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住む場所を変える話

投稿時間遅刻しました。

遅くなってすみません。

「ミリちゃん、麦酒お代わり」

「こっちはおつまみ」

「ちょっとまってね」


 昨日、元夫が店に押しかけて来るというハプニングがありながらも、ミリはバー運営を続けていた。

 客の前では笑みを絶やさず、通常営業である。

 さっきまでは、暗い表情を浮かべていたのに、営業が始まった途端、表情が明るくなった。

 ミリが無理していないか俺は心配になりつつも、客が注文したものを用意し、彼女に渡した。

 俺が直接渡してもいいのだが、さっきそれをしたら、嫌な顔をされたからな。

 皆、ミリ目的で来店しているのだから、男に飲み物や食べ物を提供されたらそら嫌がるか。

 

「リベ、酒のお代わりくれ」


 ただ一人、俺に注文する男がいる。

 それはリーダーだった。

 俺と話す時でさえ、リーダーの視線はミリのほうに向いている。

 自分から話すことなく、ミリの様子を観察している。


「話したいなら、話せばいいだろ」

「……なんのことだ」

「ミリのことだよ」

「ミリさんは忙しいだろ。暇なリベに注文したほうがすぐに料理と飲み物くるだろ」


 俺から何を言ってもリーダーは言い訳をする。面倒くさい男だな。

 閉店時間まで待つしかないか。

 俺はその時間まで、リーダーの相手をした。



「リベ、手伝ってくれてありがとう」


 閉店時間になった。

 常連たちは皆会計を終え、店を出て行った。

 店内に残ったのは店員である俺とミリ、客のリーダーだ。

 昨夜、この三人がトラブルに巻き込まれた。


「お店閉めちゃいますよ」

「ミリ……、さん」


 やっとリーダーがミリと話せた。


「昨日の人は誰ですか?」

「……元夫よ」

「向こうは諦めていない様子……、でした。ミリさんは復縁するつもりは――」

「ありません。あの人との関係は終わったの」

「昨日のようなことは何回も続いたんですか」

「ええ……。何度も逃げてきたわ」


 ミリは俯き、暗い表情を浮かべていた。


「父さんが、沈んでいる私に『ライン』で働かないかって声をかけてくれたの」

「そっか……」


 リーダーはミリの事情を聞き、一人頷いていた。

 こいつが人の相談を真面目に訊くなんて珍しいな。

 冒険してた頃は全く無かった。

 元カノと付き合ってた間に、精神面が成長したのかもしれないな。


「ミリさんは一人暮らしですか?」

「そうだったんだけど、今は実家に戻ってるの」

「よかった……」


 腕っぷしがないとはいえ、実家に帰っているならネズミ、センチ、マクロが守ってくれる。

 ナノはミリに寄り添って癒してくれるだろう。

 俺もリーダーと同じく安堵した。


「なら、オレ帰るわ」

「ああ。ミリのこと心配してくれてありがとうな」

「そ、そんなんじゃねえよ。夜遅くまで飲みてえなって思っただけだ」


 リーダーは代金を置いて、逃げるように店を出て行った。

 ミリは俺とリーダーのやり取りを聞いて、クスッと笑った。


「素直じゃないヒト」


 ミリはリーダーについてそう告げた。

 

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