手掛かりを見つける話
この話でナノ編は終わります。
最後までお付き合いくださいませ。
「はい、あ、リベさん」
「よう」
俺は白魔導士の家を訪ねていた。
冒険に出ていて不在かもしれないと思ったが、幸い今日の白魔導士は家にいた。
在宅していることに安堵し、俺は白魔導士に『ライン』で魔物食を始めることを話した。
「また冒険者に戻るんですか!?」
「戻らないからな!」
俺の話を聞き終えた白魔導士は、俺が冒険者に戻るのではないかと歓喜の声をあげた。
俺は白魔導士の言葉を否定する。
「すぐに断らなくてもいいのに……」
俺が冒険者に戻らないと分かった白魔導士は、肩を落とす。
「それでな、クロッカスと話を付けて来た」
「クロッカスさんとですか!? わあー、久しぶりに一緒に冒険が出来る。嬉しい!」
「あいつと予定を合わせて、材料を獲ってきてくれないか」
「分かりました。リベさんが同行しないなら、レビーさんにも声を掛けてみます」
「え、あいつ……?」
まあ、話題に俺の名前が出てもいっか。
俺がパーティを追放されたのは三か月前だ。ナッツ野郎の怒りも落ち着いている頃だろう。
俺はあいつが謝るまで許さないけどな。
ナノもナッツ野郎の名前が出ると「ギュー」と威嚇していた。彼女はあいつに言い寄られて迷惑してたからな。嫌いな客の一人として覚えているに違いない。
「リベさん、そろそろレビーさんと仲直りしませんか?」
「あいつが謝ってきたら……、仲直りしてやるよ」
ナッツ事件の真相は、黒魔導士がナッツ野郎のナッツを食べたことが原因だ。その罪を俺に擦り付け、俺はパーティを追放された。
黒魔導士は俺に謝り、店の評判を戻してもらったが、ナッツ野郎からは何もアクションがない。
ナッツ野郎に彼女が出来てから『ライン』にも来なくなったからな。現状、あいつがどこで何をしているか掴めていない。
「俺はそれを伝えに来ただけだ。依頼は冒険者協会に頼んでおくよ」
「お願いします」
白魔導士の用事は終わった。
『ライン』のライバル店で視察がてら昼食を食べて、自宅へ帰るか。
俺はもう次の予定を組み立てていた。
「じゃあな、お、おい、ナノ」
「ひゃ、モフモフしたのが私のお家に!」
「上がっていいか?」
「ええ。あの子、リベさんのペットですか?」
「そうだ。失礼するぞ」
白魔導士に別れの言葉をかけた直後だった。
ナノが白魔導士の家の中へ入っていったのだ。
俺は白魔導士の家に上がり、ナノを追いかけた。
ナノはリビングにある檻の前をぐるぐる回っていた。
「そう言えば、小動物を飼ってるってクロッカスから聞いたぞ」
「はい。最近飼い始めました。私に懐いてくれてましてね、とても可愛いです」
「キュ!キュ!」
ナノが俺を呼んでいる。彼女は檻を指していた。
白魔導士が飼っている小動物に興味があるのか。
「チャロに会いたいのかな」
白魔導士が檻のカギを開ける。ナノはそこに入っていった。
巣、餌場、トイレを見た後、俺の元に帰って来た。
「ナノ、迷惑かけるんじゃないぞ」
「キュイ」
「チャロ、人見知りをするようでして、お客さんが来ると姿を隠しちゃうんです」
「そうか。家に上がって悪かったな。さっきの話、頼んだぞ」
「はい! 魔物食、楽しみにしてます」
俺は今度こそ、白魔導士と別れた。
俺はナノと人影がない場所へ向かった。
周りに誰もいないことを確認し、ナノは白いモフモフからヒトの姿に戻った。
「リベ、リベ! センチお兄ちゃんなの」
「センチ……、ああ、ネズミが探している」
ヒトに戻ったナノはリベに詰め寄る。
モフモフの姿の時から、取り乱していたのは分かっていた。俺に伝えたいことがあるということも。
ナノが言いたかったのは、行方不明になっているナノの兄センチの事だった。
訪ねたのは白魔導士の家だぞ。なぜ、センチの話題が出て来るんだ。
俺は話の展開が読めず、ナノの行動の理由について推理していた。
そう言えば、白魔導士はチャロという小動物を飼い始めたと言ってたな。
ムーブ族は外に出る時はモフモフの姿に変わらなくてはいけない。あの姿は小動物といえる。
まさか――。
「センチお兄ちゃん、あの家に住んでるの!」
俺の答えとナノの答えが重なった。
ムーブ族のセンチは白魔導士の家で”チャロ”として暮らしているのだと。
次話は明日更新します。
面白い!と思いましたら評価ポイント・ブックマークのほうお願いします!
ちょっとずつ評価ポイントやブクマ数が増えてます。
それを見て、よーし執筆頑張るぞ!と励みになってます。
読者の皆さん、応援ありがとうございます。
これからも毎日投稿頑張りますので、よろしくお願いします。




