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接客模様の話

マクロ視点でお送りします。

 リベさんにああは言ったものの、アモール様が来店されて僕も驚いています。

 ですが、ここはヒト族の世界。アモール様を特別扱いしなくてもいいのです。

 僕はそう心に言い聞かせて、店内へ戻ってきました。


「お待たせしました」


 僕は飲み物の追加注文をした客にそれを渡した。


「アリガトウ、マクロちゃん」


 ふう、その言葉で僕に活力が湧いてきます。

 お客様はお酒を飲んでいるので、ふらっとされたとしても「飲み過ぎたか」としか思いません。

 今の『ライン』は常連と新規客が半々いる状態です。

 新規客はセンチ兄さんに会うためにきたお客様ですね。

 アモール様もその一人でしょう。彼女の対応は全てセンチ兄さんに任せるべきですね。


「マクロ、向こうのテーブルの接客手伝ったほうがよくない?」


 ミリ姉さんが僕の傍に寄り、耳元で囁きました。

 向こうと姉さんが指したのは、新規客が座っている場所です。

 ミリ姉さんの言う通り、あのテーブルを手伝えるのは僕しかいないでしょう。彼女たちの関心が僕へ向くような接客を心がけましょう。


「常連さんは私とナノで対応するから、兄さんのフォローお願いね」

「はい」


 常連さんは姉さんたちに任せ、僕はセンチ兄さんのフォローに入ります。

 センチ兄さんがアモール様の対応に集中していると気付いたお客様たちは、気を引こうと注文を増やしてきます。もしかしたら、現金を支払ったりするかもしれません。

 以前、ナノ姉さんがレビーさんに付きまとわれた際がそうでしたからね。

 そういう対応は別の店でやってほしいです。


「追加注文ですね、かしこまりました」

「今、このお酒が美味しいですよ」

「この飲み物を注文されるのでしたら、こちらの料理はいかがでしょう」


 僕は売り上げにつながりそうな営業トークを交えつつ、女性の方たちの関心を持ちそうな話題を出してみたりしました。別の料理店でアルバイトしている経験が役立っているかもしれません。

 僕の作戦は成功し、関心をセンチ兄さんから僕の方へ向けることが出来ました。

 とりあえず、アモール様が店を出るまで引き付けておきませんと。


「いらっしゃ――」


 扉が開き、僕はお客様に声をかけました。

 来店した人物を見て、僕の言葉が止まりました。


「よ! マクロ、遊びに来たよ」

「マクロさん、こんにちは」


 クロッカス師匠とシロフォン様です。

 今、来てほしくない相手が来店してしまいました。


「あ、シロフォンなの! え、ど、どうするの?」

「ナノ、あんたは一度、皿集めて厨房に戻りなさい」

「ミリねえ、分かったの」


 ナノ姉さんは問題をすぐ口にしてしまいました。それを聞いたミリ姉さんはナノ姉さんを厨房へ押し込みます。余計な事を口走りそうですからね。ミリ姉さん流石です。


「二人ともこちらの席へどうぞ」

「アリガトウ、ミリさん」


 二人をミリ姉さんが席へ誘導します。誘導する際に僕にウィンクを送りました。これは「私に任せて」という合図でしょう。

 クロッカス師匠とシロフォンさんはアモール様から遠い席に座りました。注文や料理の提供は全てミリ姉さんがやってくれるでしょうから、一安心――、ではなさそうです。

 センチ兄さんがシロフォンさんが来店したことにより、迷いが生じてます。

 アモール様の接客を中断してシロフォンにさんに声をかけたい、その気持ちが態度に出てしまいました。


「センチ様、どうされました?」

「え、あ――、注文は決まったか?」

「はい、こちらにしようと思います」

「分かった、飲み物を持ってくるな」

「はい、よろしくお願いします」


 センチ兄さんの変化にアモール様が気づいてしまいました。

 上手く避けましたけど、気を付けてほしいです。

 僕はじっとセンチ兄さんを睨みました。視線に気づいた彼は「すまん」と頭を下げて厨房へ消えて行きました。

 センチ兄さんがいなくなると、アモール様は店内を観察し始めました。特に、センチ兄さんに変化が起こった場所、クロッカス師匠とシロフォンさんの席を凝視しています。

 ああ、これはまずい。

 アモール様にシロフォンさんとセンチ兄さんの関係を知られてしまったら大変なことになります。

 大変なこと、というのはシロフォンさんに降りかかるでしょう。

 今までは”掟”がありましたので、ヒト族との接触は皆無に等しかったですけど、それが少し変わりました。アモール様がガネの町を歩いても咎められないのです。そこで、センチ兄さんが婚約破棄をした理由を知ってしまったら――。

 ああ、父さんが頭を三日下げ続けて、許しを貰ったというのに……。それが振り出しに戻ってしまいます。


「マクロちゃん、これお願い」

「はい、かしこまりました」


 僕は接客の仕事をしつつ、センチ兄さんとアモール様から目が離せないのでした。

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