ムーブ族に助けられた話
6話を当日中に投稿できなくてすみません。
「よいしょっと」
ナノはベッドの脇に立ち、スカートの裾をつまんで礼をした。
「私はムーブ族のナノなの。怪我をした恩人をこのお部屋に連れて来たのはナノなの」
「そ、それだ。俺は魔物に背後から……、いたたた」
ナノに事情を聞こうと前のめりの体勢になると、背の傷が痛んだ。痛みに耐えられず俺は楽な姿勢へ戻す。
気絶した俺を運んで魔物から逃げ切るのは華奢なナノには不可能だ。
ヒトの姿ではなく、白いモフモフの姿でいたのにも理由があるはず。
それにムーブ族ってなんだ? 聞いたことがないぞ。
「ムーブ族は外の世界に出る時は”かりそめの姿”に変わらなければいけないという仕来りがあるの」
「かりそめの姿……、それが白いモフモフということか」
「そうなの!」
ナノは仕来りの為に、白いモフモフへ変化していたということか。
白いモフモフの状態でどうやって魔物から逃げ、俺をこの部屋に運んだのだろうか。
俺の手の平ほどしかないサイズで運び出せるわけがない。
「僕が”ムーブ族の秘術”を使ったからです」
新しい包帯を取りに行ったマクロがナノの代わりに発言した。
秘術ってなんだ?
俺はマクロの話を聞く。
「僕たちは秘術を使うと、あなたの世界とこの世界を自由に”移動”することが出来るのです。僕が姉さんに代わって、秘術を使い、魔物に襲われていたところを助けたのです」
「ちょっとまて、理解が追いつかない」
「だと思いました」
マクロは俺の包帯を巻きなおしつつ、”ムーブ族”について説明してくれた。
「僕たちは”移動の秘術”、あなたたちの世界では”空間移動”と呼ばれる能力を持っています」
「空間移動……、俺をこの部屋に移動させる力がある、という認識でいいか?」
「はい。その代り私たちはヒトの姿になれない、という制限があります」
「俺たちの世界ではナノは白いモフモフとして生活しなくてはいけない、ということだな」
「その通りです」
マクロは俺の背を強く叩き、包帯の巻き直しが終わったことを告げた。
痛い、傷口を強く刺激するな。
マクロの思いがけぬ攻撃に、俺は顔をしかめて無言で抗議した。
「ちなみに僕は――」
マクロの姿が消えた、と思いきや床下に茶色いモフモフがいた。
茶色いモフモフはマクロの姿へと戻る。
「髪の毛の色が体毛の色となります。僕の場合は茶色です」
「なるほど」
だからナノは白いモフモフなのか。
俺はマクロの説明を聞いて、怪我を負い、気を失ったにも関わらず、生きていたことを理解した。
というか、ナノが秘術を使っていれば、魔物に襲われることもなかったし俺が怪我を負うこともなかったのでは?
新たな矛盾が見つかり、俺はナノの方を向く。
ナノは俺から目を反らし、話題を振ってほしくない様子。
でも、話しかける。
「何故、ナノは”秘術”を使わなかったんだ?」
「それは……」
俺の問いにナノは言葉を濁した。黙秘していれば、追及から逃れられると思っていたのだろうが、俺は逃がさない。
観念したナノがため息をつき、事実を応えた。
「ナノは”秘術”を使えないの」、と。
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第7話は明日投稿します!
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