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ナッツで追放された話

 翌朝、俺達は夕食と似た役割分担で作業をこなしていった。

 今日は昨夜使ったオークの肉の残りと野菜を煮込み、スープにした。

 各、役割を終えた順番から朝食を平らげてゆく。

 食事を終え、食器の汚れをふき取った後、俺達は冒険を続ける。


「何もなければ夕方には町に着きますね」


 道中、白魔導士が話題を出した。彼女の言う通り、天候が崩れる、強敵に遭遇するなどのトラブルが無ければ、町に着く。

 今夜は温泉に入り、ふかふかのベッドで眠れると、皆浮かれていた。


「報酬も沢山貰えるしな」

「それでなに買おうかなー、この額だとあれもこれも買えちゃう」


 リーダーは今回の冒険で発生する報酬の額に、黒魔導士はその報酬で何を買うか妄想していた。


「リベは、報酬で何か買うの?」

「仕送りだ」

「やっぱりー、つまんないの」

「面白味ねえよな」


 黒魔導士が俺に問う。俺は即答で報酬の用途について答えた。

 俺が冒険をしているのも、家族の生活資金を稼ぐためだ。雑貨を買ったとしても冒険では何も役に立たない。ならば、その分を家族に送り生活に役立ててほしいというのが俺の心情だ。

 それは黒魔導士やリーダーには全く伝わらない。


「家族の為に危険な冒険に出るなんて、素晴らしいです。誰にでも出来る事ではありませんわ」


 白魔導士だけが、俺の考えを理解してくれる。それは彼女も俺と同じく、家族の為に冒険しているからであろう。


「ま、オレのことじゃねえしな」


 リーダーと俺の家庭環境は違う。雑談で軽く話した程度の情報だが、こいつの家庭は裕福で仕送りせずとも自活できる経済力がある。

 リーダーの家族が望むのは、強敵を倒し、名声をあげて行くことだ。

 俺とは境遇が違うため、比べても意味がない。

 俺は俺、リーダーはリーダーだ。



 道中、魔物はいつものようにリーダーと黒魔導士が制圧し、傷を白魔導士が癒し、倒した魔物の素材を俺が剥ぐ、という変わりない日常を過ごしていた。

 「休憩しよう」とリーダーが声をかけた。腰掛けるのに丁度良い石がゴロゴロあったからだ。

 俺はその石に座り、歩き詰めの脚を労わった。


「あー、疲れたあ。もう歩きたくなーい」


 座った直後、黒魔導士がぼやいた。


「そうですね」


 白魔導士が賛同する。彼女が弱音を吐くのは珍しい。


「今回の依頼はいつもより遠い場所でしたから、疲れました」

「だよねー。だから髙い報酬なんだけど」

「その金でウマを借りても良かったな」

「リベもそう思う? リーダーがウマにお金出したくないって反対したからだよ。ケチ」

「それは聞き捨てならねえな」

「事実じゃん」

「ウマを連れて行ったら戦闘の邪魔になんだろ。オレはそこまで頭に入れてたわ」

「……どーだか」

「まあまあ、二人とも言い争いはそこまでにしてください」


 リーダーと黒魔導士の言い合いを白魔導士がいさめる。

 イラついたリーダーは荷物袋に手を突っ込む。


「あれ?」


 多分、リーダーはナッツを取り出そうとしたんだろう。こいつは休憩時間にそれを食べることを楽しみにしているから。ナッツを食べればこいつの機嫌がよくなり、場も治まる。

 しかし、そうはいかなかった。


「ねえ! 俺のナッツがねえ!」

「え!?」


 昨夜はちゃんと一食分残っていたぞ。

 俺はナッツが無くなっていたことに驚いた。


「……誰が、食った?」


 楽しみまで奪われたリーダーはイライラの頂点に達していた。

 疑いは、ナッツが無くなったことに動揺した俺に向く。


「そういえば、最後に寝たのお前だったな」

「ああ」

「オレのナッツ食っただろ!!」

「……いや」


 心当たりはある。そのため歯切れの悪い返事をしてしまった。

 俺の反応に、リーダーの機嫌が悪くなる。

 ここで言っても理解してくれるか分からんが、正直に伝えよう。


「昨夜、ナッツを小動物に与えた。だが、その時には残っていたぞ」

「嘘つけ! 今、無くなってるだろ」

「……」


 これは何を言っても無駄だ。リーダーは俺が犯人だと決めつけている。


「その小動物はどこにいる? 証人は? いねえよな、俺らテントで寝てたからなあ!」


 その通りだ。

 ナッツが昨夜残っていたことを証明するものほ何もない。俺の言葉を信じる奴もここにはいない。白いモフモフだって俺の手から逃げていった。

 お手上げである。


「黙ってねえで、なにかいえよ!」

「……」

「じゃなきゃ土下座しろ! 謝れ!」

「……なんで俺が謝らなきゃいけないんだ」


 俺のせいじゃない。

 ナッツは昨夜の時点で残っていた。

 無くなったのは誰かが食べたからだ。その罪を何故、俺が被らなきゃいけない。そいつの代わりに何故、俺が謝らなくてはいけないんだ。

 たかがナッツだぞ。

 しかも夕方には町に着いて、補充できるんだぞ。

 なんでこいつは一回分のナッツでキレるんだ。

 煩い。ナッツくらいで騒ぎ立てんな。

 理不尽な責め立てに腹が立った俺は、リーダーに言い返した。


「口答えしてんじゃねえよ!!」


 逆上したリーダーは俺を殴った。

 何度も何度も力任せに殴った。

 体術で対抗する術がない俺は、その状況を受け入れる。


「お前とは絶交だ。二度と俺の前に現れんな」


 満足するまで殴ったリーダーは俺にそう吐き捨て、黒魔導士と白魔道士を連れて去っていった。

 俺は理不尽な理由でパーティを追放された。

 俺はこの出来事を期に、リーダーの事を『ナッツ野郎』と呼ぶことにした。


4話は明日投稿いたします。


即日執筆、更新という形をとっているので、しばらく投稿時間がバラバラになると思います。いつ更新されるんだ!と楽しみにされている方、申し訳ありません。


お話が気になる・面白いと思いましたら、ブクマ、評価お願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ナッツ。nut といえば、バカ。”やろう”なしで通用する軽蔑語。
[気になる点] >煩い。ナッツくらいで騒ぎ立てんな。 この件はリベが完全に悪い。 ナッツに関してはあくまでリーダー専用の食糧である事をリべも認識していて リーダー側にしてみても相応の信頼からリベに預…
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