白魔導士にお願いをされる話
「見つけましたよ」
『ライン』低評価事件が解決して二か月が経った。
黒魔導士の評価もあってか、客の入りが止まらず、人手が足りていない状況だ。
新たな従業員を……、といってもあそこの店はムーヴ族が経営している店だからバイトを入れるのも難しい。
『ライン』の休業日、俺はそんなことを考えながらガネの町を歩いていた。
後ろから女の声がする。
聞き覚えもある。
「……シロフォンか」
以前の冒険仲間、白魔導士だ。
振り返ると、少しふくよかになった白魔導士がいた。
「リベさん、お話があります」
真摯な表情で白魔導士が言った。
「断る」
俺は白魔導士の誘いを断った。彼女の話を聞かずとも、用件がなんとなく分かるからだ。
白魔導士は立ち去ろうとする俺の肩を掴んだ。やっぱり、帰してはくれないよな。
「パーティに戻ってきてください! お願いします!!」
「嫌だ」
「レビーさんが嫌なら別のパーティを組みます。ですから冒険者に戻ってください!!」
やっぱり、話題はこれか。
白魔導士は俺に冒険者に戻ってくれと懇願してきた。
だが、俺は『ライン』の店長として新たな道を歩んでいる。
収入だって、冒険者をやっていた頃よりも安定しており、売り上げ次第ではそれよりも高い。
妻と一緒に過ごす時間だって増えた。そろそろ子どもを作ろうかと考えていたところなのに。
そんな俺に冒険者に戻れと。
「おねがいします~!!」
街中で泣きつかれては、注目が俺に集まる。
くそ、人通りがない所だったら「もう遅い」と告げて、白魔導士の要求を無視したというのに。
「……分かった」
こうして俺は『ライン』の店長から冒険者に戻ることになった。
☆
「――ということでな、しばらく店に来れない」
「嫌なの!」
開店前、俺は事情を話した。
ナノはすぐさま反対した。
マクロとネズミも苦い顔をしている。
店が忙しいというのに、働き手が一人抜けるのは大きな痛手だ。
「助っ人としてアンネを呼んである。俺がやっていた仕事はアンネに任せて――」
「なんでリベを捨てた人のお願い聞いちゃうの! おかしいの!!」
「……あいつには一つ借りがあるんだ」
ナッツ野郎に冤罪を掛けられてボコボコにされたとき、白魔導士は俺に回復薬をくれた。
あれが無ければ、ナノを魔物から助け出せなかった。
ガネの町へ生きて帰れたかどうかも怪しい。
「冒険に加わるのは一度だけだとシロフォンにも伝えている。借りを返すだけだ」
「そういうことでしたら、僕は止めません」
マクロが俺の行動に賛同してくれた。
「お気を付けて」
「マクロ、アリガトウ」
くらっと眩暈がきた。すぐに平常へ戻る。
「勝手にしろなの! いーだっ」
ナノは俺の行動に最後まで反対した。
次話は明日投稿します。
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