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進展するよう努力する話

本日でセンチ編が終わります。

最後までお付き合いくださいませ。

「リベさん、お待たせしましたー」


 四日後、白魔導士たちが『ライン』へやって来た。

 その間、朝・昼・晩と白魔導士たちに弁当を配っていたので、久しぶりという感覚がしない。


「いやー、今日の旅は食料を運ばなくていいから楽だったあ」

「……」

「って、レビーも言ってたじゃん。ここに来て急に黙ってどうした」

「荷物はここに置いてくぞ。オレは外で待ってる。じゃあな」


 黒魔導士がナッツ野郎にちょっかいをかけるも、あいつは依頼品を指示した場所に置いた後、店から出て行った。


「素直じゃないですね」

「だよねー。今日こそはリベに謝るぞ! って息巻いてたのにー」


 ナッツ事件の件を謝りたいのか。酒場に行った時も、あいつの飲み仲間が『反省してる』とか言ってたな。

 あれのおかげでナノ一家と出会い、『ライン』の店長として第二の人生を歩めた。

 ナッツ野郎が謝れば、俺は許すつもりだ。だが、俺から謝るつもりはない。あいつから行動に出ない限り、俺とあいつの関係はこのままだ。


「でさでさ、リベに教わった”冷凍”試してみたんだけど、どうかな?」

「そうだな……」

「ちゃんと出来てる。後はこれを”冷凍庫”に入れれば二週間は保存できるだろう」

「え、誰そのイケメン! 初めて会うんですけど!!」


 ”冷凍”の手法をナノから教わっただけで、黒魔導士の方法が上手くいっているのか俺には判断が付かなかった。ちょうど、白魔導士の帰りを待っていたセンチが食材の様子を見てくれた。

 黒魔導士はセンチの容姿を見て、甲高い声をあげた。

 容姿を褒められるも、センチは黒魔導士に一礼するだけで、食材を持って厨房へ去っていった。


「あいつはナノとマクロの兄のセンチだ。お前たちの弁当を作ってたんだぞ」

「へえ~、今度の取材でインタビュー出来ないかなあ。料理の腕も確かだし、容姿も完璧だし、これは『ライン』の良い宣伝になるよ」

「……それは無理だろうな」


 白魔導士がお願いすれば、可能性はあるが。

 黒魔導士はセンチから関心が離れない。彼の情報を手に入れようと質問を沢山された。


「ミリなら取材に応えてくれると思うぞ」

「ミリさんねー。知ってるよー。ナノちゃんのお姉ちゃんで、深夜のバー経営に革新を起こした美女ママでしょ! 常連さんも多くて、賑わってるって」

「……もう有名になってたのか」

「もちろん!」


 バーの利益のおかげで、予約制ラインでも売り上げが先月と変わらないんだからな。

 ミリ一人で相当稼いでいる。

 もし、ミリが若い女性がサービスする店で働いていたとしたら、すぐに一番指名が取れる譲になっているだろう。


「それで、魔物食はいつやるの?」

「一週間後には始められるぞ。後日宣伝する」

「楽しみ―、じゃあ待ってるね」

「ああ」


 黒魔導士は白魔導士を連れて外に出ようとする。


「待ってくれ」


 二人をセンチが引き留めた。彼はふたりに近づく。


「弁当……、どうでしたか?」

「美味しかったです! おかげで回復魔法が沢山使えました」

「良かったです……、あとこれ」


 センチは白魔導士に包みを渡した。

 白魔導士がそれを受け取ると、センチは厨房へそさくさと消えていった。


「リベさん、私、追加注文していないんですけど、これは?」

「……開けてみろ」


 包みの中身はよーく知ってる。

 白魔導士の為に食事を作っていたのだ。チャロとして暮らしていただけあって、彼女の好物は分かっているだろう。

 調理と盛り付けはすぐに終わったが、センチは白魔導士に手作りの料理をどう手渡すか悩んでいた。


「わあ! 美味しそうなご飯だ。貰っていいんですか?」

「ああ」

「センチさん、ありがとうございます! 空の容器洗ってお返ししますね」

「あ――」

「魔物食、楽しみにしてます。ではまた!」


 白魔導士は黒魔導士と共に『ライン』を出て行った。

 しかし、包みを開けた際に紙切れが床に落ちる。それはセンチの手紙だ。

 白魔導士は床に落ちた手紙に気付かなかった。

 その一部始終を見たセンチは、俺の胸倉を掴み、激しく揺らした。


「おーまーえー!」

「悪い、俺が悪い。すまん」


 俺はセンチの拘束からすり抜け、床に落ちた手紙を素早く拾った。

 さてさて、なんて書いて――。

 手紙を開けようとした直後、センチがそれを取り返そうと手を伸ばしてきた。

 俺はセンチの猛攻を避け、手紙の内容をすべて読んだ。


「ふっ」

「笑うな!」

「が、頑張れよセンチ君」

「クソ店長! 俺はもう働かないからな。これで――」

「手紙の内容、家族にばらすぞ」

「うっ」

「ばらされたくないなら――」

「クソ店長! 働く、働いてやるよ!」


 口約束は出来た。

 俺は手紙をセンチに返す。センチはそれを破き、ごみ箱に捨てた。


「あのゲテモノを調理するのか……?」


 センチは自身の気持ちを落ち着けると、仕事の話へ戻った。

 俺はセンチの問いに頷く。


「正気か?」

「物珍しさに、高い金を払ってでも客が来るさ。三日間限定だしな」

「俺は調理したく――」

「手紙」

「やってやるよ……、はあ」


 センチを加えた『ライン』は魔物食を最後に、予約制を終える。通常営業して金とアリガトウを稼ぐぞ。

 俺は冷凍庫に入っている食材を見ながら、コースメニューの発案に励んだ。

 そして一週間後、期間限定魔物食提供の初日を迎える。



次話は明日更新します。

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