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掟が破られた話

誤字脱字報告ありがとうございます!

とても助かりました!!


「ナノ、掟はどうしたんだ!?」


 ムーブ族は外の世界に出る時はモフモフの姿にならないといけないという掟がある。

 俺の家は外の世界だぞ。

 なんでヒトの姿に戻ってるんだ。

 ナノは椅子に座って、足をバタバタさせ、アンネの料理を楽しみに待っている。


「ムーブ族の会議で、リベとアンネの前ではヒトの姿になっていいって決まったの」

「そ、そうなのか……」

「これも”アリガトウ”を稼いでいるおかげなの! ナノのお店は二番目に”アリガトウ”を稼いでるの」

「なるほどな」

「みんなリベとアンネを信頼してるの。だから特別に許してくれたの」


 ムーブ族はネズミ家族しか接触がないが、俺とアンネの評価は高いようだ。特例が出ているくらいだからな。

 こうなると、弁当配達に手を出すのは危険かもしれない。

 あの事業はムーブ族の存在が表に出ないよう慎重にやらないとな。

 俺が一人で考えているうちにアンネの料理が出来上がった。


「うーん、美味しそうなの! いただきまーす!」

「頂きます」

「どうぞ、召し上がってください」


 俺たちはアンネの手料理を食べる。

 ガネ出身ということもあって、辛い料理が食卓に並ぶことが多い。

 ナノは辛い料理が苦手なので、水を沢山飲みながら辛さに耐えている。


「お、美味しいの……」


 かなり気を遣っている。

 辛いと正直に言えばいいのに。


「ごめんなさいね、ナノちゃんが泊まりに来るとは思わなくて」

「本当に美味しいの! これが家庭の味、なの!」

「”アリガトウ”ナノちゃん」


 ナノがいるとこの家も賑やかになる。

 いつもは無言で食事をして、終わったら『ライン』であった出来事を話して、眠る。

 朝方は、アンネの家事を手伝いつつ、”経営論”の本を読み、勉強をしている。

 時折、家の外へ出てデートをしつつ、夕方に入ったら『ライン』へ出勤する毎日だ。

 冒険者の頃よりアンネと一緒にいる時間が多くなったが、その分スキンシップが少なった気がする。

 

「どうしましたか?」

「あ、いや……、冒険していた頃よりもお前に甘えることが少なくなったな……、と」


 あ、思ったことを口に出してしまった。


「ちが、違わないんだが、すごく、恥ずかしいことを言った――」

「……嬉しい」


 俺とアンネは互いに頬を赤く染める。

 少しの間、二人の世界に入っていたかもしれない。

 普段であれば、一緒に風呂に入り、寝室でいちゃいちゃしていただろう。


「ナノがいるの! ナノがいるうちは、いい雰囲気にさせないの!」


 今日はナノがいる。ナノはアンネに嫉妬していて、俺と彼女がいい雰囲気になると怒り出す。

 いや、俺、結婚してるから普通のやり取りなんだが。

 

「ごめんなさいね。ナノちゃんは私と一緒に寝ましょう」

「じゃあ、リベの隣はナノが貰うの! ぎゅーっとして寝るの」

「じゃあ、リベを真ん中に川の字で寝ましょうね」

「やったー! アンネ、ご馳走さま。お風呂入りたいの。入っていい?」

「ええ。着替えは私の――、入るかしら?」

「リベの服借りるの!」

「お風呂の準備は出来ているから、案内しますね」


 ナノが勝手に話を持ち出してくる。

 川の字で寝るってどういうことだ? しかも俺が真ん中だと?

 反論の余地もなく、俺は二人の間で眠ることになるらしい。

 そして、ナノは俺の普段着を身に付けるようだ。


「おい!」


 反論しようと口を出しても時は遅し、ナノとアンネは風呂場へ向かってしまった。

 多分、一緒に風呂に入ってるんだと思う。


「まあ、賑やかだし、一日くらいは――」


 賑やかになったのはいいことだ。今日はナノの行動も大目に見てやろう。

 俺は、食べ終えた食器を集め、それを一人洗う。


次話は明日投稿します。

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