になっているセンチは、ゲージをカリカリとひっかき、外に出たい意思表示をしていた。これは演技で、二人の様子を窺っているのだろう。


「今日のチャロは出たがりさんですね」

「……そうですわね」

「シロフォン、お茶のお代わりをくれるか」

「はい」


 お茶のお代わりを要求し、白魔導士をこの場から離した。

 白魔導士がいなくなると、アモールが俺に近寄る。

 聞きたいのは、チャロもといセンチの事だろう。


「えっとな、こいつはあの姿でシロフォンのペットとして住んでいるんだ」

「……センチ様がそんな変態だとは思いませんでしたわ」

「掟のこともあったから仕方が無かった、そうセンチは言うだろうな」


 アモールの口元がひきつっている。

 女性としては、プライベートな姿を見られて嫌な気持ちになるだろう。

 俺は一応、センチのカバーをした。

 

「今は変わりましたわよ。秘術と変身について、シロフォンさんに打ち明けませんの?」

「それは――」


 俺は特例だが、秘術と変身について打ち明けてもいい人物は家族のみとされている。

 アモールはセンチと白魔導士が家族になると思っている。そのことについて気に留めていない様子。

 これは婚約破棄されたことも気にしていないのか。


「俺には分からんな」

「そうですわね。リベ店長に聞いても分かりませんわよね」

「お待たせしました」


 俺とアモールの話が一段落したところで、白魔導士がお茶のお代わりを持って、戻って来た。

 一旦、センチの話はやめとなり、俺は白魔導士とアモールの話を聞いていた。


「アモール、夕方になったが――」

「そろそろ帰りませんと、お父様が心配してしまいますわ」

「では、今日はここでお開きにしましょう」

「美味しいお茶でしたわ。ご馳走さまでした」


 アモールは白魔導士に深々と頭を下げた。そして、俺の腕を掴む。


「リベ様に家まで送ってもらいますの」

「それがいいですね」


 そんな話聞いてないんだが!?

 俺の気持ちをよそに、俺とアモールは白魔導士の家を出た。

 少し町を歩いた後、俺は拘束を解かれる。


「人気のない場所へ移りましょう」

「家に帰るんじゃないのか?」

「とにかく、どこか案内してください」


 俺は裏路地へアモールを案内する。

 アモールは行き止まりの壁をじっと見つめる。

 しばらくして、壁からセンチが現れた。”移動の秘術”を使ったらしい。


「アモール、シロフォンさんの家にどうして――」

「それはこちらのセリフです。シロフォン様の家で何をしていらっしゃるのです? センチ様がやっていらっしゃることは”盗撮”に等しい行為だと思います!」


 センチとアモールはそれぞれの疑問をぶつけ合った。

 そして、二人は黙り込む。口を開くタイミングも同時で、息がぴったりだった。

 白魔導士のことが無ければ、いい夫婦になってたんだろうな。

 話に入り込めない俺は二人の様子をただ眺めていた。


 

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