久しぶりに働く話
外伝始めます!
ネズミが族長となり、俺たちの生活は大きく変わった。
まず、人手が足りなくなった。
ナノとセンチは変わらずラインで働いている。
しかし、俺は冒険者業、マクロは別の飲食店で接客をすることになった。
『ライン』で働けるようになったのだから、前に面接していた店に断りを入れればいいんじゃないかと俺はマクロに助言したが……。
「いやあ、向こうで働いている店員さんにも色々な事情がありまして……」
一人は家族の都合で辞め、一人は結婚・妊娠が発覚して辞め、とマクロの前にも店を辞めてしまった店員がいて、ここで彼まで辞めてしまうと、お店が回らなくなってしまうのだとか。
ラインで接客業をやって来たマクロは、その店の店主に同情してしまい、ダブルワークを受けた、という経緯がある。
「じゃあ、久しぶりにラインで看板娘やっちゃうぞ」
ラインのピンチに立ち上がったのがミリである。
ミリは元々『ライン』で接客と給仕をしていた。ナノとマクロに基本を教えたのも彼女だ。
「ミリお姉ちゃん、看板娘と名乗るにはそろそろきついと思うの」
「ナノちゃーん、何が言いたいのかな?」
「ひっ!? な、なんでもないの」
ナノが言いたいのは年齢とバツイチだからイメージが崩れると思うの、なんだろうが、そういうこと姉妹でも言わない方がいいと思う。ナノに迫るミリの顔がとても怖い。
「リベ、助けてなの~」
ナノが俺に助けを求めて来た。妥当だな。
「あまりナノを虐めるな」
「なに、リベまでナノと同じことを言うの?」
「当然だ。ここの看板娘はナノだ」
「……そうなっちゃうか」
「そうなるんだ。ほら、そろそろ店が開くぞ」
「はーい」
俺がミリに事実を告げると、彼女は腑に落ちた表情を浮かべ、仕事へ戻っていった。
人手不足だが、今日は俺に冒険が無く、マクロが『ライン』で接客出来る日だ。
「前と同じだな」
「そうなの! リベとマクロがいるの」
前はこの人数で『ライン』の客を回してきた。
「だから、ナノはちょっと楽をするの」
「サボるな、ちゃんと働け」
「うん、リベも料理の作り方と飾りつけ、思い出してほしいの」
「うっ」
ナノの指摘に俺は言葉がつまった。
開店前、センチにも同じことを言われた。
二人の言う通り、調理と絵の通りに料理を皿に盛りつけられるか不安だ。
俺の仕事をするために、厨房に戻る。
「リベっ」
「ん?」
「また一緒に働けて嬉しいの。がんばろうなの」
「ああ。頑張ろう……、いや、励ましてくれてアリガトウ」
「はうっ、リベにアリガトウ貰ったの! マクロとミリお姉ちゃんに自慢するのっ」
アリガトウをナノに告げると、彼女の肌ツヤが良くなり、恍惚な表情を浮かべた。
喜びをその場で跳ね上がることで体現し、ナノはミリとマクロの方へ駆けて行った。
「店長、そんな余裕があるんだからきっちり働いてくれよ」
「ああ。分かってる。久しぶりに言ったから、ちょっと立ちくらみが」
「そういっても仕事はきちんとやって貰うからな」
「ああ……、分かってる」
俺とナノのやり取りを見ていたセンチから苦言を言われた。
冒険者と店長、両立できなければ店長を辞めてもらう、とセンチは言った。
あれがどこまで本当なのか知らないが、手を抜いたらそれが今日になるかもしれない。
気を抜かず、仕事をしよう。
俺は自身の頬を叩き、気合を入れた。
久しぶりの『ライン』での仕事、頑張るぞ、と。
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