魔物食を振る舞う話
魔物食提供一日目。
食材が食材ということもあり、一日目はその美味しさを知る物しかやって来なかった。
冒険中食べた者。
著書『魔物食』を読み、興味を持っていた者。
珍味を味わってみたい者。
理由はそれぞれだが、一日目は規定予約数を満たした。
人食い玉ねぎとスライムのスープ、ツルジャラのサラダ、オークのステーキ、妖老樹の果実のケーキ。
試作中、味と見た目に注力して製作したコースメニューは客から好評を得た。
初日は黒魔導士のような美食家ばかりなので、ここで高評価を得られれば、翌日以降は安泰だろう。
「リベ、お疲れさま」
「クロッカス、味はどうだった?」
「冒険してた時よりも美味しかったよ。盛り付けも綺麗だし、これなら一般の人でも食べられるよ」
「そうか」
「明日も頑張ってね」
黒魔導士の評価も好評だ。
ただ、明日の予約は空いている。
町の人々は魔物を食べることを恐れているに違いない。
「リベ、お疲れ様なの」
「さて、次は私の番ね」
バーを開店するミリがやってきた。彼女は残った食材で作った魔物食を興味津々に見ていた。
ミリは手を伸ばし、それを掴んで口に入れた。
「ん! 美味しい!!」
つまみ食いをしたミリは感想を述べた。
俺の顔をじっと見つめている。これはナノも良くするおねだりの顔。小首をかしげて「いい?」と聞いている所があざとい。
俺は皿をミリに差し出した。
「リベ、あ、り、が、と」
「ど、どういたしまして」
ナノと違って、ミリはどうおねだりしたら男が望みどおりに動いてくれるか、男の反応を知り尽くしている。俺も彼女の言い様に使われている男の一人だ。
「お姉ちゃん、ずるいの!」
「ほら、ナノちゃんも食べよ」
「……食べるの」
怒ったナノも簡単に手なずけてしまう。
ナノは魔物食を口にすると「美味しいの!」と言い、怒っていたことを忘れている。
「じゃあ、またな」
「ええ。また明日」
「リベ、ばいばーい」
「リベさん、お疲れ様です」
「……さっさと帰れ」
一人、俺に冷たい言葉をかける奴がいるな。弱みを握っていることを忘れるなよ。
白魔導士との一件から、センチが『ライン』の料理人として復帰した。
だが、親子仲や俺との仲はすごぶる悪い。
センチは自宅には戻らず、『ライン』の営業を終えるとチャロとして”移動の秘術”を使って白魔導士の家へ帰ってゆく。それもどうかと思うが、働いてくれればそれでいいと、気にしないことにした。




