屋台メニューを考える話
ネズミの宣言により、『ライン』は”火の勇者祭”に向けて準備を進めることにした。
屋台を出店するために、やらなければならないことが二つある。
一つは出店申請。
これは外の世界にいる俺とミリがやる。
今回は”アリガトウ”を稼ぐため、『ライン』の前と別の場所に出店しようと考えている。
出店手続きは一店舗にあたり代表者一名が必要なので、俺とミリがそれぞれ代表者となった。
俺は自分の店の前ということですぐに決まったが、ミリの方は出店数が多く、立地がいい場所はくじ引きで決まるとか。
「私、運良いからまかせて!」
ミリは明るくそう俺に言った。
くじ引きは三日後、その間にもう一つの問題を片付けることになる。
二つ目は、出店メニューだ。
人気の揚げ物系、カットフルーツ系をやっても売り上げにつながらない。
ならば、どの店もやったことが無いメニューを開発しなくてはいけない。
「また魔物食をやる――」
「リベ殿、今回はヒトを多く招きたいのじゃ。それは却下する」
「……」
魔物食、ネームバリューは強いのだが、強過ぎるがあまり好き嫌いが激しい。
それに、大量の食材を仕入れるのは難しいしな。
「他の世界の屋台メニューをアレンジしてみたらどうなの?」
「そうじゃな。となれば、どの料理にするかじゃが……」
『ライン』の強みはムーブ族の他、異世界のヒト族の料理を持って来れることだ。
「多すぎるから絞るしかなさそうじゃの」
「リベの世界で出来ない料理は除外するの。わたあめにー、かき氷にー、アイスもダメ……。リベの世界の文明早く進めなの」
「……他の世界はどういうものなんだ?」
「ナノ、外の世界の事を口にするのは良くないのじゃ。リベ殿の世界には良いところが沢山ある――」
「リベがいる事しかいいことないの」
「……」
即答で俺の世界をナノに否定された。
その回答を聞いたネズミは額に手をやり、ため息をついた。
文明が進むとどうなるんだ? ナノが言った食べ物が出来るのか。
「掟がある理由はもう一つあって、娘の様に外の世界の文明を流用して、世界を大きく変えてしまう可能性があるからなのじゃ」
「ふむ……」
「食べ物はリベ殿の世界で作れるものに絞ろうと思う。この世界で調理可能なのか、ミリに手伝ってもらわねばの」
「メニュー開発はネズミに頼んだ方がよさそうだな」
「珍しいメニューで、アリガトウいっぱい稼ぐの!」
ナノも張り切っている。
祭りでアリガトウを沢山稼いで、ネズミを族長にする。
族長になったら、掟が変わり、元の生活に戻ることが出来る。
メニューはネズミに任せてよさそうだ。
さて、明日は出店場所のくじ引きだ。
どんな結果が出るのやら……。




