息子に会いに行く話
昼食を食べ終えたところにミリとネズミが帰って来た。
ミリは二階へ上がり、そこにいたマクロを呼んできた。
『ライン』は三階建になっており、一階は店舗、二階、三階はネズミたちの自宅である。
そこには家主のネズミ、息子のセンチ、娘のナノ、息子のマクロの四人で暮らしていた。現在はセンチが行方不明なため、三人で暮らしている。
「父さん、どうしたんですか?」
「それは我のセリフだ」
ネズミはモフモフの姿を解いた後、俺とナノに迫る。
センチの話題を持って来たのは俺たちだ。
ナノは昼食を食べて、眠気が来ているようなので、俺がセンチを見つけた経緯をネズミに説明する。
「では、我をセンチが住んでいるだろうお宅へ連れて行ってくれないか」
「わかった」
もう一度白魔導士の家を訪ねに行くことになる。
二度家を訪ねることに白魔導士が疑問を覚えるかもしれない。
そうだ、部屋に訪ねた際、忘れ物をしたと言い訳をしよう。
俺はネズミを連れて、移動している間、白魔導士の家を自然に訪ねるための言い訳を考えていた。
「キュ」
モフモフ姿のネズミが俺を呼ぶ。
モフモフの姿は小動物として愛らしいのだが、いかついネズミがこの姿になると違和感があるな。
渋い鳴き声をするかとおもいきや、ナノと同じ調子だ。
「本当にお前、ネズミだよな……」
俺は手の平にネズミを置き、その姿をじっと見つめる。
ネズミはその場で毛づくろいをしていた。
毛並みはナノよりもぼさぼさで毛が長い。これは元の姿を反映させているのだろう。
「キュイ、キュ」
ネズミの意識はセンチの方に向いている。そう分かるのは、人混みの中、キョロキョロと節操なしに周りを見ているからだ。
俺はネズミに「白魔導士の家に着いたら伝えるから、落ち着け」と注意し、彼をフードの中に入れた。
しばらくして、白魔導士の家に着いた。
「あれ? リベさんどうしたんですか」
「ああ。家に入ったとき忘れ物をしたみたいでな」
「あら、でも家の中には何もありませんでしたよ」
「そうか――」
白魔導士は自宅に俺の私物が置かれていないと確認してしまっている。
忘れ物作戦は通用しない。
さて、どうしたものか――。
「キュ!」
「あら、モフモフしてて可愛い。さっきの子とは毛色が違いますね」
「ああ。こいつも俺のペット――」
「ギュギュ」
「じゃなくて、さっき拾ったんだ。懐いたのか俺から離れないんだよな」
「あらまあ」
”ペット”と言いかけると、ネズミが低い声を出した。
設定が気に食わなかったらしい。
俺は新たな設定を白魔導士に伝えた。
それを聞いたネズミは「キュイ」と頷いた。
「お前のチャロって、こいつと似てないか?」
「ええ」
「そいつの家族かもしれないって思ってな、連れて来たんだ」
「それはありがとうございます。この子の話、中で聞かせてください」
ネズミの登場により、話が思いの通りに進んでゆく。
父と息子の再会、どうなることやら。
次話は明日投稿します。
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