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強引に捕まえる話

「う……」

「リベ、帰って来るの遅いの!」

「い、家なのか……?」


 ナノの声が頭に響く。昨日飲んだワインが体に残っているようで、気持ち悪い。

 目覚めると夜が明け、太陽がまぶしい。

 家に帰るまでの記憶が飛んでいる。どうやってここまで来た。


「寝落ちしたあなたをネズミさんが運んできてくれたんです。ナノちゃんはカンカンに怒ってましたよ」

「アンネと二人で怒ってるの」

「悪かった……、ネズミのこと放っておけなくてな」

「ナノちゃんから事情は聞きました。今日は特別な理由があったということで、許します」

「ありが――」

「全ての家事を一週間あなたがやってくださいね」

「……はい」


 限界まで飲んでしまった俺が悪い。アンネの罰を素直に受け入れよう。


「ナノはほっぺにチューしてもらうの!」

「お前は関係ないだろ」

「チューするの!」

「……やっていいか?」

「ナノちゃんとは取引したので、いいですよ」


 ナノに頬を差し出される。

 俺はナノの要求通り、彼女の頬に口づけをした。すべすべの肌、もちもちとした感触。


「ふふん! これで許してあげるの」

「それは良かった」


 ナノにも許してもらった。



 起きてすぐ俺はラインに向かった。

 弁当の受付である。

 白魔道士専用の商売だと思っていたが、少し宣伝しただけで冒険者の間で話題になり、予約をする人がぽつぽついる。ミリのバーみたいな盛況ではないが、朝の二時間店を開き、注文数を昼に納品する仕事は昼食前に完結するので楽である。注文が無いときは休みにすればいいしな。


「リベさん」

「お、シロフォンか」

「お弁当の注文お願いします」

「分かった。お前とーー」 

「あたしの分もね」

「クロッカスとーー」

「オレのもな」

「ナッツ……、レビー!?」


 今日は白魔道士が訪ねてきた。本命である。

 白魔道士は同行する冒険者の分も予約してゆく。今回は黒魔道士とナッツ野郎がいた。

 ナッツ野郎の登場に、俺はしばらく言葉が出なかった。

 向こうは何か言いたげに胸の前で腕を組み、俺の様子をチラチラと伺っている。


「ほら、ちゃんと言わないと伝わらないよ〜」

「うっせえ」


 黒魔道士が声をかけると、ナッツ野郎は店を出ていった。

 バタンと扉がしまった後で「用事、早く済ませろよ!」とナッツ野郎の大声が聞こえた。


「あらら〜」

「……三人分だな」

「はい! 今日の昼から四日分お願いします」

「四日ーー、俺のお使いじゃないのか」

「そのついでにもう一個依頼をやってくる! リベのお使いはその帰りで済ませてくるよ」


 魔物食のために、俺は冒険者協会に指定した魔物の討伐と部位の収穫を依頼した。もちろん、白魔道士にやってほしいという名指しで。

 白魔道士はそれを受け、黒魔道士とナッツ野郎を誘った。

 俺の依頼の他にもう一個別の依頼を済ませてくるようだ。


「ここだけの話、レビーさん、リベさんの依頼と聞いて張り切ってるんですよ」

「あいつが?」


 白魔道士から代金を受け取った際、彼女が小声で俺に話した。

 ナッツ野郎が張り切ってる? まさか。あいつ、俺のこと避けてたぞ。


「では、お願いしますね」

「行ってきまーす」


 白魔道士と黒魔道士が店を出るため背を向けた。

 俺は一瞬の隙きを見逃さなかった。


「シロフォン、ちょっといいか?」

「はい?」


 俺は白魔道士を引き止めた。彼女の背に少し触れ、用事を済ませる。


「背中にゴミが付いてた」

「あらまあ。ありがとうございます」

「気をつけてな」

「はい!」


 俺は手を振り、二人を見送った。


「さてと」


 俺は"ゴミ"を床に投げつけた。

 ゴミは「ギュイ!」と鳴く。

 それは茶色いモフモフ、センチだった。

 

 

次話は明日投稿します。

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