冷凍方法を教える話
俺はナノに”冷凍”の技法を教わり、アンネが作ってくれた朝食を食べ終えた。
「今日は出かけるんですか?」
「ちょっと、クロッカスのところにな」
「また、冒険に行くんです?」
「いや、ナノが教えてくれた技法を教えに行くんだ」
黒魔導士なら氷魔法も使えるはずだ。魔物食をタダで食べさせてやると条件を付ければ、引き受けてくれるだろう。となると、白魔導士の家も尋ねよう。あいつに材料を調達させる冒険者を集めて貰わなくてはな。
俺は頭の中で予定を立てる。
俺の家からだと、黒魔導士、白魔導士の順で訪ねると効率がいい。
「ナノちゃんもついて行く?」
「うん! 外の世界にいくの」
「時間が余れば家に帰って来る。無かったら『ライン』の閉店時間だ」
「分かったわ。なら、昼は外で食べてきて」
「ああ。行ってくる」
「アンネ、ご馳走さま! またね!」
「二人ともいってらっしゃい」
俺は家を出た。
ナノは白いモフモフの姿に変わり、俺の肩に乗っている。
外は仕事へ向かう人々で行き交っていた。
まず、俺は黒魔導士の自宅へ向かった。
黒魔導士の家は、俺の家と同じ区画にある。
「おーい、いるか?」
俺は黒魔導士の家のベルを鳴らした。その後、ドアを叩き、在宅しているか様子を窺う。
しばらくして、ドアが開かれた。
「なーに?」
黒魔導士は目にクマがある、満身創痍の状態で現れた。
これは、グルメ記者の仕事が忙しいからだろう。
「お前に用があって来た」
「私は忙しいの、悪いけど締め切りが終わる明後日まで――」
「魔物食についてなんだが」
「魔物食!? 聞く聞く! 入って入って」
本題を離すと、黒魔導士の態度が急変した。
こいつは元々、俺が作った魔物食を一番楽しみにしていた奴だからな。
それに、記事の執筆に煮詰まっているようだし、俺の話はいい気分転換になるだろう。
俺とナノは黒魔導士の家に招かれた。
こいつの家は相変わらず物にあふれてごちゃごちゃしてるな。
グルメ記者になって執筆の機会が増えたのか、紙が所々散乱している。
掃除をする暇もないくらい締め切りに追い詰められているのだろう。
「こんなのしか出せないけど」
「いい。急に訪ねて来て悪かったな」
「それよりもー、魔物食について教えてよ」
黒魔導士はお茶を出した後、紙とペンを用意し、目を輝かせて俺の話を待っていた。
取材のネタにする気だな。まあ、こいつに取り上げて貰えば宣伝は問題ないな。
俺は黒魔導士に『ライン』で三日間、魔物食を提供することを話した。提供するメニューを軽く話す。
それを聞き終えた黒魔導士は、嬉しさのあまり悶えていた。
「最高! リベの魔物食は美味しかったもん。冒険者辞めたから二度と食べられないと思ってたよ」
「それでな、お前に魔物食をタダで提供するから、材料を獲ってきてくれないか」
「そゆことか……、うん。今、書いてる記事を書き終えたら行くよ」
「ありがとう」
黒魔導士が冒険に行くことは了承してくれた。第一関門突破。
次は――。
「それでな、魔物の肉って鮮度が大事だと俺は思うんだよ」
「そうね~。あの頃は取れたてを調理してたからね。日数経ってからだと味が落ちそう」
「ナノから聞いたんだが、氷魔法にちょっと工夫をすれば、肉の鮮度を長く保つことが出来るそうなんだ」
「え!? そんな方法があったの。それ、来月号で特集してもいいかな」
俺は白いモフモフを見た。
ナノは俺の方からテーブルの上に降り、その上を駆けた。
丸――。教えていいってことだな。
俺は黒魔導士に「いいぞ」と了承した。第二関門突破。
本題に入る前に、黒魔導士はモフモフ姿のナノに目を奪われている。
「あ、ナノちゃんだ。可愛い―」
「キュ、キュキュ―」
「はあ……、観てるだけで癒されるわ。私もシロフォンみたいに小動物飼おうかなあ」
「あいつ、小動物飼い始めたのか?」
「あ、ごめんごめん、話逸れちゃった。その話はおいといて――、リベ、鮮度を保つ氷魔法について教えてよ」
「ああ。”冷凍”といってな――」
俺は冷凍の方法を黒魔導士に教えて終わり、彼女とナノの触れ合いを見守ってから、彼女の家を出た。
黒魔導士の件は終わった。
次は白魔導士だ。
次話は明日投稿します。
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