久しぶりに戦った話
殴られれば痛い。
ナッツ野郎と別れた時、白魔導士がわざとらしく落としていった回復薬を飲む。
体の痛みが引いてゆく。
「くそ……」
俺はナッツ野郎に悪態をついた。
白いモフモフにナッツを与えた時、俺はナッツが残っていたことをこの目で見ているんだ。
それが無くなった、となれば俺以外の奴がつまみ食いしたに決まっているのに。あいつが冷静で皆の話を聞いてくれる奴だったら、真犯人を見つけられたかもしれない。
いや、たかがナッツだ。クヨクヨしてるのもばからしい。
ナッツ一つで激怒する器の小さい男に悪者扱いされてもいいじゃないか。
「俺も、町へ向かおう」
一人旅になってしまったが、数時間後には町に着く。
喧嘩するタイミングも良かった。
俺の運が悪かっただけ。冒険仲間は一から探せばいい。
次は本職で戦えるパーティに入ろう。
俺は町を目指しながら、ナッツ野郎に殴られた傷の痛みと、責め立てられた心の痛みを和らげる。
「キュー、キュッ」
この鳴き声は。
俺は鳴き声が聞こえた場所へ駆け寄った。
「モフモフっ」
俺は白いモフモフと再会した。
白いモフモフの目の前には肉食の魔物がいた。
六本の脚を持ち、内二本の前足が鎌の様な形状になっている。その前足で獲物を殺し食すのだ。
魔物は白いモフモフに狙いを定めている。このままではあいつに食べられてしまう。
俺は白いモフモフを助けようと、矢を放った。
「こっちへ来い、俺が相手だ」
放った矢は前足で弾かれた。こいつは前方の反応速度は速い。弾かれるのは想定内だ。
魔物の関心は白いモフモフから、攻撃した俺に向いた。
ギキャー、と威嚇をしつつ俺に突進してきた。
一射、二射。
魔物の攻撃範囲に入る前に俺は矢を放つ。それらは前足で弾かれた。
魔物は俺に向けて前足を振るった。
俺は横方向に避けた。そして、奴の後方へ向かう。
空振りに終わった魔物は動きを止め、辺りを見渡している。
「真後ろだ、ノロマがっ」
俺は魔物の背をとった。
声をかけると同時に矢を放つ。
矢は魔物の頭を貫いた。
魔物は足をばたつかせた後、絶命した。
こいつは前方の反応はすごいが、後ろには弱い。本来は囮がこいつの気を惹き、本命が後ろに周って頭を胴体から切り離す倒し方がいい。
だが、ナッツ野郎の場合は正面突破でも力で捻じ伏せられる。
俺にはそんな実力はないから、魔物の弱点を突く。
「キュー」
「お前、怪我はないか?」
「キュッ」
俺は白いモフモフに手を差し伸べる。
白いモフモフは俺の手に飛び乗った。手の平の上でくるくる回り、助かった喜びを体現していた。
「よか――」
安堵の言葉を突こうとした時、後方から強い衝撃を受けた。
後ろを振り向くと、魔物がいた。
しまった、こいつは常に二体で行動してるんだった。
魔物の前足に背を切り裂かれた俺は、激痛に耐えられず、意識を失った。
第4話投稿しました!
第5話は明日投稿します!
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