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火の勇者祭の話2

 午後に差し掛かり、休憩を求めてキャピカドリンクを求めて来る客が増えて来た。

 俺は客から注文と料金を受け取り、中へ招く。


「リベ、お客さんいっぱいになったの」

「分かった」


 中の客の様子はナノから伝えてもらう。

 午後の時間は食事物が落ち着いた頃のため、ミリも同様にマクロと交代で休憩を取っている頃だ。

 それとは対照的に俺の店は今が忙しい。


「……困ったな」


 満席になってしまうと、次の客を待たせてしまうことになる。

 店の外に数個椅子を置き、そこでも飲めるようにしたが、それでも間に合わない。

 近くで立ち飲みしてもらうにも、他のヒトの行く手を阻むことになり迷惑になる。


「あ、四人お客さんが出て行くの」

「回転が遅くなることを考えていなかったな……」

「それは、センチお兄ちゃんが人気になっちゃったせいなの」

「だよな」


 ここに来店する客の目的は”休憩”だ。

 一人当たり、平均二十分は『ライン』に滞在している。新しい客を入れたいこちらとしては回転率が悪くなり、行列になってしまった。

 繁盛した理由は、ガネの町にない目新しい飲み物だということ、給仕の人がカッコいいと噂が広がったことにある。


「お兄ちゃん、大変そうなの」

「ずっと、働き詰めだからな」


 話題になってしまったせいで、センチはずっと給仕をしている。


「俺と交代するか? とあいつに言ったんだが、断られてな」

「リベ、給仕に向いてないの。センチにいが断るのは当然なの」

「うっ」

「ナノが代わるって言っても、”オレが売り上げにつながってるなら、なるべく前に出たい”って訊かないの」


 噂になってしまったセンチは、調理場に戻ることが出来なくなってしまった。

 働き詰めで疲れているだろうに。


「でも、仕込んでたキャピカがもうすぐで無くなりそうなの」

「そうか。追加分はいつ出来上がりそうだ?」

「すぐに出来そうだけど、ドリンクの方も心もとないから営業をちょっとだけお休みするってパパが言ってたの」


 そこでセンチも休憩が取れそうだから、気に病まなくていいか。


「リベさん」

「お、シロフォン」

「お久しぶりです。早速キャピカドリンクを一つ下さい」


 ナノと話しつつ、客の注文を捌いていると白魔導士が現れた。

 俺は料金を貰い、白魔導士に色付きのカードを渡した。

 店内にいるセンチがその色で商品を判別し、提供するという仕組みだ。


「ありがとうございます」

「ナノ、店内の席は――」

「空いてないの。外で――」

「いや、シロフォンちょっとここで雑談していかないか」

「はい、いいですよ」

「ナノ、店番頼む」

「え……、うん。分かったの」


 俺の頼みに不満そうな表情を浮かべたナノだったが、白魔導士とセンチの関係を思い出しすぐに了承してくれた。

 働き詰めで疲れているセンチを励ますには、俺やナノのねぎらいの言葉ではなく、白魔導士が来店することだ。

 店内の空席が出来るまで、俺と白魔導士はそれぞれ進捗を話した。

 白魔導士は冒険の話、俺は『ライン』の話だ。


「あ、席が空いたな」

「では、リベさん。また」


 白魔導士が店内に入っていった。

 仕事で疲れている時に、片思いをしている人物が現れれば、センチにも活力が湧いてくるだろう。


「リベ、仕事戻ってなの。ナノ大変なの」

「すまん、すぐ戻る」


 ナノが金の計算で混乱していた。

 ナノは料理や客の顔を覚えるのは得意だが、金の計算が苦手だ。

 俺はすぐにナノと代わり、元の仕事に戻る。


「掟が変わったら、センチとシロフォンの仲は進展出来るのか」

「出来ると思うの。ナノはリベともっと仲良くなりたいの」

「う、ダメな奴に話題を振ってしまった」

「他のヒトの事を考える余裕があるの……、もっとベタベタするの」

「……」


 ナノの言う通り、センチと白魔導士の関係を考えている場合ではない。

 俺もナノの好意について答えを出さなければ。

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