強引に捕まえる話
「う……」
「リベ、帰って来るの遅いの!」
「い、家なのか……?」
ナノの声が頭に響く。昨日飲んだワインが体に残っているようで、気持ち悪い。
目覚めると夜が明け、太陽がまぶしい。
家に帰るまでの記憶が飛んでいる。どうやってここまで来た。
「寝落ちしたあなたをネズミさんが運んできてくれたんです。ナノちゃんはカンカンに怒ってましたよ」
「アンネと二人で怒ってるの」
「悪かった……、ネズミのこと放っておけなくてな」
「ナノちゃんから事情は聞きました。今日は特別な理由があったということで、許します」
「ありが――」
「全ての家事を一週間あなたがやってくださいね」
「……はい」
限界まで飲んでしまった俺が悪い。アンネの罰を素直に受け入れよう。
「ナノはほっぺにチューしてもらうの!」
「お前は関係ないだろ」
「チューするの!」
「……やっていいか?」
「ナノちゃんとは取引したので、いいですよ」
ナノに頬を差し出される。
俺はナノの要求通り、彼女の頬に口づけをした。すべすべの肌、もちもちとした感触。
「ふふん! これで許してあげるの」
「それは良かった」
ナノにも許してもらった。
☆
起きてすぐ俺はラインに向かった。
弁当の受付である。
白魔道士専用の商売だと思っていたが、少し宣伝しただけで冒険者の間で話題になり、予約をする人がぽつぽついる。ミリのバーみたいな盛況ではないが、朝の二時間店を開き、注文数を昼に納品する仕事は昼食前に完結するので楽である。注文が無いときは休みにすればいいしな。
「リベさん」
「お、シロフォンか」
「お弁当の注文お願いします」
「分かった。お前とーー」
「あたしの分もね」
「クロッカスとーー」
「オレのもな」
「ナッツ……、レビー!?」
今日は白魔道士が訪ねてきた。本命である。
白魔道士は同行する冒険者の分も予約してゆく。今回は黒魔道士とナッツ野郎がいた。
ナッツ野郎の登場に、俺はしばらく言葉が出なかった。
向こうは何か言いたげに胸の前で腕を組み、俺の様子をチラチラと伺っている。
「ほら、ちゃんと言わないと伝わらないよ〜」
「うっせえ」
黒魔道士が声をかけると、ナッツ野郎は店を出ていった。
バタンと扉がしまった後で「用事、早く済ませろよ!」とナッツ野郎の大声が聞こえた。
「あらら〜」
「……三人分だな」
「はい! 今日の昼から四日分お願いします」
「四日ーー、俺のお使いじゃないのか」
「そのついでにもう一個依頼をやってくる! リベのお使いはその帰りで済ませてくるよ」
魔物食のために、俺は冒険者協会に指定した魔物の討伐と部位の収穫を依頼した。もちろん、白魔道士にやってほしいという名指しで。
白魔道士はそれを受け、黒魔道士とナッツ野郎を誘った。
俺の依頼の他にもう一個別の依頼を済ませてくるようだ。
「ここだけの話、レビーさん、リベさんの依頼と聞いて張り切ってるんですよ」
「あいつが?」
白魔道士から代金を受け取った際、彼女が小声で俺に話した。
ナッツ野郎が張り切ってる? まさか。あいつ、俺のこと避けてたぞ。
「では、お願いしますね」
「行ってきまーす」
白魔道士と黒魔道士が店を出るため背を向けた。
俺は一瞬の隙きを見逃さなかった。
「シロフォン、ちょっといいか?」
「はい?」
俺は白魔道士を引き止めた。彼女の背に少し触れ、用事を済ませる。
「背中にゴミが付いてた」
「あらまあ。ありがとうございます」
「気をつけてな」
「はい!」
俺は手を振り、二人を見送った。
「さてと」
俺は"ゴミ"を床に投げつけた。
ゴミは「ギュイ!」と鳴く。
それは茶色いモフモフ、センチだった。
次話は明日投稿します。
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